封土と開土
封建的領土から国土へという社会的構造変遷は本来それに伴った意識の変化をもたらすものであった。すなわち、農民的領土意識から国民的領土意識への変化のことである。しかしながら、この変化は自然的に生じることはなかった。なぜなら、国土という概念においては、もはや封建的領土が存在する余地はなく、政府によって一元的に管理される体制があるのみで、人民と土地の結びつきを守るいかなる社会精神も除斥されているからである。国土はそれ自体で、人民(国民)を土地につなぎとめる機能を具有していない。国土という概念が土地を占得している世界においては、人民は国土の中を自由に往還することができる。当然、人民は農業よりも高い労賃を供する雇用を求めて、国土の中を移動する。近代世界における経済は、封建的領土から国土という土地改革や土地整備によって、この移動を無限に拡大させる。