
フランス漫画版「わが名はレギオン」(ネタバレ)
1.今回の記事の趣旨
第二次世界大戦下、ナチスによる吸血鬼伝説を元にした最強軍隊計画「レギオン・プロジェクト」!
その謎を解き明かそうとする、過去を背負った中年の敏腕イギリス刑事とその一味!
幾通りもの顔で暗躍するスパイ!
吸血鬼の血を引いたトランシルヴァニア出身の謎の美少女!
ナチスへ深い恨みを持つレジスタンスの兄ちゃん!
吸血姫による最強軍団を作る「レギオン計画」を中心に、スパイやら大国間の駆け引きやら、世界を股にかけた非常にサスペンス要素の強いSF作品で、ジェットコースターに振り回されるような感覚で一気読みさせられた、非常に魅力的な1冊でした。
が、その一方で、人物の描き分けが微妙で判別がしにくい(しかも服装や髪型をしょっちゅう変える)、ページどころかコマごとにキャラの顔が違う(特にマジョリー)、肝心なところで誤植、急に出てくるファーストネーム、日本人には馴染みの薄いナチス組織の上下関係など、理解しきれない部分が多いのも事実。
なので、感想と言うより頭の整理をするべく、
「自分なりに理解したストーリーや事象、キャラクターのプロフィール」
を書き綴ることにしました。
ネタバレガッツリ、かつゆっくり更新していこうと思います。
2.ストーリー
スタンリー編:捜査とイギリス政府の動きがメイン
①(イギリス)ソープ殺害及び邸宅爆破事件からスタート。ソープの全身の血液が無くなっていることを知る
②コールリッジ大学をアジトに、チームで調査を開始。死亡直後のソープに謎のアザがあること、ソープとアメリカ大使ケインズが友人同士であることが発覚
③ソープ殺害前夜、クラブ・ネルソンでソープとウィルケスが会っていたこと、ソープが一億ポンドを数年かけて売却していたことが判明
④手がかりを得るために、ウィルケス宅の金庫破りを実行。入手した書類から、ソープの遺産をウィルケスとケインズが受け取ったことが判明
⑤ウィルケスとケインズがアメリカ大使館で接触。ウィルケスの指示で、ケインズからヘルマンにコニャックの箱に入った酸化起爆装置を送ったかを確認する。大使館から出てきたウィルケスをスタンリーとレスターが車で連行するも、ウィルケスが突如癲癇症状を起こす。即病院に担ぎ込まれたが、その際にアザを発見
⑥チームの部下たちによって、今回の事件とドラキュラ伝説との関連性が遂につきとめられる。意識を取り戻したウィルケスを尋問するも、会話にならず
⑦スタンリーがロンドン統制部に出かけている間、レスターがウィルケスの尋問を続けるが、突如ウィルケスが舌を噛み切って死亡。ウィルケスの中にいたラドゥがレスターに移動し、レスター(ラドゥ)は病院に火をつけ、奇跡的に助かったマジョリーを除く全員を殺害
⑧レオの助けを借りて、クックと共にケインズ大使を襲撃し拘束。大使が共産主義打倒と戦争終結のために、ソープの生前時から彼から提供された資金を賄賂として利用していたことを知る。また、ドイツ側でアメリカと繋がっているのはアブヴェーアのトップのカナリスで、その仲介はトリニティ(恐らくヘルマンを指す)だったことも発覚
⑩レスターを拘束し射殺したところを警官に捉えられ、チャーチルの元に移送される。彼の口からナチスの各収容所に(多分)レギオン化された囚人が大量にいることが判明。ルーズヴェルトとスターリンはワルキューレに同意したが、この事実を知っているチャーチルは協力しないことを決断。戦争続行を決断したチャーチルに失望
⑪マジョリーとサー・ジョンの尽力で保釈され自由の身に
カレル編:武闘派によるレギオン計画と吸血鬼討伐
①(ルーマニア)ナチスの手によって、レジスタンス組織ベネフィットが壊滅の危機。カレルも間一髪で逃げ延びて、肉屋の地下に匿われる
②肉屋の娘、マリアの協力によりヘルマンからレギオン研究の資料を受け取り、コマンド部隊と共にルドルフ殺害計画への参加命令を無線で受けることに成功
