自身初の小説『ハゲとモテ』

さて、初めて小説といっても短編ですが、書きたいなと思いました。

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「近寄らないでください―」

僕は恵子から初めてこういうことを言われてしまった。

アルファベットコーポレーション社員の僕がこんなことを言われるとは思わなかった。

コロナが広まって以来、僕はリモートワークをしていた。
そんなときに、某話相手募集掲示板で出会い、話し始めたのが女子大生の恵子だった。
毎日通話する中で、仲良くなっていき手書きのラブレターをもらうまでになった。
ただ、毎日通話していが、ビデオ通話だけはしたことがなかった。
僕は20代半ばにして、かなり禿げていて自信を喪失していたからだ。

しかし、3ヶ月話すころに、恵子からどうしても会いたいと言われた。

僕は恵子から手書きのラブレターをもらったし、天下のアルファベットコーポレーションの社員だ。

絶対の勝算があった。

東京駅でお昼に会って、僕の家でお泊りすることになっていた。
恵子は福岡県から新幹線で東京駅にくることになっていた。

会う当日、恵子からラインがきた。

小泉さんどんな人か楽しみだなぁ♡というラインに僕も!と返したが、一抹の不安があった。

僕は写真すらも恵子に見せたことがなかったからだ。

12時。東京駅の中央改札から恵子らしき女性が現れた。

「恵子ちゃん!」
と僕が声をかけると、恵子が振り向いた。

恵子は僕を見て、不機嫌な顔をしていた。

長旅の疲れだろう。

僕はそう思った。

「とりあえず、ご飯いこっか!」

僕はそう声をかけ、手を繋ごうとした。

「近寄らないでください。」
恵子のこの言葉に驚いた。

きっと、恥ずかしがっているだけなんだろうと思い、いきなり手を繋ごうとしたのはまずかったかなと思った。

しかし、恵子に近づくと、
「もう少し離れてください」
と言われてしまった。

おかしいとは思いつつも、お昼ご飯に予約したお店に入った。

無言でお寿司を食べて、恵子は一言ボソッと
「小泉さん、髪短い方がいいですよ。」

僕は比較的髪が短かったの清潔感はあるはずだ。
そう思っていると、
「小泉さんはスキンヘッドが似合いますよ。」

恵子のその言葉に驚いた。

恵子には変わっているところがあるとは思っていたが、まさかそこまで変わっているとは思わなかった。

「恵子ちゃんが好きならスキンヘッドにしようかな?」
と僕は話したが、やはり恵子は不機嫌な表情をしている。

寿司屋を出て、
「次は喫茶店に行こう」
と僕は言った。

そうしたら、恵子はなんと、
「もう帰る。」というのだ。

「わざわざ、福岡から東京まできたし、お泊りするってことになっていたよね?」と僕は言った。

「急用ができたの。」と恵子はあからさまなウソをついた。

僕は、変な人だと思いつつ、
「わかった。わざわざありがとうね。」と言ったが、恵子は汚物を見るかのような目をして無言で東京駅に戻っていった。

東京滞在時間1時間程度であろうか。

何かがおかしい―

僕はそう思い、恵子になぜすぐ帰ったのか?僕が失礼なことをしてしまったのかを聞いた。

そうしたら、恵子からすぐにラインが返ってきた。

禿げは予想外。恋愛対象として見れない。もうラインしてこないでください―と書いてあった。

天下のアルファベットコーポレーション社員で高収入の一流大学出身の僕がこんなことを言われるとは思わなかった。

その日に、友人のタカシに洗いざらい話した。

タカシからは慰められた。

僕は、そこまで禿げていないと思っていたが、鏡を無意識に避けるようになっており、地肌がもろに見えていた。

僕は発狂しそうになり、タカシに「一体どうすればモテるようになるんだ。僕はこんなにエリートで顔も悪くないのに、なぜ拒否されなければならないんだ。」

と叫ぶかのように話した。

そうしたら、タカシが、「日本皮膚科学会のAGAの治療法のガイドラインによるとこういうことをするとハゲは治るらしい」

といった。

タカシは安くハゲを治す方法も教えてくれて、半信半疑でハゲ治療をすることにした。

1週間、2週間では成果はでなかったが、1ヶ月を経過するころには髪のコシや太さが変わり、新たに髪が生えてきたような気もした。

僕はタカシに会うと、タカシからも
「髪少し生えたね。」
と言われた。

だから、もう少し続けようと思った。

4ヶ月を超えるころには随分と回復し、6ヶ月を超えるころには実年齢の20代半ばの男性並みの髪の量になっていた。

よし、今度はマッチングアプリをしてみよう。

僕は、マッチングアプリを使ってみることにした。

実はマッチングアプリを使うのは2回目なのだが、以前は5イイネしかこなかった。
しかも、40代女性からばかりだった。

僕は髪が生えただけだ。

しかし、全くこれまでと反応が違ったのだった。

イイネが1晩で20人からきたのだ。

僕はこの変わりように驚いた。

僕は驚き、20代の美女5人とだけマッチングして、メッセージのやり取りをした。

そうして、実際に絵里というイイネが500以上ある女性と会うことになった。

絵里は恵子よりも圧倒的に可愛い。

絵里と会う日になって、恵子のことを思い出し怖くなってしまった。

しかし、会ってみると、失礼なことは言われなかったし、お昼に会って、深夜まで飲んだ。ラインも交換してまた会うことになった。

タカシのこのことを話したら、タカシから
「髪が生えたから受け入れらたんだ」

と言われ、僕は本当にそうなのかなと思った。

絵里と付き合うと決めてから、残るマッチングした4人にハゲは恋愛対象に入るか?と聞いたところ、ハゲはなしという回答が4人全員から返ってきた。

タカシのいうことが本当だと考え、マッチングアプリでは2回目に告白してもいいというネット記事を見て、次に会ったときに告白することにした。

しかし、僕は恋愛経験が少なかったこともあり、マッチングした女性である結衣と練習で会うことにした。
結衣からも好かれてしまった。

僕が恋愛で失敗してきた原因は髪だったんだとわかり、もはやハゲではない自分に自信がついた。

しかし、今もAGAの薬を続けている。

タカシには
「もし、絵里と付き合えたら寿司奢ってやる」
といった。

そのくらい、絵里と付き合えたら安いものだ。

2回目、絵里と会ってその日の夕食を食べた後、みなとみらいで夜景を見ながら告白した。

僕の告白は受け入れられたのだ。

その後、横浜の僕の自宅に絵里と泊まることにした。


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