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サロンドパルファン2024(新宿)の記録

もう二週間以上経ってるんじゃが……。


注:Diptyqueは別件で同日に買ったもの
別日に追加購入したもの

5W1H/ミネラルコレクション

https://meeco.mistore.jp/meeco/product/7780900000000000000002887154.html

5W1Hは合同会社 香油香寮の代表にして調香師の中田真由美氏が手掛けるブランド。同氏の手掛ける他のブランドにはシェフ土屋公二氏とコラボしたグルマン超特化型のTHEOBROMA、カレンダーと香りを対応させた暦+暦(こよみとれき)がある。
5W1HはWhen、Where、Who……のアレではなく、Wake,、Wish、Walk、Will、Wisdom、Humorの頭文字から取られており、香りを通して感性を刺激し、自分自身に眠った感覚を呼び覚ますことがテーマだそうだ。

今回購入したのはサロパ限定の香り5つのセット。鉱物に着目し、ブランドの5Wと対応づけられている。
「サロパ限定品」は「サロパ用の在庫しか確保していない輸入品」か「サロパ・エクスクルーシブな香り」のどちらかになる。
これは後者だ。海外のブランドがわざわざ日本の催事限定の香りを作ることは稀と思われるので、国産ブランドならではということだろう。

ブランドの説明はこのあたりにして、香りの感想に移ろう。

AGATE OF WAKE

以降、ノートの説明については、公式Xの投稿にある場合はそれにお任せする。
スーパーで買える程度の茶しか飲んだことがない庶民ジャパニーズピーポーであるためか、個人的にティーノートを「茶」として認識できたことがあまりない。パルファンサトリの「ひょうげ」がかなり写実的な緑茶……のはずだが、催事場で嗅いでも自分が今まで飲んできたお茶の記憶とイマイチ結びつかなかった。ありとあらゆる場所でテスターからムエットや肌に香りが吹き付けられ、香気成分に満ちた催事場の空気が「常になにか香っている」状態に陥らせ、嗅覚がいつもより鈍くなっていたせいかもしれない。

つまり何が言いたいかというと、今のところトップとミドルに入っているティーノートを私自身はティーとして認識できていないようだ。やはり経験値不足だろうか。
この香りもフルーツティーを想起させたい訳ではなく、鉱物のイメージの手段として用いられていると思われるので、ティーノートの感受性が鈍いのが解釈において致命的にはならないと思う。たぶん。

全体的に軽めの香りで、サラサラとした質感がある。軽い香りがパフォーマンスを発揮しにくい真冬以外はいつでも楽しめそうだ。
個人的に酸味の強い香りが苦手だが、フランボワーズの酸味はまったく嫌味がない。

PYRITE OF WALK

公式画像の「カルダダモン」は単に誤記と思われる。

タバコ・レザー・ウード。ボトルが黒系統で、かつ濃い茶色のジュースが入った見るからに重たい香りのイメージが強く、この系統はどうも避けていた。そのため、私にとってPYRITEは新規開拓のねらいもあった。

・ヒノキ -ドライローズ - ウード の所謂ローズ・ウード系の香り
・カルダモン - イランイラン - タバコ・レザー のレザー系の香り
PYRITEにはこの2つの系統があると思っていて、この2系統の調和を楽しむ香りだと思う。
スモーキー・ウッディの上に抑制の効いたフローラルがほのかに乗っている感じ。嫌いじゃない。が、流石に夏は避けたほうがいいだろう。これからの季節向きだ。

GARNET OF WILL

トップ、ミドル、ベース全てにローズ系統の香料が入っている、ガーネットの赤いイメージと合わせてローズマシマシだ。ノートに表記されている他の香料はブラックカラント(カシス)、無花果(香水においては漢字表記よりフィグのほうが通りが良いと思う)、くちなし(ガーデニア)、蜂蜜と、フルーティ・フローラル調の香りだ。
ではキラキラに女の子しているかというと必ずしもそうではない。ミネラルコレクションのフローラルは敢えて瑞々しさを前面に出してこない感じがあり、GARNETのローズは暗めの色合いのバラを彷彿とさせる。競争が激しすぎるローズ香水で抜きん出た存在かというと断言はできないが、つけてても自分に違和感をあまり抱かないタイプのローズ系香水なので、個人的には好きだ。

LAPIS LAZULI OF WISH

フルーティ・ウッディ調の香り。パチョリとアイリスは樟脳っぽさや土っぽさを出すためではなく、どことなく品の良い、ほんのりとしたパウダリー感を出すために使われている。そしてシェリー酒が大人っぽさを醸し出す。
ムスクが植物性か合成かは分からないが、植物性のアンブレットシードやアンジェリカ由来のムスクであれば、そう書いたほうがピラミッドが映えると思うので、おそらく合成だろう。ムスクの主張より他の香料の主張のほうが強いと思うので、この香りを嗅いで「うーん、ムスキー……」とはならない気がする。

