DOG TAGの話(ココログから転載)
さて、写真を見てください、2006年12月14日のアメリカ陸軍の公式写真です。
逆さに立てたライフルに掛かるDOGTAGはイラク戦争での戦死者の物だそうです。(合掌)
さあ、気を取り直していきましょう。
写真のDOGTAGをよくみると、我々がショップで作ってもらう物と変わっています、打刻だった文字がエンボスになっていますよね、湾岸戦争以降順次変更されたらしいのですが、正確なところはわかりません。
頑張って調べてまたご報告します。
それでは本題、重複もありますが、よろしくお付き合い下さい。
DOGTAGって何?
日本ではアメリカ軍タイプの物が主流で、認識票と呼ばれている金属製の楕円形のプレートです。
カードの身分証明書の他に氏名や認識番号、血液型等が打刻され、個人を識別するために用いられます。
なんでDOGTAGと言うの?
認識票自体は第一次世界大戦頃には使用されていました。
当時は丸いディスク型のもので、犬につける鑑札札に似ていたところから、DOGTAG(犬の札)という俗称が生まれました、基本的にDOGTAGと呼ぶのはアメリカだけですが、最近はどこでも通じる様です。
DOGTAGの真実
日本国内でDOGTAGは、アクセサリーとして扱われてきました。
ペンダントトップとして1枚だけ下げた人が多くみられ、歩く死体だとか揶揄されることがありました。
その理由はDOGTAGが2枚一組で用いられ、本人が戦死した場合等に同僚が1枚を持ち帰り、戦死した場所等を報告するという、映画等での描写が元になっていました。
この「~1枚を持ち帰り~」と言う規定はジュネーブ第1条約第16条の4に以下のように規定されています。
④ 紛争当事国は、死亡証明書又は正当に認証された死者名簿を作成し、且つ、捕虜情報局を通じて相互にこれを送付しなければならない。紛争当事国は、同様に、死者について発見された複式の識別票の一片又は、単式の識別票の場合には、識別票、遺書その他近親者にとって重要な書類、金銭及び一般に内在的価値又は感情的価値のあるすべての物品を取り集め、且つ、捕虜情報局を通じて相互にこれらを送付しなければならない。それらの物品は、所属不明の物品とともに封印して小包で送らなければならない。それらの小包には、死亡した所有者の識別に必要なすべての明細を記載した記述書及び小包の内容を完全に示す表を附さなければならない。
では、アメリカ軍での規定はどうなってるの?
前述のようにジュネーブ条約で規定されているためか、アメリカ軍では本人以外がDOGTAGに触れてはいけないことになっており、第一次世界大戦頃から形状、打刻の内容等の他は基本的に変更されておらず1枚を持ち帰るという規定はありません。
2枚有る理由は、胴体が上下で分かれてしまったとき等に、1枚を足の指等に掛けておき、識別に使用するためです。
また、収容した死体をボディバッグに収める際に1枚をジッパーに付ける場合があります。
本人以外が触れる場合は、大小を問わず部隊の指揮官がDOGTAGを回収せよと命じた場合だけで、1枚ではなく2枚とも回収され、DOGTAGの回収いかんに係わらずアフターアクションリポート(戦闘報告書)の作成が義務付けられています。
アメリカ軍は戦場に味方(死体であっても)を残さないというのが建て前ですから、どうしても回収が出来ない場合に、敵に利用されないようにしているのでしょうか。
DOGTAGのトリビア(トリビアは豆知識と訳すって知ってた?)
DOGTAGには長短のボールチェーンと共に着用されますが、長い方は365個、短い方は52個とされています、これは日にちの感覚を保つためにそうなっているのです、ただしこの事は軍の規定には書いてありません。
DOGTAGのチェーンとして使用されるようになった時期に大きな戦役があり、捕虜になったり、サバイバル状態に陥いる可能性が高くなったため、暗黙の了解的にそうなったようです、あわせてジュネーブ条約では、捕虜となった者から、軍籍や身分を証明する物を取り上げてはならない事とされていますが、守られた例がないので捕虜にならないほうが幸せですね・・・・?
