Lov*Ram Factory


「かわいい、そして人々に好かれる。そんな願いを込めて、この事務所を立ち上げたの」

その矮躯(わいく)をいっぱいに伸ばし、長い黒髪を頭の両方(所謂ツインテール)に結わえた少女は言うと、にこりと微笑んだ。

此処は天河区とも、凪沢町ともつかない、辺境の地に建つ小さなお家。……否、外観こそ「戸建て住宅」のようだが、その中身は外観からは想像もつかないくらいに広く、大きい。

『Lov*Ram Factory』
そう名付けられたこの建物は、総勢5名のスタッフで成り立っており、中でもこの目の前に立つ少女こそが、このFactory内の「絶対君主」。要するに「所長」の……

「ところで沃菟(こと)? 突然この事務所について教えてなんて言うからなんとなく話してたけど、こんな話聞いてどうするつもり?」

「あ、はいっ!」

この事務所(Factory)の所長、咲霧(さきむ)は不思議そうな、訝しむような目線を此方に投げると、隣に座るよう促す。机の上にはふたり分のお茶とお菓子が整然とならんでいた。

「もっとこの事務所のこと、色んな人に知って欲しいなって思って。ほら! 咲霧お姉ちゃんってお歌歌ったり踊ったり、コスプレしたり、お芝居したり、作詞したり、色んなことが出来るじゃない? だから、もっともっと、もーーーーっとそれを発信すれば、もっと沢山の人が、お姉ちゃんの魅力を知ってくれるんじゃないかなぁって……」

段々もごもごしていく説明に、納得してか否か、咲霧はひとつ頷き、そして得意気にこう告げた。

「そういうことなら、もっと色んなこと聞いて! この事務所は、私の「好き」と「楽しい」が詰まった、最高な事務所なんだから!!!」

~完~

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