「常識の力」
電車を待っていた。扉が開くと我先にと乗客が降りていく。
乗客が降り終わった後、僕は負けじと電車に乗り込んでいく。
次々と確保されていく座席。万年睡眠不足の僕としては目的地まで何とか仮眠を取りたいものだ。
そうして、一つの席の見つけた。ぼくは我先にと座り込んだ。
ほっとため息をついた。これで少しは仮眠を取れる。
しかし、やたらと視線を感じる。一体何なんだと座席を確認した。
優先座席だった。決して健常者も座ってはいけないわけではないが、道徳的な心が動かされる。
他の席にずれようとしましたが、車内は人でいっぱい。空席なんて見つかりようがない。
周囲から感じる視線。思考の末、とある行動を取った。
「ゲホッ! ゲホッ!」
口を押さえて咳をしたのだ。このご時世、これをされて正気でいられる奴は少なくない。
僕は嫌がられつつも、安全圏の維持に成功した。我ながら性格が良くないと思った。そんな現実から目を背けるように仮眠に入った。