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椎体骨折前後の矢状面アライメントの変化


📖 文献情報 と 抄録和訳

新規骨粗鬆症性椎体圧迫骨折後の脊椎矢状面バランスの変化

📕Yokoyama, Kunio, et al. "Changes in spinal sagittal balance after a new osteoporotic vertebral compression fracture." Osteoporosis International (2023): 1-7. https://doi.org/10.1007/s00198-023-06976-4
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[背景・目的] 新しいVCFが脊柱矢状面のバランスをどのように変化させるかを調べるため、縦断的研究を行った。新しいVCFはSVAを平均2.8cm増加させた。下位腰椎にVCFが発生すると矢状バランスは悪化する。L1以下の新たな骨折は、Th12以上の骨折に比べて矢状バランスの悪化の相対リスクを2.9倍に増加させた。目的:骨粗鬆症性椎体骨折と脊柱矢状面バランスとの関係に関する研究は、いずれも横断的研究に限られている。本研究の目的は、新たな椎体圧迫骨折(VCF)が脊椎矢状面バランスをどのように変化させるかを調べるために縦断的研究を行うことである。

[方法] 対象は、椎体骨折または腰部脊柱管狭窄症の治療後に定期検査を受けた患者である。本研究では、新たにVCFを発症した患者40名を対象とした。脊椎骨盤パラメータの変化と矢状バランスの変化を決定する因子を検討するため、骨折前後の全脊椎立位X線写真を比較した。

■ 矢状面アライメント異常の定義
・Sagittal vertical axis (SVA):仙骨上縁から引いた水平線と第7頚椎から引いた垂線との距離
・Spinosacral angle, (SSA):T1の前側から仙骨の中央に引いた線と、仙骨プラトーを通る線とのなす角度

[結果] 患者の平均年齢は79.0歳であった。骨折前後のX線写真の平均間隔は22.7ヵ月、骨折発生から骨折後のX線写真の平均間隔は4.6ヵ月であった。骨折後、SVAは平均2.78cm増加し、SSAは平均5.3°減少した。

SVA⊿とSSA⊿はともに骨折前のパラメータとは関連していなかった。骨折椎体のくさび角は矢状面バランスの変化とは無関係であった。⊿受信者動作特性分析の結果、矢状面バランスの悪化の相対リスクは、Th12以上の骨折よりもL1以下の新規骨折の方が2.9倍高いことが明らかになった。

[結論] 新規VCFはSVAを平均2.8cm増加させた。矢状面バランスは下部腰椎に新たな骨折が生じると悪化する。骨粗鬆症への早期介入は高齢者にとって不可欠である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

(椎体圧迫骨折後の患者さん)「なんか姿勢が前こごみになった気がするんだよね」
(僕)「確かに今回の骨折では骨形態としても前こごみになる方向に潰れていますからね」

この会話は、椎体圧迫骨折患者さんのリハビリにおいて、しばしばなされる会話ではないだろうか。
確かに、椎体圧迫骨折においては、脊椎の前方に位置する椎体が潰れることによって、猫背方向に変形が起こるであろうことは推測できる。
だけれども、『どのくらい?』ということに関しては、知らなかった。

それというのも、情報の得ようがない、から。
椎体圧迫骨折後のレントゲン写真は、みんな撮影する。
だが、骨折前に偶然レントゲンを撮っている、しかも脊椎の矢状面画像を、なんていう患者さんはほとんどいない。
だから、個人内で矢状面パラメータの骨折前後の比較をする、ということがほとんど不可能だったのだ。

今回の研究においては、それが可能だった40名、しかも日本人を対象としている点で希少な研究と言えるだろう。
そして、その結果SVAは平均2.78cm増加し、SSAは平均5.3°減少した。
予想通り、猫背方向へのアライメント変化が見られ、その程度も知ることができた。
貴重なデータとして保存しておきたい論文である。

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