現代医療の代償としてのガンの早発化

 結核を調べるためのレントゲンで、肺がんが引き起こされる。偽陽性観察のための肺の二次精密のCTが、予期せぬ将来の肺がんを引き寄せる。そして早発ガンへの不安宣伝によって、健康人が発ガン医療検査をますます受けにやってくる。このような悪循環が、現代におけるガンの罹患率を高める一因になったことは容易に想像がつく。
 現代医療はいつの間にかに、ガン治療にその目的をすり替えた。この意味は、最後の砦を壊す大義ではなく、自らの尻を自らの手でふく保身でしかない。薬物や放射線による検査や治療の後始末をつけるためである。
 社会は結核から解放されたあとに、肺がんと対峙する。それは宿命ではあるが、自ら招いたものでもある。そして、肺がんと戦うために国民の肉体を総動員すればするほど、肺がんは早期化し、寿命は低減していくだろう。結果として、それは結核による短命化にまで収斂するだろう。
 
 コントロールを持たない。それが技術であり、文明だ。レントゲンでとどめておけばよいものをわざわざCTに拡大して、結核よりも恐ろしい病に養分を与える。この自滅性は、自然の反作用とも言える。
 つまり、いにしえの人が正しかった。彼らは体の中を調べようなどと思わなかった。病に身構えるより、目前の一日を無心に生きることを選んだ。
 40歳になったのでバリウムやCTをちょいと受けてみようか、という現代人の余命よりも、いにしえの人たちの余命は長かったに決まっている(もちろん、40歳になるまで彼らが生きていればの話だが)。
 いにしえの人たちならば、もっと技術をうまく使いこなし、結核も肺ガンも防げるかもしれない。少なくとも早発ガンの原因となる医療被害を、放任することはないだろう。
 

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