知らず知らずのうちに「セクハラ」してませんか?加害者にならないために知っておくべきコト、お教えします!

◎はじめに

皆さんはセクハラ被害に遭ったことはありますか?
今までセクハラとは縁のなかった方もこれから先、被害者になる可能性はもちろん、加害者になってしまう可能性もあります。
被害に対して適切に対応するためにも、加害者にならないためにも、知識を身につけておくことが大切です。

◎セクハラとは何か

男女雇用機会均等法では、「職場における性的な言動」とされています。

そして、男女雇用機会均等法第11条においては、
「当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。」とされており、使用者側も適切な対応を取ることが求められています

セクハラは以下の4つに分類することができます。
1.対価型セクハラ
2.環境型セクハラ
3.制裁型セクハラ
4.妄想型セクハラ

(https://nichirou.com/5863)

〇対価型セクハラとその事例

▪️対価型セクハラとは
 労働者の意に反する性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、その労働者が解雇降格減給される、労働契約の更新が拒否される、昇進・昇格の対象から除外される、客観的に見て不利益な配置転換をされるなどの不利益を受けることをいいます。
(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/foundation/pawahara-six-types/type8)

▪️事例
<概要>
中古車販売会社に勤務していた女性社員は、同社の社長よりセクハラを受けていた。同社の社長は、女性社員に対して勤務時間中に事務所に続く私室で性行為を迫る、性的言動を繰り返すなどを行っていた。
また社長は、女性社員がセクハラを拒否した際に「(セクハラ)拒否するのは仕事を続ける気がないからだ」などの発言を行い、女性社員がセクハラを拒否しづらい状況にし、退職に追い込んだ。
<判決内容>
社長が行なっていたセクハラが日頃より行われていたことや、セクハラ加害者が社長という立場であり、被害者にとってセクハラ行為を拒否しづらいものであることから、社長には70万円の支払いが命じられた。
また、セクハラ被害者である女性社員は、社長からのセクハラを周囲の人に相談していたのにも関わらず会社としてセクハラの防止措置を怠っていたことから、会社側にも70万円の支払いが命じられた。
(https://yourbengo.jp/roudou/24/)

〇環境型セクハラとその事例

▪️環境型セクハラとは
 「労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」をいいます。
 例えば、 体を触られたことに苦痛を感じて就業意欲が低下している、ヌードポスターが掲示されているため業務に専念できない、などといったケースが挙げられます。
 拒否することで解雇や減給などの不利益を受けるわけではありませんが、精神的あるいは肉体的にもダメージを受け、就業に支障をきたす恐れがあります。
(https://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/dl/120120_05.pdf)

▪️事例
<概要>
加害者Xは被害者Aに対し、自らの不貞相手と称する女性の話や、自らの性器や性行為の話をし、また特定の性的なワードを言わせようとした。
加害者Yは被害者Aに対し、相手が結婚していないことや年齢が30歳になったことについて下品な発言をしたほか、夜の仕事を勧めるなどした。
これにより加害者らは、出勤停止の懲戒処分を受け、降格された。
<判決内容>
加害者らは、出勤停止処分は懲戒事由の事実を欠いており懲戒権を濫用したものとして無効であり、また降格も無効であるなどと主張した。
しかし最高裁はこれを認めず、出勤停止及び降格を有効であるとした。                      (https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/883/084883_hanrei.pdf)

〇制裁型セクハラとその事例

▪️制裁型セクハラとは
 セクハラの加害者が持つ性差別的な価値観をはじめとするものです。特に、「女性はこうあるべきだ」という性差別的な価値観に基づき、従業員である女性の昇進や活躍を否定・抑圧してしまうことが当てはまります。
 例えば、「女性はサポート役に徹すべきで積極的に提案すべきではない」、「女性の昇進を目指すべきではない」などという時代遅れな思想に基づき、そのレールから外れた社員を指導するという名目で抑圧するという事例があります。
 また、女性だけでなく男性に対してもセクハラとなり得ることに注意が必要です。「男のくせにだらしない」や「家族を養うのは男の役目だ」などといった言動も制裁型セクハラの背景となってしまう場合があります。
 この場合、「身体に触れる」「性的関係を強要する」といった直接的な行為の有無にかかわらず、加害者の言動により被害者は精神的苦痛に悩み、就業意欲は削がれてしまいます。
(https://jinjibu.jp/article/detl/bizguide/906/)

