稽留流産手術の記録



妊娠8週になる、2回目の健診だった。

家から近く評価の高いレディースクリニック。
口コミでは院長先生の評判が良かったけど、
担当するのは今回も違う先生。

デスクに飲みかけのペットボトルが2本、
寝起きのような風貌と充血した目に少しだけ違和感を感じていた。


早速エコーをしてもらう。

画面にうつる胎嚢は前回よりも大きくなっているものの、中に何も見えなかった。

妊娠が発覚してからネット検索ばかりして少し知識をつけていた私は不安を感じた。


先生の「あれ〜、、?見えないなあ、、」
の発言に、ダメかも…と察した。

少しして「ん?これかな?」と、
胎嚢の中に白くうつる物が見えた。


画面を拡大し、無言で心拍の確認をしていた。
ドクッドクッと聞こえる音があり、大丈夫なのかも、、?と思っていた。


診察台から降り、説明を受ける。

「赤ちゃんが小さい。心拍らしきものはあった。
次の診察で育たなければ今回は難しい」


…涙をこらえながら聞くのが精いっぱいだった。



この日は、うまくいけば母子手帳をもらいにいけるかも、
両親の誕生日が近いのでエコー写真をサプライズで送ろうと楽しみに考えていた。
不安はあったけど、当たり前に順調なものだと思っていた。



病院を出てから涙があふれた。





出産は健診とは別の大きなクリニックを考えていたので、
3日後に分娩予約に行く予定だった。
予約を取り消そうとも思ったけど、
今日の先生は不信感があった。
もう一度違うところでちゃんと見てもらったら違うかもしれないと思い、
分娩予定だったクリニックへ予定通りに行った。




診察内容は変わらなかった。

むしろ、「心拍はない、ここから育つ可能性はほぼない」と言われた。

早々に流産手術の説明をされ、血液検査をするよう言われるが受け入れられず、
その日は一旦帰宅した。


涙が止まらず、その日から数日は夫の声かけにも反応ができなかった。



つわりが少し軽くなっているのと、
体温が下がっているのを感じて本当にだめだったんだと思った。



翌週、覚悟を決めて手術のための予約、血液検査を受けに来院した。


手術までの期間、毎晩涙が出ていた。


3つも入れていた妊娠アプリを削除することはできず、ホーム画面の1番遠くにまとめて移動した。



流産手術日

バスを乗り継ぎ、予約時間の少し前にクリニックに到着した。

他に2、3人、おなかの大きな妊婦さんがいた。
これから入院なのであろう、旦那さん連れ。
キャリーバッグの大荷物で受付を待っていた。

受付はスムーズで、書類を提出するとトイレを済ますように言われた。

その後すぐ診察室の1番奥の部屋へ案内される。
ロッカーに貴重品を預け、カーテン越しに4つ程並んだ小さなベッドに座って待機した。

看護師さんに声をかけられ、
前回と同じ診察室に呼ばれ、診察台に上がる。

前回と同じ先生に挨拶をされる。

前回と違って目隠しのカーテンはなく、
前回と違って背もたれが大きく倒された。

最後のエコーで確認するも、
予定通り流産手術を行うと言われる。



ここのクリニックでは前処置はなく、
心の準備をするまもなく、
左腕に麻酔の準備をし、すぐに麻酔が打たれた。

血を抜く時よりちょっと痛い。
頭の中が変な感じになり、数秒で意識がなくなる。


その後診察台で先生に名前を呼ばれ、
終わりましたよ、と言われたのは覚えている。

気持ち悪く、意識が朦朧としていつのまにかベッドに移動していた。

嘔吐、過呼吸気味になっていた。

看護師さんにやさしく呼吸を整えるように声かけされていた。

なにが痛いのかもわからないが「痛い、、、」と口にすると、
座薬入れますね。と言われた記憶がある。
この辺りの記憶は途切れ途切れで曖昧だった。



少しして意識もはっきりとし、呼吸も整い、眠りについた。


人の出入りの多いドアが目の前にあるベッドだったため、
人の話し声がたくさん聞こえた。
途中赤ちゃんの泣き声も聞こえた。

下半身はいつのまにか穿かされていたパンツのみで寒さもあり、
数分の浅い眠りだった。
なにか夢を見た気がする。

嘔吐したからか喉の奥が少し痛かった。




来院から2時間後くらい
看護師さんに声をかけられ、処方される薬の説明を受ける。
メガネもなく見えないし、よくわからなかった。

恐らく止血の、膣内に入っていた長ーいガーゼを抜いてもらう。

「出血多くないですね。お手洗いいけそうですか、終わったらまた呼んでくださいね」
と優しく言われた。

ふらふらはしたがだいぶ回復があったので言われるがままトイレへ向かい、
その後すぐ帰宅の準備をした。



受付に声をかけるように言われ、
向かう途中の待合室にはポツポツと人がいて、
入り口には産まれたばかりだろう小さな赤ちゃんをだっこしたママがいた。

お会計は36,000円ほど。



帰りは徒歩でバス停まで行き、
途中コンビニでカフェラテも購入する元気もあった。
いい天気で暑いくらいだった。


自宅に帰り、
落ち着いて考えると術中の痛みは恐らくなかったんだと思う。
麻酔の影響での嘔吐と、呼吸が乱れたのだと思う。

その時のパニックの印象が強く、いまだに恐怖が大きい。


その後は処方された薬の影響でお腹を下したものの、すぐに良くなり出血も少なかった。


次は2週間後の健診。


人生初妊娠、人生初流産、人生初全身麻酔、人生初手術は私にとって壮絶なものだった。

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