「選手」、ユドニス・ハスレムの価値
ユドニス・ハスレムがMIAと再契約
先日MIAが今年42歳になったユドニス・ハスレム(以下:UD)と再契約を結びました。これで在籍20年になり、歴史を見ても有数の在籍年数を記録することとなります。とは言え、UDが「戦力」としてロスターに入っているわけではありません。前例のない特殊な位置にUDはいるのです。
しかしながら、「チームの貴重なロスタースポットの1つをプレイしない(させない)選手に与えるのはどうなのか」、という声も方々から上がっています。そこで今回はMIAにおけるUDの重要性を解説していきます。
リーグで最も尊敬されている選手
UDはリーグで最も尊敬されている選手の一人であることをご存じでしょうか。MIAのレジェンド、D.ウェイドは最高のチームメイトとしてレブロンではなくUDの名前を挙げており、「クラブにいても、コートにいる時もUDは僕を支えてくれた」と語っています。彼への尊敬はチームの内側に留まりません。ブレイク・グリフィンは出演したポッドキャスト番組にて「彼(UD)は誰からもリスペクトされている。NBAの中でも最も支持されている選手。」とUDを評価しています。グリフィンとUDの間に表立った個人的な繋がりはあるように思えませんが、それでもリスペクトを勝ち得ているUDの人柄が伝わります。
MIA文化の伝道者
MIAのチーム文化はかなり独特です。1人のスターの言動に右往左往するチームもある中、徹底されたカルチャーによってMIAは強豪の地位を築いてきました。そんなチームに20年もの忠誠を誓っているUDはMIAの文化そのものと言っても過言ではないでしょう。彼を切り捨てることはMIAの文化を手放すことと同義です。
最近のインタビューで、UDは自身を「ヒートの伝道者」と表現しました。近い将来のMIAのフロント入りがほぼ確定しているUDですが、「選手」ならではのベンチやロッカールームでの振る舞いなど、未来のMIAを担う若手らに伝えられることはたくさんあります。
「選手」として契約する意味
MIAは知っての通り、現在優勝を狙っているチームです。一人でも多くの戦力が欲しいはずなんです。
「メンターならアシスタントコーチにでもすればいいじゃん!」
「UD入れるなら他のFA獲ればいいじゃん!」
正直、正論だと思います。ですが、「選手」として契約する意味が確かにあるんです。次のツイートを見てください。
この映像は少し前にMIAのいざこざとして話題になったものです。ここで注目してほしいのが、UDが言い合いの中心になっているバトラーとスポールストラとの間にすぐに割って入ったということです。普通、バトラーほどの大物スターに面と向かって抗議することはできません。したとしても強くは出れないでしょう。多くの人から尊敬を集め、チームのカルチャーを誰よりも理解しているUDという「選手」だからできる行動です。
そう、「選手」だからできる行動なんです。もし、UDがアシスタントコーチ(フロント陣営)だったらこの言い合いはどういったものになるでしょうか。きっと「フロント VS 選手」という亀裂が生じ、問題の原因をお互いに押し付け合っていたかもしれません。しかし、「選手」としてフロントにも寄り添うことができるUDであるからこそ、「フロント VS 選手」という立場の違いによる亀裂は産まれず、「立場関係なし全員の問題」になり、問題の原因を全員で見つめなおすことができます。そして、そういったコミュニケーションが結果MIAの素晴らしいケミストリーにつながります。この仕事は24人いるオールスターにもできるものではありません。リーグでただ一人の「ユドニス・ハスレム選手」にしかできない仕事なんです。
来季限りで引退のハスレム
そんなUDも来季限りで引退することをほとんど明らかにしています。しかし、来季も彼は「選手」として全力を尽くし、MIAに優勝をもたらすために自己をも犠牲にします。最高のバスケットプレイヤー、ユドニス・ハスレムの最後は見逃せません。