AQUAMARINE OF WISDOM

個人的にはフローラル・ウッディ。全体的に瑞々しさが抑えられている感があるため、トップのシトラスはホワイトジャスミンの透明感を出す補助に使われている感じがする。ガルバナムはインセンス、サンダルウッドに溶け込み、陰鬱の手前、内省的な領域を漂う。

ミネラルコレクション共通の特徴として、3~4時間程度で香りのほとんどが消える。特定のベースノートが長時間居座るといったこもなく、かなりパンクチュアルだ。一応、重ための香料が使われてるPYRITEだけは若干長い。

MUCHA "The moon and the stars"

行ったことはなくても個展のCM等で知名度の高いアルフォンス・ミュシャ財団公認のブランド。フレグランスの他に雑貨も取り扱っている。
「月と星」はミュシャ最後の装飾パネルで、4つの連作となっており、それを香りにした、という話。
買った理由は題材だ。北極星を見つけるための標となる北斗七星から名前を取っておきながら、この香りに興味を持たないはずがない。

「月と星」には女性と花が描かれており、その花がちゃんと香料に取り入れられているのが面白いと思った。
例えば「月」には白いケシの花が描かれていているが、ポピーフラワーがミドルに入っている。

今回買ったのは4作のうち2つだ。単体で使用することはなく、完全にレイヤード前提で使っている。

月/北極星

先ほど「ティーノートあんま分からん」と言ったが、この2つをレイヤードすると、めちゃめちゃにフレーバーをつけられた紅茶としてあり得なくもない香りがする。EDT濃度なため気持ち拡散性が高く、左右のお腹別々に等量プッシュすればちょうどよく体の中心で混じり合う。
フレーバーティー、あるいはキレイなお姉さんの香りといった風情で、オフィスにつけていく気にはあまりならないが、風呂上がりのチルタイム、寝香水、在宅仕事で落ち着きたい日に活用している。

催事場で販売員に聞いた話によると、調香しているのはシニアクラスのパフューマーで、中には催事場にある他の香りを調香した人もいるとか(具体的にどの香りかまでは流石に分からない)
ミュシャのブランドイメージを尊重して、敢えて黒子に徹しているのだとか。

OEM香水のような調香師の名前が秘匿された形態の香水はブランドのイメージに香りの印象が従属すると思う。例えばAUX PARADISの香水もOEMだが、これに対して百貨店に並み居るハイブラ香水のようなイメージを抱くことは難しい。ボタニカルでちょっと贅沢といったイメージになるだろう。
アルフォンス・ミュシャは知られているものの、MUCHAはまだまだ新興のブランド。まずは一般層に定着させていく段階だと思うが、フレグランスの価格帯的にも、個人的には最終的にロクシタンあたりに相当する位置づけになりそうな気がする。

ATELIER MATERI

サロパで初めて知ったブランドではなく、実は前々から知っていた。

「ボトルかっこええわ~……でもコンクリの蓋ってどうやって廃棄すんだろ。燃える?燃えない?資源ゴミ?」
「10mlで9000円弱かあ~、100mlで37400円かあ~。ま、俺には縁のないブランドだな」
というのが当時の感想。
それから75mlで28270円するDiptyqueのオルフェオンにまで手を出してしまった以上、100mlで37400円は実はもうすぐそこまで来てしまっている。

ここから先、ちょっとDiptyqueの話をする。
Diptyqueで次に狙っていたのはローパピエとフルールドゥポーだ。ローパピエは誕生日プレゼントのキャンドル獲得の権利を手に入れんがために、サロパ当日に別途購入する予定であった。
フルールドゥポーはアイリスとムスクの香り。アイリスは最高級の香料であり、様々な香料と組み合わさって様々な顔を見せる。まずこの性質が格好良すぎる。
香料として使われるのは花ではなく根の部分だが、花の色合いが好みだ。
個人的にフルールドゥポーの香りが好きで、高級な香水に手を出すのであれば、この香料に着目してみるのは一つの王道なのではと思っている次第だ。まあ、たぶんこの「王道」は複数車線あって、他にはローズ、ウード、サンダルウッドなどがあるのだと思う。

そういった経緯もあり、メンズ館で「イリス」の名がつく香りに興味があって……という話をしていたところ、販売員に紹介されたのがここのイリスエベーヌであった。
新作のエキストレのラインや、通常ラインの香りを一通り嗅いで、迷いに迷って当日購入したのがこちらであった。

Narcisse Taiji (ナルシス タイジ)

いやイリスエベーヌじゃないんかーーーい!

冒頭の写真の通り、結局後日イリスエベーヌも買っている。とりあえず順序通り説明させてほしい。

ナルシスは水仙。英語風に読むとナーシサス。

ナーシサス……?

