
スーパーマーケットのDXではなく、ITからスーパーに向かっているように見えるトライアル・ホールディングス
今回取り上げるのは、トライアルホールディングス 141A
2023年4月に上場し、下図のように24期連続増収という小売りでも注目されている企業です。
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事業内容:
生鮮食材(魚・肉・野菜・総菜)と衣料を扱うディスカウントストア。
取り上げようと思ったのは大きく3つ理由があります。スーパーマーケットと比べて以下の3つはどれもなかなかまねできない部分でした。
店舗数拡大のボトルネック解消(総菜値引きを自動化)
スーパーマーケット店舗で品ぞろえする商品には2種類あります。
仕入先から入荷した商品(生鮮食材以外が多い)
仕入先から入荷した原材料を店内加工して作成した商品(主に生鮮食材)
このうち、スーパーマーケットでは2.を店舗内スタッフが行うことで商品の鮮度を保つことができています。例えば、お昼や夕方の惣菜弁当は鮮度を強調するため、”午後3時製造です!”とシールが貼られているのを見たことはないでしょうか?
この2.はスーパーマーケットがドラッグストアと差別化できる要素である一方で、売上拡大のカギとなる店舗数増加のボトルネックとなります。
鮮度が下がった商品は値引きシールを貼り値下げして売り切るようにしています。値引きシールにはいくつかパターンがあり、2割引き、3割引き、半額などがあるのを見たことがあるでしょう。この使い分けは、ベテランの担当者が自身の経験に基づき、その日の天候やチラシの特集内容からこれ以降の客足を読み、タイミングを見て使い分けている場合が多いです。
ベテラン担当者でなければ、タイミングを見誤り、まだ購入していただける商品なのに、過度な値引きをしてしまって利益率が下がってしまいます。店舗数を増やすにしたがって、ベテラン担当者の需要も高まりますが、労働人口が減っていく局面で、需要を満たせるほどの人材はいません。
この問題に対して、トライアルは総菜の自動値引きに取り組んでいます。
これによりベテラン人材が採用できなくとも店舗数拡大を実現できるというわけです。
”トライアルでしか買えないプライベート商品を、これまで以上に多くのお客さまに手に取っていただける場所を増やしたいとの思いで、出店に取り組んでいます。また、人口減少が進む日本において、これからもお客さまが“豊かな買い物”ができるよう、技術を使って効率化した「スマートストア」が必要だと考えています。”
・・・
”バーコード情報にある商品ごとの賞味期限から計算し、時間に応じて値下げを実施します。値下げは商品の棚札と大きなモニターで目立つようにお知らせ。商品に貼られているシールの表示価格はそのままですが、レジでは自動で値下げされる仕組みです。”
https://www.trial-net.co.jp/mag/detail/15339/
商品の利益率向上(産地・メーカーと共同で商品開発を実施)
スーパーマーケットで品ぞろえする商品には2つあると書きましたが、1.の方は主に食品メーカーが製造した商品で、この商品の利益について考えてみます。
スーパーマーケットなど小売店ではメーカーから仕入れた商品原価に対して値入を行い(利益をのせ)店頭での販売価格を決定します。ドラッグストアでもスーパーマーケットでも同じものが購入できるにもかかわらず、各社異なる価格設定を行っているのを不満に感じることは無いでしょうか?
商品自体が同じであれば競合他社との差別化には価格で対抗するしかありません。一方、トライアルは視点を変えて原料から自社で調達しています。SPA型ですね。
名水百選に選ばれた地に直営の採水工場を設置し、自社開発商品「阿蘇クジュウの天然水」を、水のくみ上げからボトル詰めまで行って販売しています。
また、生鮮食材についても取り組んでいるところがすごいところです。野菜などの生鮮食材もトライアルファームと呼ばれる取組で生産段階から一緒に作っているそうです。
IT人材の確保(データ分析コンペでエンジニアの関心を集める)
トライアルの店舗に入ってまず驚くのが、スキップカートです。買い物カートにタブレットとスキャナーが備え付けられており、入店後、プリペイドカードにお金をチャージして使います。お客様は商品をかごに入れる段階で自らスキャンし、最後にレジではゲートを通るだけで決済が完了します。
このスキップカートのタブレットには、スキャンした商品に関連するクーポンが表示されるなど、買い物中のお客様に直接1to1の販促を行える部分が他のスーパーマーケットやドラッグストアと異なる部分です。
そのため、食品メーカーも1to1で販促を行える部分に強く関心がある様子で、トライアルが主催するデータサイエンティスト向け勉強会に毎月1週間参加する活動が行われているようです。
このように、トライアルはスキップカートなどで収集したデータの活用にも力を入れており、データサイエンティストも必要とされています。過去には、オープンイノベーションの考え方でデータを公開し、コンペ開催を通じて優秀なデータサイエンティストを集める目的でイベントを開催したそうです。
”「トライアルさんのスマートショッピングカートは、利用客がカートでスキャンした商品に対して、リアルタイムで商品をレコメンドする画期的なレジカートです。もともと、このスマートショッピングカートの基盤になっている、Microsoft Azureを用いてレコメンドモデル作ろうと話を進めていました。そのとき、『Kaggle』や『SIGNATE』のようなコンペティション形式でデータサイエンティストを一気に集めて精度の高いモデルを作ってもらったほうがいいのでは、となったのが今回のコンペ開催の発端です。”
まとめ
以上のように、一般的なスーパーマーケットのビジネスモデルをITの力でアップデートしようと挑戦しているのがトライアルホールディングスでした。今後の活躍に期待が集まります!
代表取締役会長の永田久男氏が執筆された著書では、今後どのような流通革命を目指されているのかを知ることができます。
トライアルホールディングスの子会社であるRetail AIで代表取締役を務める永田洋幸氏の著書もおすすめです。
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