▪️事例
<概要>
上司である被告Aは、部下である原告Bについて、異性関係が派手である等の噂を流したり、客先と取引がなくなったのは原告Bと担当者の男女関係のもつれが原因であるとの虚偽の報告を専務に行うなどした。
専務は原告Bに退職を迫り、原告Bが同意し退職。被告Aは出勤停止の処分となった。
<判決内容>
被告Aの行為は、原告Bの働く女性としての評価を低下させ、最終的には原告を退職に至らせたもので、一連の行為は原告Bの意思に反し、人格権を侵害し職場環境を悪化させた。
被告Aの行為は会社の業務の執行につき行われたもので、被告会社は使用者としての責任を負う。慰謝料 150 万円と弁護士費用 15 万円を連帯して支払うよう命じた。
(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000181888.pdf)
さらに詳しくは→(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/04/s0408-4i.html)

〇妄想型セクハラとその事例

▪️妄想型セクハラとは
別名:「思い込み型セクハラ」、「疑似恋愛型セクハラ」
 「主にLINEなどのSNSで連絡を取っているうちに関係性が深まったと思い込みセクハラ発言に至ること」をいいます。
 例として、「(休日に)今何してるの?」、「飲みに行こう」などのメールやLINEをしつこく送られてくるといったことが挙げられます。
 妄想型セクハラの場合は、「自分のことが好きに違いない」と勘違いしてセクハラを継続して行うため、セクハラ加害者にはセクハラの自覚が全くなく、セクハラ被害者の許否や周囲の仲裁が全く聞こえていないことがあります。
(https://yourbengo.jp/roudou/24/)
(https://www.weblio.jp/content/妄想型セクハラ)

▪️事例
Aさんは先輩であるBさんからしつこくLINEで飲みに誘われていて、何度も断っても一方的にメッセージが来続けている。最初はコミュニケーションの一環だと思っていたが、あまりにしつこく、強く断りにくい相手であることから不快感を感じるようになった。

◎なぜセクハラが難しい問題とされているのか

 セクハラは検挙数はハラスメントの中で1番多いのですが、セクハラの定義や被害の証明が難しいとされています。セクハラの難点を3つ説明します。

〇その1:セクハラは判断基準が難しい

 セクハラはこれを言ったらアウトというような明確な基準がなく、「相手が不快になったらセクハラ」というように曖昧であることが難点です。
 いわゆる下ネタや性的な発言はもちろん、デートに誘う、容姿を褒めるなど一見セクハラに当たらないようなことでも聞き手からすると不快であることがあります。
 さらにセクハラに当たるか当たらないかは発言の内容だけでなく、発言者の容姿、状況、当事者の関係性または年齢によっても左右されます。
 セクハラと年齢がどのように関係しているかを調べるために、学生38人にアンケートをとったところ以下の結果となりました。

質問内容【次のうち、セクハラに当たるのは?男性が女性に「君可愛い顔してるね」と言う】
選択肢は以下の結果の通りです。
条件・・・複数回答可かつ匿名

結果  男性が20代ならセクハラにあたる 7人
    男性が30代ならセクハラにあたる 20人
    男性が40代ならセクハラにあたる 29人
    どれもセクハラに当たらない   2人
となりました。

 このアンケートから20代と比べて30代以降は高い割合でセクハラに当たると予想されます。
 さらにセクハラに当たらないとしたのが2人だけという結果から、女性の容姿を褒めるような発言には20代でも危険な橋ということになります。

〇その2:被害者が被害を相談しにくい

 セクハラには、被害者が被害を相談しにくいという問題点があります。
 セクハラにあった人・見聞きした人(856人)の中で
「相談・通報しようと思わなかったので、しなかった」が370人(43.2%)
「相談・通報したかったが、できなかった」が195人(22.8%)
と、多くのケースが相談されていませんでした。
 相談しなかった人の理由として、「相談しても解決しない」「仕事に支障が出ると困る」「職場に居ずらくなる」「相談内容が周りに漏れるかもしれないから」と言った理由があげられます。
 また、セクハラの相談をした・被害にあったと周囲に伝えた際に、相談した相手や周囲の人たちから加害者ではなく「被害に遭った人が悪い」と責められたり、被害を軽視され不利益を被る「セクハラの二次被害」も問題になっています。
 「どうしてNOと示さなかったのかと責める」「セクハラされるのは女性として魅力的だからと被害を肯定する」「加害者は昔からそういう人だから仕方ないと諭す」といったこともセクハラの二次被害にあたります。
 勇気をもって相談した人が「気のせい」扱いをされたり、被害に遭った方が悪いと言われたりすることで、「自分が悪い」と思い我慢を続けてしまいメンタル不調に陥るほか、 もうこれ以上会社に相談するのはやめようという考えになってしまうことが想定されます。
 解決のきっかけがあったにもかかわらず、セカンドハラスメントでそのきっかけを自ら潰してしまったために 、どんどん会社全体としての状況が悪くなることも考えられるため、注意が必要です。
 具体的な対応策はその3のところで見ていきます。
(https://www.huffingtonpost.jp/entry/sexual-harassment_jp_5cfbb255e4b0aab91c06c88b
https://blog.altpaper.net/6435)