Taijiとは太極。陰陽思想において重要な概念である。陰陽は英語でYin Yangと読む。

Yin Yang……?

つまり、これは「救済の技法」の推し概念香水なのでは……?

いいですか、これが厄介ファンの行動です。

香りの構成(Fragranticaより)
https://www.fragrantica.com/perfume/Atelier-Materi/Narcisse-Taiji-66396.html

個人的にチュベローズには率直に言ってnot for meな印象を抱いていた。というのも、NOSE SHOPのガチャで引いたBastilleのプレイン リューヌがチュベローズ香水のファーストコンタクトで、いい香りだが、見事に甘くフェミニンな香りに感じたからだ。

ちなみにこれにも抹茶が入っているようだが、イマイチピンと来ていない。本当に日本人か……?

ナルシスタイジのチュベローズは甘ったるくもなく、女性に寄りすぎてもいない。ジンジャーが引き締めてくれている。逆に言えば、「チュベローズは甘ったるくてフェミニンな香りがするべき」と考える人にとってはジンジャーが邪魔に感じるかもしれない。

中性的に調整されたチュベローズからのミドル、主役の水仙の登場だ。この水仙は野生のものだそうで、干し草とブランは原産地、オーブラック地方の大地をイメージしたのだろう。
下記のURLはオーブラック地方の観光サイトだ。息をのむほど美しい。それにチーズが名産らしい。最高か?

ベースのパチョリ、ムスク、レザーはナルキッソスの金色ウェーブロングヘアーの儚い美少年イメージ(※女神転生を参照)から、黒髪オールバック、モードファッションのイケメンのベクトルに向けてくれる。総じて中性的でカッコいい香りで、いつか100ml欲しいと思わせてくれた香りだ。


Lounge Saiさんの今の在庫。なんかめちゃくちゃ売れてない?
もしかして、どっかでバズった?

Iris Ebène(イリス エベーヌ)

伊勢丹メンズ館のサロパは本館の開催期間終了後も一週間ぐらい続いていた。前半と後半でブランドの入れ替えもあり、最後まで盛り上がりを見せていた。
本館で試しそびれた香り、そして選ばなかったイリスエベーヌへの未練を胸に再びメンズ館へ。そして未練は晴らされた、という訳だ。

香りの構成
https://www.fragrantica.com/perfume/Atelier-Materi/Iris-Ebene-73666.html

甘さと土っぽさの入り混じった香りだ。マテリにはカカオポルスレナというカカオをフィーチャーした作品があるため、これにカカオは入っていないと思うが、甘くパウダリーな感じはチョコの詰め合わせの箱の香りにほんのちょっぴり近いと思う。

生まれも育ちも23区の都会っ子がこの香りをどう思うか知らないが、北国の田舎育ちの私にとっては、冬のストーブが効いた実家を思い出させる。体に降り積もった雪を払い、コートをハンガーにかけて入る温かい部屋。その安堵感。

フルールドゥポーのようなアルデハイド系の香調におけるアイリスとはまったく違った役回り。やはりアイリスは面白い。

サロパ振り返り

  • 自分以上に熱量のある人が集う空間は刺激になる。これが部活の大会なら最終的に雌雄を決する必要があるため「周りは皆ライバル」となるが、この趣味はソシャゲのガチャマウントのように、かけた金額をでマウントを取る品のない輩があんまりいないので、いい刺激だけを受け取れる。

  • 販売員も催事のおかげでいつもよりテンションが高く、香水トークで盛り上がれた。めっちゃ楽しい。元々の交友関係で香水トークできる人がほぼおらず、あまりSNSの香水垢と積極的に絡まない私にとっては新鮮な体験だった。

  • それはそれとして催事場の香りの強さは尋常ではない。定期的に自分の服の匂いを嗅ぐなどして嗅覚リセットはしていたが、滞在時間が長引くほど嗅覚にデバフがかかる。ついでにムエットを嗅ぎ、肌のせして、自分から鼻を疲れさせることをしているのだから尚更だ。後半どれぐらい嗅覚が鈍っていたかというと、後日ムエットを取り寄せてサンダガに撃たれたような衝撃を受けたレアンデモダブル(Les Indemodables)の香りが、催事場ではあまり分からなくなっていた。

  • 今年はサロパの直前までコンスタントに香水を買っており、予算を抑えざるを得なかった。マテリ以外は元々の計画の範疇だった。当日のフルボトル衝動買いを一本程度許容するのであれば、昨今の価格高騰も鑑みて、次回は6~7万の予算は確保しておかなければ、と思う。

  • サロパ限定品は一期一会だが、伊勢丹に置いていないブランドの通常ラインナップを試香して、「この季節にはこれを買おうかな」と中期的なプランを練るのもサロパの楽しみ方なのだろう。石油王じゃない私はコミケの同人誌みたいに当日に爆買いはできないから、そうやって買う時期を分散せざるを得ないのかもしれないが。



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