③(ハンガリー→ルーマニア)12月31日ルドルフ襲撃。パラシュート失敗で、コマンド部隊のルーマニア人のスパイ、エミールが死亡。コマンド部隊のリーダーであるサイクス大佐がルドルフを殺害する直前、赤い線が走る不思議な現象を目撃。ルーマニアの伝説、ストリゴイ(吸血鬼)なのではと疑いを持つ。逃走中にスパイのポール、コール伍長死亡
④作戦終了後、マリアの知人であり協力者のボルジェス神父にストリゴイの居場所を聞くと、アナの住む村を教えられる
⑤マリアと接触し、共にキプロスまで船で逃げようと提案。しかしその前に、ストリゴイ討伐をしなければルドルフ殺害の過程で散った同志達が浮かばれないと語り※、マリアに協力を求める
⑥村に着くと、既にヘルマンの手でほぼ壊滅。死にかけたアナの父ロマン(ラドゥ)がマリアに転移。その後カレルに取り付こうとするも、カレルは油を被ってラドゥと共に爆死
⑦と思ったが、死んだのはカレルだけで、ラドゥは間一髪レスターに転移して生き残り、レスターがスタンリーに射殺された後は元の宿主であるアナの元に戻る
⑧マリア(ヴラド)とアナ(ラヴァ)は、共にキプロスに逃れる
ルドルフ編:レギオン計画サイド
①(ドイツ)レギオン計画を頓挫させようとするヘルマンと会談後、ヘルマンにスパイをつける(同時刻にロンドン統制部において、12月31日にウィルケス(中身はヴラド)主導でコマンド部隊とベネフィットによるルドルフ殺害が決定)
②(ルーマニア)12月29日のレギオン実験に同席
③ヘルマンが男色家であることを理由に、スペインにいるヘルマンの殺害を計画。しかし彼の殺害したい本命はヘルマンの上司、カナリスであることを語る
④(ルーマニア)12月31日にコマンド部隊の襲撃を受ける。その際、コマンド部隊のサイクス大佐から「弟のラドゥはどこだ?」と質問を受けたことて、大佐の中身がヴラドであることを知るもそのまま殺害される
ここからアナ編:
①(ルーマニア)ルドルフが殺されたことを察知。その直前、父親が村人に襲われそうになったことを知り、レギオン化した人間を使って村人を殺害
②ナチスによって村が襲撃されることを察知し、狼を集めて血を与える
③アナの父ロマンが、ラドゥに取り憑かれたアナを哀れんで殺害しようとナイフを持ち出す※
④ラドゥがアナからロマンに移動。アナは普通の女の子に戻る
⑤狼やらレギオン化した人間やらを使ってナチスを迎撃すると同時に、ヴラド殺害に動き出す
⑥ロナン(ラドゥ)VSシュローダー(ヴラド)のタイマン対決
⑦死にかけたヴラドはマリアに、同じく死にかけたラドゥはレスターに転移。マリアから出てカレルに取り憑こうとしたヴラドだが、カレルがガソリンを被って自殺。これでヴラドは消滅したかと思いきや、自殺直前にマリアを再度乗っ取る。レスターに転移したラドゥも、レスターがスタンリーに射殺されたため、死の直前に元のアナの体に戻る
⑧マリア(ヴラド)とアナ(ラヴァ)は、共にキプロスに逃れる
ヘルマン編:スーパースパイの戦争終結ミッション
①(ドイツ)ルドルフとレギオン計画について密談後、レギオン計画責任者のツェイフ博士と接触。レギオン計画を失敗させるため、ルドルフによる修正の入っていない客観的な研究成果を入手し、更に計画の課題を聞き出そうと詰め寄る
②ツェイフ博士から受け取った研究資料をマリアに渡し、カレルの手に渡るように仕向ける
③(ルーマニア)12月29日の実験に同席
④(スペイン)アミラル大将(カナリスのこと?)と密会。レギオン計画をアーリア人理論に背いているとしてゲッベルスに報告、ルドルフを死刑にする案を考え出す。ルーマニアへ行くよう指示を受ける
⑤ウィルケスの指示によってケインズ大使から送られてきた、コニャックの木箱(中身はイギリス製の酸化起爆装置)を受け取る
⑥ルドルフ陣営の奇襲を受け、恋人のユルゲンが死亡
⑦(ルーマニア)カナリス海軍大将の命令により、本名のフォン・クライストとしてルドルフの殺害に関する捜査、並びにレギオン計画の抹消を始める
⑧カレルを匿った罪で牢獄に入れられたマリアの父、アントンを尋問。カレルがドイツ人と接触していたと語ったため、自身の行動(ツェイフ博士の資料をマリア経由で渡した件)が露見する危険性を感じ、アントンを射殺。更にそれを責める部下のシュローダー(レギオン計画実行側)に対し、「研究資料がカレルの手に渡ったのは、お前のとこの『技術者たち』がスパイだったせいだ」とでっちあげの主張を行い、更に用済みになったカレル達を殺そうと動き出す