〇その3:立証が難しい

 セクハラが特に難しいハラスメントとされている理由の1つとして、「セクシャルハラスメントが起こっていること」を周囲に立証することが難しいという問題があります。
 実際に職場でセクハラ被害を受けているのに、加害者側から「セクハラされているという証拠がないだろう」と言われ、門前払いされてしまうかもしれません。
 では、何を以てセクハラ被害を受けていることを立証するのでしょうか。それは、以下3つの「客観的」な証拠が考慮されます。
 まず1つ目は、客観的証拠です。例えば、現場を撮影した写真や会話内容を録音したものや、セクハラを受けたことで発病した場合、それを証明する医師発行の診断書などが挙げられます。
 次に2つ目は、供述証拠(第三者)です。現場を目撃した第三者の供述がこれにあたります。なお、この「第三者」が被害者と全く無関係であればあるほど、証拠価値が評価されやすいとされています。
 最後に3つ目は、本人がつけた記録です。いつどこで、どのような言動を受け、それによってどのような心理状態になったのかなど、セクハラを受けた際の状況を被害者自身が詳細に記録した文書がこれにあたります。

証拠集めは誰がすべき…?
 果たして、これらの情報をセクハラ被害者自身が集めることができるでしょうか。
 それは難しいと言えます。理由はセクハラ被害の特殊性にあります。
 セクハラは周りの人が見ている状況で起こるとは限りません。多くは1対1の状況で起こっています。そうした中で、被害者本人の証言だけでセクハラを立証することは非常に難しいと言えます。
 そのため、被害者がしっかりと証拠を揃えた上で相談するケースは多くはないそうです。その中で、企業側は証拠集めのサポートをし、その工夫をする必要があります。
 というのも、社内でその問題が起きている以上、会社として事実を調査し、確認していく責任があるからです。もし怠ると、その不法行為を黙認したと評価される恐れもあります。
 以上の理由で企業は事実確認をするためにも、企業側が主体的に事実調査を進めていかなければならないと言えます。

何が客観的な証拠と扱われるのか?
 では、具体的にどのように証拠を集めていくべきなのでしょうか。先に記した3つの客観的証拠を企業側はどのように集めていくのか見ていきましょう。
 まず、録音や録画などセクハラの現場を記録したものに関して見ていきましょう。現在進行形でセクハラが起こっている場合、スマホなどの録音機能で会話を記録することでセクハラが起こっているという事実を立証できるかもしれません。この際に注意するべきことは、「Xさん、〇〇しないでください」と相手の名前と特定の行為を拒絶する意思表示をクリアな音声で記録することです。そして、被害者にその撮影や録音を無理強いしてはいけません。
 次に、第三者からの目撃証言についてです。ここで注意すべきことは、聞き取り調査の際に、原則として具体的な事実に関することを「Yes or No」のクローズドクエスチョンの形式で質問していくことです。これは、質問内容に対し、記憶を遡って答えてもらったり、はぐらかされたりすることを防ぐためです。
 例えば、「被害者Aが加害者Xから、会議室に二人だけでいる時に卑猥なことを言われたり、飲み会の席で身体を触られた」という被害を報告してきた場合には、以下のような事実をあげて質問していきます。
【直接的な証拠を確認する例】
「3月16日(月曜日)、会社の飲み会の際に、XがAの身体を触っているのを見ましたか?」

【間接的な証拠を確認する例】
「5月3日(金曜日)、朝礼のあと10時ごろ、Xが指示してAと2人だけで会議室に残っていたのを覚えていますか?」

【悪い例】
「AさんがXさんからセクハラを受けていると言っています。何か知っていることがあれば教えてください」
→質問を受けた側は、何がセクハラとなるかについて判断を委ねられてしまい、Aがセクハラと感じたのとは違う感覚で「セクハラがあったとは思わない」という回答になってしまう可能性があります。また、回答が「Yes or No」の形ではなくオープンクエスチョンの形となっているため、その場では嘘をついて、後になって矛盾を指摘されても「忘れていた」という言い訳ができてしまいます。
 ただし、社内の第三者調査は加害者との関係を慎重に考慮しなければなりません。というのも、聞き取り対象者と加害者が以前の所属も含めて同じ部署、同期入社、上司・部下の関係である場合、加害者のことをかばったり、調査していることを漏らしたりして、口裏合わせや証拠の隠滅を図られる可能性があるからです。
 両者の関係性を確認して、もし加害者との関係性が深い場合は、聞き取りの前に加害者のことをどう思っているのか、何か気になることはないかなど、遠まわしに質問することで調査の目的を悟らせないようにすることも選択肢の一つです。

