その言動、もしかしたら「リモハラ」かも?コロナ禍で急増した「リモートハラスメント」を解説!対処法も!
コロナの影響で急激に増加した「リモハラ」
こんにちは!とある大学の労働法ゼミです。
皆さんは、「リモハラ」という言葉を聞いたことがありますか?
昨今、新型コロナウイルスの影響や、働き方改革の推進により、リモートワークの導入が進んでいます。在宅勤務は通勤する必要がなく、満員電車を避けられたり、自由に使える時間が増えたりすることから、歓迎している社員も多いようです。
しかし、リモートワークという新しい労働環境に起因するハラスメントの被害が増えてきているという一面もあります。
それが「リモハラ」、リモートハラスメントと呼ばれるものです。主に在宅勤務などオンラインを介した就業環境で行われるハラスメントのことを指します。
ハラスメントとして代表的なパワハラ、セクハラが「行為に焦点を当てた呼称」であるのに対し、リモハラは「発生する状況」に焦点を当てたネーミングとなっています。つまり、リモート版のパワハラ・セクハラということができるでしょう。
リモハラが起こってしまう原因は主に2つ
なぜ、リモートハラスメントは発生してしまうのでしょうか。原因として、以下の二点が考えられます。
一つ目は、職場と自宅の線引きが曖昧になってしまうからです。ウェブカメラを通じた会議ではお互いのプライベートが見えることもあり、服装等に関してもオフィスとは異なる部分が出てしまう可能性があります。さらに、オンライン環境は上司や同僚がいるオフィスとは異なる閉鎖的な空間で、少人数でやり取りする機会が多いです。オフィスではたくさんの社員の目があるものの、リモートワークでは1on1や少人数でのやりとりが多くなり、上司が以前より親密になったと誤解してしまう、または関係性を見誤ってしまうケースが増え、ハラスメントが発生しやすくなるようです。
二つ目は、リモートワークではオンライン上のコミュニケーションが中心であり、表情や視線、動作といった非言語コミュニケーションが乏しく、意思の疎通が困難になってしまうからです。例えば、上司が軽く注意したつもりでも、部下には強い叱責と受け取られてしまったり、自分のちょっとした冗談が相手を深く傷付けていても、それに気付けなかったり、というようなことが起こりやすくなります。また、部下の仕事の進捗状況を把握しにくいことから、上司が不安になり、必要以上の連絡を求めてしまうことで部下に強いストレスが加わってしまうこともあるようです
これらの原因は、リモートワーク特有の働き方や事情が関わっているという共通点があります。なので、企業や個人の今までのパワハラ・セクハラ対策とは別に、リモハラへの対策を講じる必要があります。
心当たりがあったら要注意!リモハラの事例
では、具体的にどのようなリモハラがあるのでしょうか。前述した通り、リモハラは大きくパワハラ・セクハラに分類することができます。まずは、以下に代表的なリモートセクハラの事例を挙げてみます。
ビデオ会議で全身を映すよう要求したり、体型や服装・メイクなどについて言及したりする
例:「○○さんっぽくない部屋だね。」部屋の様子を映すように要求する
例:「どんな部屋に住んでるのか見せて。」私生活について聞き出そうとする
例:「恋人と同棲してるの?」執拗に1対1でのオンライン飲み会に誘う
例:この会議が終わったら、二人で打ち合わせをしよう。」と誘ったのち、二人の場では仕事とは関係ない話を持ち掛ける。
リモートワークでウェブ会議を行う際、画面に部屋の様子が映り込むことがあります。このとき、相手の服装や部屋の様子について指摘したり、同居人の有無などといったプライベートに関する情報を聞き出そうとしたりすることは、典型的なリモハラと言えます。
続いて、以下に代表的なリモートパワハラの事例を挙げてみます。
理不尽にウェブカメラやマイクを常時オンを強要する
例:「新入社員は全員カメラをオンで参加しなさい。」連絡が少し遅れただけで勤務怠慢だと指摘する
例:「進捗の報告が少ない。やる気がないのか?」という旨のチャットや電話業務の進捗を確認する回数が極端に多い
緊急性がないのに業務時間外に電話やチャット、ウェブ会議に出るように要求する。
電話やチャットをしたり、ウェブ会議に出るように要求したりすることは、業務上の指示に当たります。そのため、対応させた時間は労働時間とみなされます。緊急性がないにもかかわらず、終業後や休日に対応を強制すれば、パワハラとなり得ます。
リモハラが罪に問われるかも!?過去のハラスメント事件
ここで、リモート環境におけるハラスメントとして違法性が認められた裁判例を紹介します。裁判となった事件の概要は以下の通りです。
