「いがらしみきお」の系譜


個人的に最高のギャグマンガ家だと思っているのが、

「いがらしみきお」先生だ。

他に、田村信、吾妻ひでお、鴨川つばめ、古谷実、しりあがり寿、
小林よしのり、永野のりこ(敬称略)
この辺はみな個人的超リスペクトだが、その頂点がいがらし先生である。

自分は赤塚不二夫をリアタイで観てきていない為、
赤塚先生がどう凄いのかあまりピンと来なかったりする。
ただ、おそらくサンリオやポケモンの様な、
デフォルメキャラの原点がこの人だろうというのは気づいた。

赤塚キャラのぶっとく綺麗な輪郭はサンリオのスタイルの原型だろう。
時系列のタイミングが体感的に符合する。
ピカチュウの杉森氏は明らかに名作ゲームマッピー絵師の派生であり、
そのマッピーの立ち姿は明らかにバカボンパパのシルエットだ。
腹をつきだし、足はハの字で立っている。
これまぁ知ってる方は比べてみてください、ほぼ同じなので。

※ちなみに掲示板でこの説を書いたらアホに袋叩きにあったが、
権威主義の知ったかぶり共、ちゃんと自分の目で確認してから叩けと。
一目瞭然だっての。

で、赤塚先生の独自スタイルの模索は凄いのだろうが、
多分この時点でのギャグマンガはまだ何を面白いとするかすら、
ふわふわとして判明していなかった気がする。
例えば過去の漫才を観ても、ガチョーンって言われてもピンとこないと。
ダウンタウンがバカにしていたタモリを認めたように、
感性は先鋭化したり温故知新で回帰したりするので安定しないもんであり、
ひたすら繰り返し上書きされるだろう。

赤塚の時点では、まだ多くのエンタメ自体が育ってなかった。
がきデカは食い物ばっかだし、永井豪は女体だらけ、
そんな時代があったと。

この転換期に現れたのが色々ぶっこんだ「マカロニほうれん荘」だろうし、
吾妻ひでおという大作家も永井豪の派生でくすぶってた気がする。
自分がギャグマンガを最初に面白いと感じたのは「がきデカ」ではなく、
「マカロニほうれん荘」だったような?

まぁ頭のいかれた両親の下で連載を追えるほど読んだわけじゃなく、
自分が漫画を読む機会なんて年に一回親戚の家で読めたくらいだが、
その少ない記憶からでしか語れないのであしからず。

当時は年に二週間くらいの期間、自分は漫画を読む機会があったワケだ。
そこで面白く感じたのが
「マカロニほうれん荘」と「まことちゃん」だった。

この作家二人がHSPの典型的な感性を見せていたのは人物観察だろう。
マカロニのトシちゃんもツインピークス同様、宇宙人視点であり、
楳図先生はチキンジョージの家畜視点で人間を観ている。
人間の行動を俯瞰して観察していると。

この辺から既にリビドーだけのギャグは成立しなくなっていった気がする。
面白味のニュアンスが変化した。

いがらしみきおという作家を知ったのはそのさらに結構後だ。
先に「芳井一味」という4コマ漫画家を追ってる内に、
その源流がいがらしみきおだと知った事になる。

当時のいがらしみきおは独特の下ネタギャグを多発していた。
あの時点では「三こすり半劇場」とか谷岡ヤスジの系譜だろう。

ただ、いがらし作品は下ネタなのに異様に面白いのだ。
汚い自分の下ネタ自体を思いっきりバカにしている様に観える。
あれはどうみてもSEXをバカにしてるし、発情した人間もバカにしてる。
コマ運びがしつこい、「しょうもないシーンを繰り返し押し付ける」のだ。
で、しつこすぎて読者がアホらしくなったタイミングで、

「バガヤロ様ァ!!」


と怒り狂った突っ込みが入るのがこの人の基本スタイルだった。
これをおもくそパクったのが「あずまきよひこ」だろうが、
この人はコマ運びのテンポはともかく面白味は生み出せていないようだ。

いがらし作品は同じコマを続けることが多いのだが、
赤塚不二夫の様な手抜きの実験ではなく、映画的文法だろう。
この人が漫画に「間」の面白味を持ち込んだ最初の人だと思ってる。
※これ異論がある方は作品名を教えていただけたら助かります。

当時、いがらし先生は特別編集されて4コマ漫画家としては、
植田まさしと並ぶ大御所的な扱いだった。
下ネタなのに他と比べて際立ったセンスがあった筈である。
まぁこの人は別に下ネタがやりたい訳でもなく、
エンタメを追求した求道者だと気づくのは早かった。
何しろ下品だけどエロくもなんともないからだ。

注目され始めた途端、先生は長期休載に入る。
確か「グール」という謎の作品を構想中だったはずで、
どんな作品なのかと待ちわびていたのだが、現れたのはなんと、

「ぼのぼの」

だった。

これが動物四コマブームのパイオニアであり、
この派生はあずまきよひこや須藤真澄やらに影響を与えた気がするし、
4コマのジャンル多様化に大きく影響を与えた筈だ。
はっきり言えば「キーパーソン」であり分岐点とも言えるだろう。
(ヤバいんすよ)

その後、今度は幼児漫画「三歳児くん」を発表する。
しわしわの輪郭で描かれた幼児の不可解な挙動をギャグにした。
これお気づきの様に、

「クレヨンしんちゃん」


の原型でしょうね。
タイミング的にもそうだ。

これもし仮に自分だったら元になった作家名を挙げますけどねぇ?

こうして、いがらし先生はいつだって漫画文化に貢献しすぎているのだが、
相変わらず縁の下の力持ちの様に目立たない。
トータルリソースを増やす人は本人自身の取り分が少ないのが現実だろう。
田村信というギャグ漫画家も本人よりも派生の浜岡賢二が有名だ。

なんか凄い人ほど浮かばれないが、それが運命か。

だからこそ、そういう偉大な作家を自分はリスペクトしている。
はっきり言って亜流はタダの労力であり誰でもできると思ってる。

そこには「利他と利己のライン」が明確にあるのだ。


おしまい。


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