作家を目指して 私の好きな作家・作品編③ 森鴎外「高瀬舟」
「私の好きな作家・作品編」は、60年生きてきて、今までに感銘を受けた、印象深い作家や作品を投稿しています。3回目は森鴎外「高瀬舟」です。
森鴎外もあまり好きな作家ではありません。若い頃、代表作「舞姫」にトライしましたが、文章が堅苦しく難解で、「凡人の頭では理解できない」と挫折した苦い経験があります。しかし最近、京都旅行で偶然、再現された高瀬舟を見たのがきっかけで、文庫本を手にしました。
弟殺しの罪で遠島の刑を受けた30歳の喜助。遠島を仰せつけられるものは二百銅をつかわすのが当時の掟であった。護送を命ぜられて一緒に舟に乗り込んだ同心羽田庄兵衛は、喜助の顔がいかにも楽しそうで不思議がる。わけを尋ねると、こう答えた。「わたくしは今日まで二百文という大金を持ったことがない。お牢に入ってからは為事をせずに食べさせていただきます。この二百文で島でする為事の本手にしようと楽しんでおります」。お金が原因で波風が起こる羽田家と比べ、喜助の欲のないこと、足ることを知っていることは庄兵衛の心を動かし、「人の一生」に思いを巡らせる。
しかも、よくよく話を聞くと、自殺を図った弟に「剃刀を抜いてくれたら、死なれるだろうから、抜いてくれ」と言われ、抜いたのが「殺し」だと。それが罪だろうか。
わずか10ページほどの短編小説ですが、「人の一生」「安楽死」について、非常に考えさせられました。「足るを知る」の教訓を得た、私にとって大事な作品です。
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