⑨カレルは逃げた後だったものの、サイクスとコールが潜伏するボルジェス神父の教会で銃撃戦を開始。その際、サイクス(ヴラド)がシュローダーを捉え、体を乗っ取る。コールと神父も銃撃で死亡したため、ルドルフ殺害犯はカレルを除き全滅した
⑩アナの村殲滅作戦開始。移動中のシュローダーの発言から、彼がヴラドに乗っ取られたことを知る。シュローダー(ヴラド)はラドゥを殺したくてたまらない様子
⑪ラドゥを殺しに行ったヴラドの後ろ姿を見送る
⑫ヒトラーの乗った航空機に酸化起爆装置を仕掛けたものの起動せず、暗殺計画は失敗。これによりワルキューレ計画は失敗に終わり、レギオン計画の全容を唯一知るヘルマンは監視下に置かれることになる。しかし、カナリスは未だ別の手を考える様子でこの場を立ち去った。史実通り、この後カナリスはヒトラー暗殺計画の罪で処刑されると思われる。
3.用語・事象
○首の後ろのあざ
ヴラドもしくはラドゥに乗っ取られると発生する特徴的なあざ。どちらに乗っ取られたかで、あざの形が変わる。
直接の乗っ取りが条件のようで、アナの血を注射され、実験に使われた兵士達にはあざが見当たらなかった。
このあざが発生した場合、ヴラド達が体から抜けたとしても、彼らが望めばいつでも再度宿主にされてしまう。
また、同時に複数の肉体に宿ることも可能な様子。
○レギオン化(勝手に命名)
吸血鬼の血を摂取することで、血の本来の持ち主の言うことに絶対的に従うようになる状態。
一種のトランス状態になるようで、脳内に直接指示を受けて、恐怖も痛みも感じずに、ひたすら命令に従う。
この特性に目をつけたナチスが、このレギオン兵を使って戦争に勝利しようと研究を始めたのが、この物語の発端となる。
〇ロンドン統制部
連合国が勝利を収めるために、情報操作を行う中枢組織。
9人のおっさんが陸軍省の地下に集まって、ファウマスという軍神の像を囲んで話し合いをする、ゼーレと円卓会議を混ぜたようなスタイルが魅力。
トップはイギリス首相チャーチル。
正直、勿体ぶってるだけで役に立っている感じがしない。
ドイツのカナリス大将による戦争終結計画「ワルキューレ」に協力していたが、ナチスの強制収容所にいるレギオン達の数に恐れをなして、最終的に協力を拒否。
しかもチャーチルは拒否するだろうと、元々カナリスとウィルケスから見抜かれていたというおまけ付きで、スタンリーは大いに失望した。
〇ベネフィット
ルーマニアに拠点を置くレジスタンス組織。
初っ端から壊滅しそうになるが、他にもアジトがあるのか、ロンドン統制部から妙に厚い信頼を得ており、ルドルフ殺害計画への参加を依頼される。
ウィルケス(ヴラド)が祖国ルーマニアに思い入れがあり、尚且つ宿敵である弟ラドゥを殺害するために使えると思ったから選ばれのだろうか。
○親衛隊情報部
ルドルフがトップを務める諜報組織…だが実際は「ヒトラーの恐怖政治の道具」とヘルマンから揶揄される等、諜報機関としてはあまり優秀では無い模様。
レギオン計画を遂行しており、その成功に全力を注いでいる。
しかしウィルケス送り込んだコマンド部隊のせいで、ルドルフは死亡しレギオンの研究所は壊滅。
更にヘルマンの活動により、「(異人種を用いた本計画は)アーリア人理論に背いている」と当のヒトラーからレッテルを貼られる始末。
〇アブヴェーア
ナチスの諜報活動機関で、ルドルフの親衛隊情報部とは犬猿の仲。
トップは海軍省のカナリス大将。
カナリスはドイツ人ながら、反ナチス、反ヒトラー主義者であり、戦争終結のための「ワルキューレ」計画をアメリカとイギリス、ロシアに提案する「命懸けの二股野郎」。
盟友のソープ(中身はヴラド)と共に活動しており、ソープ死亡後はそれがウィルケス(ヴラド)に取って代わる。
本作では描かれていないが、ワルキューレ作戦が失敗に終わった後、反ナチスの罪で処刑される。
○トリニティ
一番よく分からない組織。
