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作家を目指すきっかけ

 作家を目指すきっかけは「自分という人間がこの世から消えても、魂を込めた小説を残したい」との思いが湧き上がってきたから。「自己承認欲求」の極みでしょうか(笑)。それと、同居していた義父母の存在が大きかったと思います。

 私は28歳で見合い結婚と同時に義父母と同居。当時63歳の義父は、私たちの結婚前に重い病で倒れ、入退院を繰り返す日々を余儀なくされました。結婚するまで、家族が入院する大変さを全く知らなかった私は、家事や育児に加え、病人を抱えて右往左往。義父は何度も倒れ、だんだんと弱り、私が嫁いで16年後に他界。義母は、後期高齢者を過ぎてから難病に侵され、酸素ボンベが外せない体になり、2年後に他界。偶然にも2人とも「79歳」でこの世を去りました。

 人が亡くなると、さまざまな手続きが必要になります。まずは市役所へ死亡届を提出して火葬の申請。通夜、葬儀が終わったら、介護保険証などの返却、年金の受給権者死亡届(報告書)の提出、銀行預金の凍結などなど。故人を偲ぶ時間はなく、1カ月かけて何とか終了しました。死亡すると当然ですが、戸籍は除籍に。たった1カ月で、義父母がこの世に生きた証しは全てなくなり、79年の生涯が消えてしまう…。2人の存在は日本国から消え、家族や親せき、友人、知人の記憶に残るだけ。「人間の一生は何て儚いのだろう」と茫然自失になりました。
 
 「79歳」。義母が亡くなった当時、55歳だった私は「あと24年しか残り時間がない」と焦燥感に駆られ、「後悔のないように生きたい」との思いに突き動かされました。古い友人に会ったり、遠出をしたりと、今までしたことがない事へのチャレンジを繰り返すうちに、上述の「自分という人間がこの世から消えても、魂を込めた小説を残したい」の域に達したのです。

 ですが、一行ですら小説を書いたことがない私。一体どこから何から始めたらいいのか…。続きは次回の投稿で。

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