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健康観察 #29

  つい先日のニュースで、熱中症で亡くなった中学生の事が報道されていました。運動の部活の練習中に嘔吐した生徒さんを救えなかった話でした。
 元教師をしていた自分にとってはとてもつらい話でした。教師がその場にいながら、学校の日頃の手立てが無かったのか?そう考えると親御さんのお気持ちのみで無く、当の生徒さんの無念は計り知れないものだったと思います。
 いつの時代も、児童・生徒の健康状態は「とても大切な事案」です。そこで十数年前の小学校の「朝の健康観察」のことを書いた「校長室風景」の記載がありますので、ここで紹介したいと思います。当時学校では朝の健康観で学級の子ども達の健康状態、そして出席状況を確認していましたが、その頃からだったと思いますが、「帰りの健康観察」も行い始めていました。(帰りの健康観察は、帰りの会の際に具合の悪い子がいないか、休み時間等にけがや具合の悪かった子がその後回復したか、そして状態の悪いお子さんについては、帰る前に保護者に一報を入れるための場としていました。)
(平成22年2月1日のS小学校の学校だよりを参照)
 『今回は、健康観察のことで。
 子ども達は、毎朝、各学級で8時15分頃(始業時間)、担任の先生が健康状態の観察(学校では、「健康観察」と言っています。)をしています。
 先生が「○○君」と子どもの名前を呼ぶと、その呼ばれた子は「はい、元気です。」(健康観察簿に○印をつける)とか「風邪をひいています。」(観察簿に「か」印をつける)「おなかが痛いです。」(「ふ」をつける)などと答えます。
 それを、学級の児童一人ひとりつけた一覧表が「健康観察簿」です。健康観察を終えると、その健康観察簿は係の子ども達で保健室に届けられ、保健室の○○先生が集計してくれます。
 そして、毎朝8時半過ぎに、養護教諭の〇〇先生は、全体の健康観察簿を集計して校長室や職員室に報告してくれます。そこで、私は、その報告を聞きながらその日の学校全体の子ども達の様子を知るわけです。
 欠席の様子はどうかな?先週休みがちだったあの子は、今日はどうしているのかな?・・・・等と、私は○○先生と話しながら、学級毎の遅刻や欠席の様子、それらの傾向を見せてもらっています。そして、気になるケースについては、なるべく早く手だてを打つようにしています。(特にインフルエンザの感染状況をもとに学級閉鎖の措置もその場で判断します。)場合によっては、その子の教室まで出向いて、その子の顔色を見てきたりします。) 
 元気に学校に来る子はほとんどですが、中には、いろんな理由で学校に足を向けにくくなっている子もいます。
 ・ 家でうちの人からしかられて
 ・ 友達とけんかしてしまって
 ・ 宿題が全部できなくて(〇〇科の勉強が嫌いなので)
 中には、
 ・ 家の人が今日は帰るのが遅くなると言われて、朝から不安になって
など、子どもによって様々です。
 そこで担任の先生は、この健康観察の時に、子どもの声や顔の表情、そして様子をよく見ながら声をかけたり、時には相談にのったりして解決していくわけです。
 私は、このように気になるケースについては、子どもの声に耳を傾けその日中に解決することがベストと思います。しかし場合によっては、他の人(友達、時には保護者等)からも状況を十分に確かめ、学年の他の先生とチームを組んで対応するなど、時間をかけて取り組むこともあると考えます。
 このように。朝の「健康観察」から分かることはたくさんあります。それをきっかけに子ども達の心と体に向き合い、どの子も元気に登校できるようにしたいと思います。』

 今回の中学校の事案については、中学校自身の文化の違い、部活の特殊性、先生方の過剰勤務等の課題もありますが、その前に担任としての立場、部活の担当教師の立場があるはずなのにと、私は悔しい思いで一杯です。
 ニュースで聞く中学生のそのお子さんが気分を悪くして嘔吐したその時に、その場にいた教師のかける言葉は、
 「じっとしておけ。」「汚れても気にするな。」「きついけど我慢しておけ、先生が担いでいくから……。」そして落ち着かせるための言葉「大丈夫だよ。」
で、それ以外の言葉はありません。(令和5年10月15日)

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