当初は単に連合国に情報をもたらすスパイ組織ということだったが、どうやら上部組織はアブヴェーアらしい。
更にケインズ大使の「カナリスが信用出来る1人のスパイを通じてイギリスにコンタクトしてきた。彼の名はトリニティ」と発言していることから、トリニティとは組織ではなく個人名で、ヘルマンのことを指すと思われる。
〇ワルキューレ計画
カナリスが提案する戦争終結計画。
ヒトラーが何らかの理由で指揮を取れなくなった場合、カナリス率いるドイツ国防軍が臨時政府を指揮するというもの。
実質、カナリスの独裁政権樹立計画。
そのためには、邪魔なレギオン計画とその推進者であるルドルフを殺害する必要があった。
イギリスのチャーチルは断ったが、共産主義の台頭をナチス以上に恐れるアメリカにおいては、ルーズヴェルトに圧力をかければ受け入れられる可能性があり、そのためにカインズ大使は、党派関係なく議員を抱き込むために金を使いまくっていた。
金の出処は生前のソープで、ソープの死後はウィルケスに取って変わった。
この計画の最終段階は、コニャックの箱に入った酸化爆弾を詰んだヒトラーの航空機を爆破させ、彼を暗殺することで、カナリスが政権を握り、ロシアを敵に見立てて戦争終結を宣言するというものだったが、失敗に終わった。
4.キャラクター(組織名等も含む)
〇ヴラド・ドラキュラ・ツェペシュ
15世紀に活躍した、吸血鬼伝説の始祖のルーマニアの領主で、現在も他人の体を乗っ取りながら生存中。
自分の血液を介して、他人の体や意識を乗っ取ることが出来る。
人間として生きていた頃に権力闘争に飽き飽きしたため、今となっては人間との接触を避けて、ひたすら永遠に生きたかったと主張。
ところが、弟のラドゥは権力闘争やる気満々。
レギオン計画を使って世界征服を企んでいることに非常に怒っており、「裏切り者」と罵倒するほど。
そのため、ソープの体を乗っ取って、「ワルキューレ」計画なる戦争終結プログラムを打ち出し、ナチス打倒のため暗躍しているが、別に善人では無い。
この考え方の違いによる壮大な兄弟喧嘩が、本作の悲劇の原因。
ソープ→ウィルケス→レスターと渡り歩いて、最後はマリアの体に落ち着いた。
同時期にサイクス大佐の身体も乗っ取っており、サイクスの死後はシュローダーに転移、シュローダーがカレルの自爆に巻き込まれて死亡する直前にレスターに移った。
〇ラドゥ
ヴラドの弟で、兄と同じ能力を持つ。
元々は森の中で引きこもっていたのが、アナの母ちゃんが娘の回復を祈って呪いを口にしたのをきっかけに、アナの中に住み着いてしまう。
森の中でこっそり暮らすのに飽き飽きしており、兄と違って征服欲も強いため、アナの体を使ってやレギオン軍団を作り、ストリゴイ(吸血鬼)による世界征服を狙っている。
引きこもりが急に外に出てきた結果、弾けちゃった感が強い。
アナ→ロマン(アナの父)→アナと体を渡り歩き、ラストにマリアとアナとして2人で船上で肩を寄せあっていたので、殴り合いをしたら案外それで気が済んだのかもしれない。
どちらにせよ、とても迷惑。
〇ピーター・ウィルケス
ロンドン統制部の一人。
ジョンの元上司なので、警察上がりらしい。
物語冒頭にいきなり殺された人…というか体を乗っ取られた一人。
乗っ取ったのは、ヴィクター・ソープ(中身はヴラド)。
重要なキャラの割にすごいモブ顔で、似たような顔のモブが何度も出てくるせいで、毎回「誰だっけ?」ってなる人の1人。
カナリスと共にワルキューレ計画の下、ルドルフ殺害とレギオン計画を潰すために全力を注ぐ。
物語の終盤、スタンリーに拘束された際に急に癲癇症状を起こした理由は?
同じタイミングでサイラス大佐も体調を崩していたところを見るに、中にいるヴラドが関係しているらしいが、よく分からない。
〇ヴィクター・ダグラス・ソープ
超大物の政治家だか軍人だかで、かつ大資産家。
物語冒頭以前からヴラドに体を乗っ取られており、その理由は、ドイツスパイのトップかつアブヴェーアのトップ、カナリス大将の盟友だったことにあると思われる。
それでも殺されてしまったのは、ヴラドが多額の資金を必要とするようになったから?
