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Arm slotの科学


📖 文献情報 と 抄録和訳

高校生投手とプロ投手のアームスロット位置の運動学的比較

📕Manzi, Joseph E., et al. "Kinematic and Kinetic Comparisons of Arm Slot Position Between High School and Professional Pitchers." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 11.10 (2023): 23259671221147874. https://doi.org/10.1177/23259671221147874
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✅ 前提知識:アームスロット(Arm slot, AS)とは?
・AS = 地面に対する垂直軸とボールリリース時の上腕長軸の前額面上における角度
・AS角度は、主に体幹の側方傾斜、肩関節の外転角度、肘関節の屈曲角度の組み合わせで構成される
 (主に体幹の側方傾斜角度、肩関節外転で構成される)

📕Escamilla, Rafael F., et al. Journal of applied biomechanics 34.5 (2018): 377-385. >>> doi.

[背景・目的] アームスロット(AS)の位置が異なる投手では、投球腕のキネティクスが異なる。目的ASの位置が異なるプロ投手と高校生投手の間で、運動学的および動力学的な値がどのように異なるか、またこれらの違いが両集団で同様に観察されるかどうかを明らかにすること。

[方法] 高校生投手(n = 130)とプロ投手(n = 288)を対象に、3次元モーションキャプチャーの下で8~12球の速球を投げた。各コホートの投手は、ボールリリース時の平均AS位置に基づいて細分化された:
AS1(ASの程度が最も低い:オーバーハンド投法が多い)
AS2(ASの程度が中間:スリークォーター投法が多い)
AS3(ASの程度が最も高い:サイドアーム投法が多い)

運動学的および運動学的パラメータを群間で比較した。研究デザイン:対照実験室研究。

[結果] 高校生の投手は、プロの投手(58°±14°)と比較して、ボールリリース時のASがオーバーハンド(50°±11°)であった(P < 0.001)。両コホートにおいて、AS1投手はAS3投手と比較して、ボールリリース時の肩外転(高校生、P<0.001;プロフェッショナル、P<0.0001)、体幹側屈(高校生、P<0.001;プロフェッショナル、P<0.0001)が有意に小さかった

AS3ポジションのプロの投手は、AS1投手と比較して、体幹上部の最大角速度のタイミングが有意に遅れていた(投球時間のそれぞれ64%±7% vs 57%±7%;P<0.0001)。高校生の投手では、ASと肘関節屈曲トルクの間に有意な正の相関が認められ(P = 0.002、β = 0.28)、プロの投手では、ASと肘関節挙筋トルク(P < 0.001、β = -0.22)および肩関節内旋トルク(P < 0.001、β = -0.20)の間に有意な負の相関が認められた。

[結論] ASポジションは肩の外転と体幹の側方傾斜に関連していた。ASの位置が異なるプロの投手と高校生の投手は、投球腕の運動学において同様の変化を経験しなかった。プロの投手において、オーバーハンド投法で体幹上部の最大角速度が早く発現することは、上肢損傷に関与するパラメータである不適切な骨盤と体幹のタイミングの分離を反映している可能性がある。また、ASと肘関節の回内および肩関節の内旋トルクとの間に負の相関があることから、ASの位置が過剰な場合も最小の場合も、負の影響を及ぼすことが示唆される。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ボールリリース位置というのは、ピッチングという複雑な動作の中で、とても観察しやすいパラメータの1つである。
その観察しやすいパラメータがモニタリングや指導に活かせたら、スポーツ現場に役立ちそうだ。
今回の抄読研究は、AS角度の違いが投球動作バイオメカニクスに与える影響を調査してくれた。

その結果として、高校生はプロ選手よりオーバーハンド傾向であり、プロ野球選手においてはAS角度が大きい(よりサイドスローに近い)方が、関節トルクが小さいことが明らかとなった。
ただし、この関連は単変量解析であるため、今後はさらにバイアスを考慮した、精度の高い研究が必要になるだろう。
その中で、知りたいことは「同じAS角度の中でも肩関節外転が大きい派、体幹傾斜が大きい派、同等派で関節トルクが変わるか」など、より投球動作指導に結びつきやすい研究だ。

アームスロット(AS)。
重要な用語とその周辺の知識を理解できた。

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