セクハラ相談の際に心がけるべきこと
 セクハラ相談の際に3つの心がけるべきことについて見ていきましょう。
 まず1つ目は、被害者の相談に対して「傾聴する」ことです。セクハラ被害の相談者は動揺し、支離滅裂なことをいったりしているように感じることもあるかもしれません。しかし、だからといって「セクハラではない」「被害妄想である」と決め付けずに、相談者の話をじっくりと聞きましょう。冷静に時間をかけ、時系列で話を聞いていくことで相談者も整理して話すことができるようになります。また、どのような話であっても、否定したり評価したりせずに、まず受け止めることが大切です。
 2つ目は、対応の確約を行うことです。既に証拠がある場合は然るべき措置の検討を行うことを、証拠がない場合は証拠を集めるための手段を講じたり、相談者に集めてもらうためのアドバイスをすることなど約束すべきです。これをせず、いたずらに時間が経過すると、セクハラという不法行為を放置したとして、会社の責任も追及される恐れがあります。
 3つ目は、相談について、自分の上長に適切な報告をして、情報を共有することです。その際に、証拠隠滅やセクハラ相談をしたことに対する相談者への報復を防止するために、決して加害者に対して報告をしてはいけませんし、対応にあたって直接関係ない相談者の上司や同僚等へ安易に報告をしてはいけません。というのも、誰が加害者とつながっているかわからないためです。
 セクハラ被害者になってしまった場合、相談する場所として以下の相談窓口があります。
・大手企業の場合
 この場合、「コンプライアンス窓口」が設けられているケースが多くあります。直接上司に相談しにくい場合などは、活用できそうです。
・中小企業の場合
 上司や同僚への相談が難しい場合、人事部に相談してみましょう。人事部内でセクハラがあった場合は、より上の役員や社長に相談をします。
・その他
 都道府県労働局には総合労働相談コーナーがあります。裁判に発展する前に、労務局が調停を行なってくれます。また、法務局が所管している法的トラブル解決のための支援センター「法テラス」も利用することができます。 
https://nichirou.com/5863)
https://chosa-labo.com/sekuhara-evidence/)
https://www.ecareerfa.jp/know-how/qa/system/22

◎おわりに

 会社は社内研修などを通して、社員がセクシャルハラスメントに関する事例について十分理解している状況を作ることが必要だと考えます。そして、社員一人一人が被害者・加害者目線を知った上で、日々の言動に気をつけることが重要ではないでしょうか。
 管理者側の当事者意識の向上も必要です。上で扱った事例の中でも、第三者である上司も注意義務を怠ったとされ、不法行為責任を負うとされました。たとえ第三者であっても他人事と考えるのではなく、関心を向けることが重要です。
 とはいえ、人の心を悪意で傷つけることに楽しみを見出しているような人間に対しては、いくら「セクハラは悪い事だ」と言ったところで効果は薄いかもしれません。そのため、もしセクハラ行為で訴えられたらどのように重い処分が下されるのか、ということも実際の事例を交えて伝えることが効果的だと考えます。
 また、実際に起こってしまった際の対応としては、まず被害者のストレスを最小限に抑えることが重要です。被害者と加害者を引き離し、双方から事情を聴取し、無自覚な加害者に対する指導を行いましょう。多くの場合、加害者にはセクハラ行為を行ったという自覚はないので、指摘を受けても「自分にはそんなつもりはなかった」という反応が返ってくる可能性もありますが、「迷惑行為をしているつもりはないと思っていても、相手は必ずしもそうとは思っていない」ということを丁寧に説明する必要があります。
 セクハラの型を問わず、被害者への声掛けをするとともに、「いつ、どこで、誰が、誰に対して、どのような行為を行ったか」を記録に残しておくことが大切です。そして相談を受けた際には適切な措置を取り、決して「二次被害」を起こさないようにしましょう。
 この記事が、自分が被害者になってしまった時のために、そして加害者にならないために、少しでもお役に立てられたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
(https://jinjibu.jp/article/detl/hr-survey/906/2/#heading_3_3)


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