〇ニコライ・モルドヴァン
ルーマニアからの移民で、母ちゃんと姉ちゃんと3人暮らし。
ソープの使用人。
姉ちゃんはともかく、母ちゃんの方は息子がレギオン化したことを知って、恐怖のあまり頭がおかしくなったらしき描写があるので、彼は家族の収入を確保するために、レギオン化(あざがないから)を受け入れた可能性が高い。
物語冒頭のウィルクス殺害時は普通に喋っていたのに、後半に姉が殺された(殺した?)際には、廃人みたいな喋り方になっていたところから察するに、時間が経つにつれ、命令を下されていない状態でも、自我が崩壊する模様。
〇カレル・リチェク
ベネフィットのメンバーで、主人公格の1人。
相当な苦労人のようで、死んだ少年の身分証から得た名前で暮らしており、本名すら分からない。
最序盤でナチスによって手を撃たれ、それが原因で?後に人差し指を自分で切り落としていたことに、なんの意味があるのかは謎。
高い戦闘能力と現実に則した判断の速さに定評があるが、同志であるルシアンを殺す羽目になったのは相当応えた様子。
そういえば物語冒頭で、ルシアンに「水晶を寄越せ!」と叫んでいたが、通信装置の暗喩かなにかなのだろうか?
最後はマリアを乗っ取ったヴラドに転移されそうになり、自らガソリンを被ってヴラドと共に爆死した(肝心のヴラドはマリアに乗り移って逃走)。
物語屈指の熱い正義感のある男だが、なんでレギオン討伐を一人でやろうと思ったのか、正直理解し難い。
レギオン計画の中身を知っていたから、サイクス大佐のルドルフ殺しの姿を見てピンと来た?のかもしれないが、絵的にはどう見ても吸血鬼と結び付けられるようなところはないので、唐突感がすごい。
〇スタンリー・ピルグリム
ロンドンの敏腕刑事で、主人公格の一人。
とにかく優秀で、上司(サー・ジョン・ハスティンク)からも部下(レスター、トラスク、ブロディ、マジョリー)からも信頼が厚いが、秘書との浮気中に奥さんが殺害されるというトンデモ不祥事を起こしている。
本人曰く深く反省しているそうだが、その割に妻の死から大して時間が経っていないのに、部下のマジョリーとの距離感が妙に近いし、部下が次々と殺される中、マジョリーの名前しか呼ばないし、と真面目そうに見えて女に関しては不誠実な男という印象が否めない。
とは言え、調査・推理パートはカッコイイ。
上司のサー・ジョンが統制部入りした際、彼の部下として統制部付きとなったのか警察を辞めた模様(レオの発言から)。
〇ツェイフ博士
ルーマニアのトランシルヴァニアにあるタルグソル研究センターの所長であり、レギオン計画の責任者。
レギオン化という名の人類モルモット計画の非人道性は気にしないのに、ルドルフからの実験催促に対しては「品質の保証が出来ないだろ!」とキレる、典型的なマッドサイエンティスト気質の男。
科学者としては優秀ではあるものの、ナチス高官から「身を弁えろ」的な発言をされており、現にヘルマンからは計画失敗に結びつきそうな情報開示を迫られるわ、それをルドルフに知られて拷問されるわで、世渡り下手。
研究所爆破の際に死亡とされているが、ルドルフの部下による拷問の末の死亡のような描写も見られる。
〇アナ・アンスレア
父のロマン、母のイリナとトランシルヴァニアで暮らす10歳のルーマニア人の少女。
物語の主人公格の一人で、吸血鬼の祖であるラドゥに乗っ取られている…というか、彼女の場合は一つの体内で同居している。
幼い頃は病弱で、それを案じたイリナが森で呪いを行った瞬間、ラドゥが呼び出されて同化した。
ラドゥの持つ能力と記憶をそのまま有している。
両親共に娘への恐怖と心配を同時に抱えているものの、母のイリナは彼女をナチスに差し出すことで生活を豊かにすることを優先し、父のロマンは敵であるナチスに媚びを売っている現状に苛立っている。
アナ自身は、他人を奴隷のように扱う、人殺しに対して何の感慨も持たない、自発的に狼を操って人間を襲わせるなど、21世紀の人間というより、ラドゥの生きた15世紀の大貴族らしい価値基準の持ち主。
ルドルフに向かって「(ラドゥじゃなくて)アナと呼ぶのは怖いからか?」と質問していることからも、アナ本来の人格はほぼ消滅していると思われる。
