母の50年ものの万年筆を引き継いだ
最近万年筆にハマっている私、先日実家に行った際に、母に「使ってない万年筆とかあったりする?」と聞いてみた。
うーん、と暫く考え込んだ母は、「あ」と言いながら、昔ながらの缶製筆箱から一本の万年筆を取り出した。
「これ、高校入学のお祝いでもらったやつだと思う。使ってなくてカピカピだけど…」
母の手の上には細身の銀色の万年筆が鎮座していた。所々インク汚れが染み付いているし、高校入学祝いということは……え、50年ものやん。すごい。
パカっと嵌合式のキャップをとってみれば、ペン先にもインク汚れ。軸を分解するとインクのカートリッジが刺さったまま。
ここから推察されることは、おそらく中にインク汚れが溜まっているであろうということ。
復活は無理かな〜と半ば思いつつ、50年ものの万年筆という響きに心惹かれ、母からありがたく頂戴することにした。
家に帰ってもう一度万年筆を眺めると、本体にはメーカー名等の記載なし。50年前のものだからデザイン検索も難しそう…そう思いながらインクカートリッジに目を凝らすと……あ、これプラチナ万年筆製なんだ!……と判明。
一先ずペン先をぬるま湯に浸し洗浄を開始しつつ、プラチナ製の吸入式カートリッジ(自分で好きなインクを詰めることができるカートリッジのこと)をポチり、万年筆の復活を試みることにした。
万年筆の洗浄は以前もしたことがあるのだけれど、その時と比べるとペン先を浸した水が中々黒くならない。中で固まりすぎているのか?カスっぽい黒い粒々は徐々に浮いてきた。
何度か水を変えつつ、途中えいや!と水道水に滝行のようにペン先を当ててみる。すると、水圧でドバッと黒い水が出てきた。これで少しは抜けたかな?と再び水につける。
そんなことを一晩繰り返し、その後ペン先が完璧に乾くまでさらに一晩。
その頃には頼んでいたインクカートリッジが届いたので、ドキドキしながら万年筆に嵌めてみた。
果たして、50年前の万年筆に今のカートリッジは入るのか……?
カチッ
は、入ったー!!!!
万年筆が何十年と経っていても型を変えていないという事実に感動しつつ、今度はインクを吸い上げる作業に進む。
深い緑のインク瓶にペン先を漬け込み、ちょっとずつカートリッジのお尻についたネジを捻ると、じゅぼっとインクがカートリッジに吸い上げられる。
うまくいったことにホクホクしながらペン先をティッシュで拭き取り、ペン軸を嵌めていざ試筆。
硬めのペン先からスルスルと深緑インクが伸びていく様に、ただただ感動した私は、速攻母に連絡をした。
「お母さん、万年筆、書けたよ!」
母は万年筆がまだ使えたことに感動しており、しきりに「すごい!すごい!」と言っていた。
こうして筆記具を受け継ぐことも、なかなかオツじゃないか、なーんて自己満足に浸りながら、その日はその万年筆で1日の出来事を書いた。
内容はもちろん50年ものの万年筆復活劇のこと。
これからは母に代わって、私の相棒としてさらに何十年と頑張ってもらいたいと思う。
それではみなさま、本日もスマイリーな1日を。