2、まさかです!ぼくイジメられんの?
中学を卒業し、僕の高校野球は
少し早く春休みから
入学式の後の部活では
先輩にグラウンドの端に走らされ「自己紹介と一発ギャグやれ」
と怒声が飛んできました
でも僕は慌てません、なにも恐れる必要もありません
順番として3番目だった僕は、前2人の同級生が
滑り倒してたのを見て逆に自信がありました
さらに言えば、昨夜テレビでたまたま見た
お笑い番組の一発ギャグの世界観を野球に置き換えて
頭の中ではもう台本が完成してるのですから
自分の名前を叫んだあと
さーいくぞ!!‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥と思ったタイミングで
暴走族みたいな人たちが
ブンブンーんって‥‥‥
ぶん ぶん ぶん ぶん
僕たちも先輩もみんなが大注目
バイクが走り去ったあと
次の同級生がすぐに名前を叫び始め
僕のお笑い芸人としての選択がなくなったのは
今思えばあの日がきっかけなのだと気づいたのは
もう少し後になってからの話
高校での野球というのは思ってる何倍もハードなもの
スポーツとして楽しんだ野球から
結果だけ考える野球へ
単純に身体つきの違う先輩との練習
100回の中の1回でもミスをすると罵声が飛ぶ精神環境
張り詰めた緊張感、肉体の限界の叫びが
治ることのない筋肉痛として感じられる毎日
なによりも理不尽なことが多すぎた
表面張力で保っている
パンパンに張った水のような心の中
ある日試合から自分達のグラウンドに戻り
3年生は帰り、1年生が道具を片付けなければいけない日
1年生はそこまで人数は多くないため全員が協力しないと
早く終わらない
でも先輩がいないことが幸せで、こういった作業はむしろ楽しかった
ある程度片付けが終わり休憩のような空気感が流れた
一年生の休憩場所に行くと2人の同級生が僕のバックの近くにいた
笑いながら
お前のおにぎり不味かったから捨てたと言われた
考えた‥
相手の気持ち、自分の気持ち、この場にはいない人の気持ち
張り詰めた水が溢れた‥‥‥‥‥