今後もラドゥの入れ物として生きていくんだろうな…と思うと、その代わり映えのない彼女のその後にはあまり興味が持てない。
〇レスター・コリンズ
スタンリーの部下。
暗い性格の持ち主オンパレードの本作の中で、唯一明るいテンションだから逆に怪しい…と思ったら、案の定ラドゥに体を乗っ取られる。
最後はスタンリーによって殺される。
〇マジョリー・ワッツ
スタンリーの部下で、唯一の女性。
美人になったり、ババアになったりともはやコマごとに顔が変わる上に、服も髪型もしょっちゅう変わるので、女性じゃなかったら恐らく最も判別しにくいキャラだったろう人物。
スタンリーの亡くなった嫁と仲が良かったらしく、スタンリーに地味な嫌がらせをする…けど、ずっとスタンリーのことが好きだし、その気持ちはレスターにはバレてるらしい。
しかも最後くっついたので、男女関係ってよく分からん。
〇ルドルフ・ヘイツィグ
ナチス親衛隊大将であり、親衛隊情報部の東欧全体を押さえるトップ。
超優秀だが、女癖が悪い。
レギオン計画の事実上のトップで、ウィルケスに成りすましたヴラドが最も殺したい男。
知的にも肉体的にも強いと言われていたが、作中ではサイクス大佐(ヴラド)を前に泣くわ、すぐ殺されるわで、意外と弱かった。
〇ヘルマン・ヴェゲナー
本名はヘルマン・フォン・クライスト。
主人公格の一人。
ドイツの重工業企業であり、軍需にも携わるクルップ社の重役…というのは仮の姿で、実際はアプヴェーアのスパイ…というのも仮の姿で、実際はトリニティのスパイ。
あまりにはっきりアブヴェーアの人間だとアピールしているせいで、途中の人物紹介に「スパイ」の3文字を発見した時は、「あれって周知の事実じゃなかったの!?」と逆に驚いた記憶が笑
ルドルフとは、軍事学校コブレンツの同期だが、
ライバルである親衛隊情報部主導のレギオン計画にはアブヴェーアの人間として非常に懐疑的で、何とか潰そうとしている。
実は男色家でユルゲンという恋人がいるが、スペイン滞在中に殺害された。
その後、カナリス大将の命令により、本名のフォン・クライストとしてルドルフの殺害に関する捜査、並びにレギオン計画の抹消を開始。
カレルとの接触を僅かでも気付きそうなアントンを即射殺するわ、ルドルフ殺害を達成して用済みになったコマンド部隊を銃撃戦の末、全員を始末するわと、悪役にしか見えない行動を取る。
しかし一方で、アナの村殲滅作戦では大量の死体を目にして涙し吐いてしまうなど、決してツェイフ博士やルドルフのような非人間的に人物では無い。
シュローダーがヴラドに体を乗っ取られたことに即気付く、ワルキューレ作戦を口にする等、多くの物事に精通している。
〇ブライアン・サイクス大佐
イギリス人?で、12月31日のトランシルヴァニア・アルベスティ城のルドルフ殺害においてコマンド部隊を率いた人物。
ヴラドに乗っ取られており、ルドルフを射殺した後、ヘルマンによって潜伏先の教会が襲撃されると、ヘルマンの部下であるシュローダーの体を乗っ取った。
〇レオ・ハミルトン
クラブ・ネルソンと裏カジノのオーナー。
過去にスタンリーに救われたことから、彼の協力者として動いている。
部下のクックは殺しのプロ。
〇ジョゼフ・ケインズ
アメリカ大使で、強烈な反共産主義者。
そのためヒトラー陣営と見なされ、ウィルケス(ヴラドに乗っ取られる前)から6度に渡り国外退去命令を受けている。
長期視点で第二次大戦を捉えているアメリカの議員や産業界の人間にとっては、ヒトラー以上に共産主義の方に危機感を抱いており、アブヴェーアトップのカナリスと共に、戦争終結のためにカナリスの盟友ソープの資金を賄賂としてアメリカ議会を動かそうとしていた。
ソープの死後はウィルケスが窓口に変わったが、勿論中身が入れ替わったのを知らない大使は「訳が分からん」とキレていた。
○シュローダー
ルドルフの信奉者で、恐らくナチス親衛隊。
レギオン計画にもかかわっており、ヘルマンの部下として働き始めたと思いきや、早々にサイクス大佐(ヴラド)に乗っ取られる