夜の道。
その日は夜の峠道を車で走ってた。
街灯なんてない暗い夜道を走る。
一応左右で車がすれ違うには不自由しない程の道幅がある。
くねくね曲がる道から少し直線に出たら、何か道の端に動く物がある。
峠道で鹿とか猪とかに遭遇した事もあったから警戒して減速。
するとサッと小さな影が道路を渡った。
その後ろ、更に小さな影。
車を止めると狸の親子。
しかし、母狸と小狸1匹は渡れたが、残された小狸3匹は母と分断されたショックか道端でモジモジするだけで動こうとしない。
渡るまで待つか、そう思いギアをニュートラルにして待つが、度胸がないのか小狸は一向に渡ろうとしない。
母狸は私と子を交互に見て小狸に、早く来なさい、とでも言うように首を上下に動かす。
小狸は、だって、とでも言うように3匹固まってモジモジ。
あ、ライトが怖いのか?とライトを消すがそれでも渡らず。
こうなるとこちらが走った途端に小狸が動くんじゃないかと私も動けず。
暫く母狸と私でどうしたものか思案してると対向車が来た。
が、対向車も私とすれ違う前にライトを消して止まった。
左右の道を塞いでしまったので更に焦っていると意を決して小狸が3匹固まって母狸の方にダッシュ。
先に行ってた兄弟と体擦り合わせて藪の中に。
母狸は私を見た後、子を追って藪の中に。
それを見送った私は車を動かすと、対向車もそっと動き出す。
「止まってくれてありがとうございます」
「狸でしたね」
対向車の人も窓を開けて私と話す。
「お母さん先に行っちゃって子供がなかなか渡らなくて」
「そうですか、ライト消して止まってるから、どうしたのかなって」
車のトラブルで止まってると勘違いしたようだ。
それでも左右に動物が居るのは気付いたようで、彼も渡るまで待とう、そう思ったとか。
お互い飛び出しに気を付けましようと言って、気遣って止まってくれたお礼を言って、それぞれ来た道を進む。
特に何って話でもないが、狸が道路渡っただけなんだが、私も彼も何故かニコニコと狸親子を見送った話でした。
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