死んでしまった場合は、前述のように規定されていますので、遵守してもらえる事を祈るだけですね。
一般に、ショップで販売されているボールチェーンは、携帯の利便を優先し「丁度良い」長さにカットされていますが、軍から支給される物は上記の数になっていますので意外と長いです。
以前は各軍で独自の打刻フォーマットがありましたが、現在は共通になっているようです。
DOGTAGの最近の打刻フォーマットについて
DOGTAGは1行に15文字で5行打刻が基本形です。
使用できる文字は A~Z & , . / ‘ ‐ e 1~9 です。
1行目は姓
2行目は名 洗礼名(キリスト教徒の場合)
3行目はソーシャルセキュリティアカウントナンバー
4行目は血液型 Rhの別(+=POS-=NEG)
5行目は宗教(15文字に収まるならフルスペル)
以上のようなフォーマットになっています。
以前は4行目に性別を表す男M女Fが、3行目の最終桁に揃えて打刻されていましたが変わっていますね。
宗教表記の参考
CATHOLIC カソリック
PROTESTANT プロテスタント
BAPTISI バプテスト
CHR-NO-DENOM キリスト教だが宗派無し
CHR-CH-CH-CHR 不明 キリスト教の1派らしい
JUDAIST ユダヤ教
BUDDHIST 仏教
MUSLIM イスラム教
NO-REL-PREF 無宗教または、作成調査時に申告無し。最近はユダヤ教の者が秘匿のために使用します。
後は不明です、御了承ください。
作成要領(打刻フォーマット)
ベトナム戦争以降のフォーマット
最新版 エンボスタイプ 湾岸戦争前後 打ち込みタイプ
1行目 名
2行目 姓 (洗礼名(キリスト教徒の場合))
3行目 ソーシャルセキュリティアカウントナンバー 8、9桁の数字(3桁-2桁-4桁等)
4行目 血液型 Rhの別(+=POS-=NEG)
5行目 宗教 15文字以内でフルスペル(宗教表記を参照)
朝鮮戦争~ベトナム戦争(打ち込みタイプ)
1行目 名
2行目 姓 (洗礼名(キリスト教徒の場合))
3行目 RA徴兵、R志願兵 ソーシャルセキュリティアカウントナンバー 8、9桁の数字
4行目 血液型 Rhの別(+=POS-=NEG) 性別 (男性M女性F 3行目の最終桁に合せる)
5行目 宗教(Cカソリック Pプロテスタント Jユダヤ B仏教 NP無宗教 NR新興宗教)
参考資料 ジュネーブ条約 第3条約 抜粋
第三編 捕虜たる身分
第一部 捕虜たる身分の開始
第十八条〔捕虜の財産〕
すべての個人用品(武器、馬、軍用装具及び軍用書類を除く。)及び金属かぶと、防毒面その他の身体の防護のために交付されている物品は、捕虜が引き続いて所持するものとする。捕虜の衣食のために用いられる物品も、正規の軍用装具に属するかどうかを問わず、捕虜が引き続いて所持するものとする。
② 捕虜は、常に身分証明書を携帯しなければならない。抑留国は、身分証明書を所持していない捕虜に対しては、これを与えなければならない。
③ 階級及び国籍を示す記章、勲章並びに主として個人的又は感情的価値のみを有する物品は、捕虜から取り上げてはならない。
④ 捕虜が所持する金銭は、将校の命令によってでなければ、且つ、金額及び所持者の詳細を特別の帳簿に記入し、並びに受領証発行人の氏名、階級及び部隊を読みやすく記載した詳細な受領証を発給した後でなければ、取り上げてはならない。抑留国の通貨で有する額又は捕虜の要請により抑留国の通貨に両替した額は、第六十四条に定めるところにより、捕虜の勘定に貸記しなければならない。
⑤ 抑留国は、安全を理由とする場合にのみ、捕虜から有価物を取り上げることができる。有価物を取り上げる場合には金銭を取り上げる場合について定める手続と同一の手続を適用しなければならない。
⑥ 前記の有価物は、捕虜から取り上げた金銭で抑留国の通貨でなく、且つ、所持者からその両替を要請されなかったものとともに、抑留国が保管し、及び捕虜たる身分の終了の際原状で捕虜に返還しなければならない。
追記です。
最近米軍でもドッグタグとは呼ばなくなりました。
IDタグと呼んでいるようです。
20121030追々記
ボールチェーンの365、52個はアメリカのウィキで否定されています。
9.11以前に陸軍を退役した友人の実体験を書いたんですが・・・。