たった1回の筋トレがベッドレスト中の筋萎縮を抑制する
📖 文献情報 と 抄録和訳
高齢男性におけるベッドレスト中の筋萎縮と筋原線維タンパク質合成の低下を、1回のレジスタンス運動が抑制する
[背景・目的] ベッド上安静時の筋原線維タンパク質合成(MyoPS)の障害は、高齢者の骨格筋の減少を加速させ、健康に悪影響を及ぼす二次的転帰のリスクを増加させる。
[目的] 我々は、健康な高齢男性10名(65~80歳)を対象に、廃用時のMyoPSと筋形態に対する事前のレジスタンス運動(RE)の影響を調査した。参加者は、5日間の入院安静の前日の夕方に、片側下肢のレジスタンス運動を1回(Leg Extension, Curl, 75%1RM, 12回×6セット)行った。大腿四頭筋断面積(CSA)をベッドレスト前とベッドレスト後に測定した。連続筋生検と二重安定同位体トレーサーを用いて、7日間の習慣的「自由生活」期とベッドレスト期における統合型MyoPS(iMyoPS)の割合、およびベッドレスト終了時の急性吸収後MyoPSと食後MyoPS(aMyoPS)の割合を測定した。
[結果] 筋長の40%、60%、80%における大腿四頭筋CSAは、ベッドレストにより運動した脚(EX)と運動していない対照脚(CTL)で有意に減少した。筋長の40%および60%における大腿四頭筋CSAの低下は、CTLと比較してEXで抑制された。
ベッドレスト中、iMyoPS速度は、CTLでは常習値から低下したが、EXでは低下せず、脚間で有意差がみられた。食後のaMyoPS速度は、EXのみ吸収後の値より増加した。ベッドレスト中のiMyoPSの変化は、CTLでは大腿四頭筋CSAの変化と相関していたが、EXでは相関していなかった。
[結論] 高齢男性において、5日間のベッドレストによるiMyoPS率の低下と大腿四頭筋の萎縮は、1回のREにより抑制された。高齢患者集団における事前のREの機能的・臨床的意味を理解するためには、さらなる研究が必要である。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
手術の直後というのは、どうしても安静時間が長くなる。
それは術侵襲部の安静など、必要な期間でもある。
だから、その期間に無理をするということは、良策ではない場合がある。
そこで、近年『術前リハビリテーション』、『プレリハビリテーション』というものが注目されている。
いくつかのレビュー論文の簡易的抄読を行ったことがあるので共有しておく。
どれも、さまざまなアウトカムに対しての良好な結果を示している。
そして、今回の抄読研究は、その良さに新たな1要素を加えるものとなった。
ベッドレスト前に、たった1回の筋力トレーニング(75%1RM, 12回×6セット)を行うと、筋萎縮が抑制された。
被験者が健常者であるため、直接的な応用はしにくいものの、プレリハビリテーションで術前に筋トレをしておくことは、術直後のベッドレスト期間における筋萎縮を防ぐ可能性は高いのではないだろうか。
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