裁判では、XとYによる書き込みが違法行為であるかどうかが争点の一つとして挙げられました。結果として、XとYによる書き込みはAに対して直接送信されたものではなかった上、XとY以外の人物が両者間のチャットを閲覧することは想定されていなかったのですが、特にチャットの閲覧範囲に制限は掛かっておらず、Aが閲覧する可能性はあったために、チャットへの書き込みによって個人の人格を傷つけることがないよう注意すべき義務がXとYにはあると裁判所は判断しました。XとYによる書き込みは違法行為であり、二人は民法709条に基づく損害賠償義務を負うとされました。
簡単にまとめると、対象者(本件ではA)が閲覧できる場所(本件では社内のチャットツール)に書き込みをし、その書き込みを対象者が閲覧して精神的な苦痛を感じた場合、違法行為と認められるということです。
リモートワークツールが急激に普及してきた昨今、まだリモハラに対する直接的な裁判例は無いものの、このような裁判例がある以上、リモハラは違法行為として裁かれる可能性が非常に高いです。
リモハラを、しない・されないために今すぐできる対処法
ハラスメントは加害者側が無意識に起こしているケースが非常に多いです。いつの間にか相手に対して苦痛を与え、それが体調不良や不安定な精神状態につながり、加害者側にも被害者側にも何もメリットのない結果を招いてしまいます。そんなリモハラを未然に防ぐために、今すぐできる対処法を紹介します。
【上司側】
リモートワークツールの導入の際に、ルールを設ける
→会社の就業規則を変更しないままリモートワークツールを導入してしまうと、思わぬトラブルが発生する可能性があります。厚生労働省がりもーろワークに関するモデル就業規則の作成手引きを公開しているので、参考にしてみてください。
「テレワークモデル就業規則~作成の手引き~」の資料によると、リモートワークを導入する場合に定める必要のある就業規則は次の3項目です。
リモートワークを命じることに関する規定
リモートワークの労働時間を設ける場合、その労働時間に関する規定(主に通勤時間、出勤時刻、退勤時刻など)
通信費などの従業員の負担に関する規定
就業規則を新たに設ける際、もしくは就業規則に変更を加える際は、労働契約法第10条より、従業員代表の意見書を添付し、所轄労働基準監督署に届け出をするとともに、従業員に周知する必要があります。
進捗確認の時間を予め共有する
→急な進捗の確認は、確認される方に余計なストレスがかかる可能性があります。何時に進捗確認をする、何時間ごとに進捗確認する等を予め決め、共有することでストレスを防止することができます。仕事に関係のない連絡を極力控える
→少なくともリモートワークツールを通じて、仕事に直接関係のない連絡をすることは控えましょう。
【部下側】
背景をぼかす・隠す
→望まれない部屋に対する発言を防止するために有効です。ZoomやTeams等のビデオ会議ツールには背景をぼかす機能があるので、活用しましょう。カメラツールを用いて外見を補正する
→望まれない外見に対する発言を防止するために有効です。改善が見込まれない場合、窓口等へ相談しに行く
→相談は会社の人事や各都道府県の労働局等でできます。相談の際に証拠を提出するために、チャットを日付とともにスクリーンショットで保存する、ビデオ会議の様子を録画するなどしておくと、スムーズに相談できます。
リモートワークが普及し、業務上のコミュニケーションのためにSlack等のリモートワークツールを導入する企業が急激に増えました。先ほど紹介したケースに類似することも、あなたの周りで起きているかもしれません。
大事なのは、①職場と自宅の線引きを曖昧にせず、仕事とプライベートとを各々がしっかりと区別し、不適切な発言を、たとえチャットなどの媒体においてもしないことと、②オンライン環境でのコミュニケーションは、対面のコミュニケーションよりも意思疎通が困難であることを常に念頭におき、相手が不快な思いをさせないよう注意することです。これらを徹底すれば、無意識のうちに自分がリモハラをしてしまうリスクを抑えることができます。
リモートでのコミュニケーションと対面でのコミュニケーションとでは、皆さんが思っているより圧倒的に非言語コミュニケーションが少ないです。そのため、お互いがお互いに感じている親密度に不一致が起きやすいです。リモートワークツールを通じて行うコミュニケーションは、仕事に関係する事柄のみにすることが、リモハラを防ぐ一番の対策になります。リモート飲み会等のプライベートな交流は、業務時間外にお互いの同意のもとで行いましょう。
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