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「戸建ては資産性が無い」の嘘
「戸建ては資産性が無い」と巷でよく言われます。戸建ては情弱といった風潮さえ感じます。しかし・・・「東京23区」の戸建ては十分に資産性あるんです!
ちなみに「戸建て」「資産性」でググったり、youtubeを見ると色々でてきますが、ほとんどが地方・東京を一緒くたにした一般論です。
確かに一般論としては戸建ては資産性が低いですし、統計データも全国平均はそう示しています。しかし不動産はケースバイケースであり、「全国」を「東京23区」に分解すると違った事実が見えてきます。
前提
以下前提で話します。(実際に2024年にこの条件に近しい戸建てを購入)
・家族構成
夫婦+子供2人 →3LDKほしい
・戸建て
目黒区~品川区辺り
駅徒歩10分以内
3LDK 80平米台
新築・土地建物トータル8000万
※中古でもよいがこのエリアは中古が少ない、かつ新築と価格があまり変わらない感覚
・マンション
目黒区~品川区辺り
駅徒歩10分以内
3LDK 70平米台
築20~30年・10000万
※もはや1億では買えないかも
だってマンションめっちゃ値上がるんでしょ?
本記事で言う資産性・資産価値は「売却価値」を指します。「将来いくらで売れるか」は経済情勢も関わるので神のみぞ知る感じですが、「過去いくらで売れてるか」は1つの目安になります。「平均価格 推移」とかでググると以下グラフがよく出てきます。
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戸建て・マンションの価格指数の推移を表しており、「ある年の価値は2010年の価値の何倍か」が分かります。価格「指数」のため、単純な平均価格と異なり物件の立地や特性による価格変動が排除されているため、純粋な価格変動が分かります。
マンションは、2013年アベノミクス・2020年コロナを契機に爆発的に高騰してます。2010年の価格を100とした上昇率は2024年で202.2なので約2倍です(すげぇ)。一方、戸建ては115.0と1.15倍に過ぎません。
※あくまで不動産価格の動向を示すものであり、実際でいくらで売却できるかは築年数に伴う経年劣化を考慮する必要あり
ただし、上記は全国が対象です。「東京」に絞ってみます。マンションは全国202.2、東京204.0でほぼ変わりませんが、戸建ては全国115.0に対し東京132.6と17.6ポイント高いです。つまり2010年からの上昇率は約1.3倍です。金融緩和による上昇も見て取れます。
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https://www.juken-net.com/main/kaidoki/
さらに、上記は多摩などの23区以外が含まれています。そのため、東京全体を「23区」に絞ってみます。
マンションはほぼ同じですが、戸建ては東京全体133.6に対し23区143.1と2023年時点で9.5ポイント高い(7.1%)です。2013年~2023年の平均値の比較では5.7%高いです。
※以下グラフは「㎡単価」であり、上記グラフの「不動産価格指数」と一概に比較はできませんが、「㎡単価」と「不動産価格指数」の推移は概ね一致するため、「不動産価格指数」で比較しても近しい結果になると思われます。
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http://www.reins.or.jp/library/nmw2023.html
このように、戸建てに限り「全国 vs 東京」「東京 vs 23区」で価格上昇率に差が発生するのは、マンションは好立地が多いが、戸建ては少ないためと推察します。立地は不動産価値を決定する重要な要素です。戸建ては地方ほど徒歩20~30分とかザラですよね。そのような資産性の低い戸建てが平均値を押し下げています。
なので、「駅近」という観点でも比較してみます。
統計データが徒歩分数別は首都圏という括りしかなかったので前提条件が少し異なりますが、徒歩10分以内の戸建ては、戸建て全体と比較し2023年時点で9.4ポイント高い(7.5%)です。2013年~2023年の平均値の比較では6.0%高いです。やはり駅近は正義です。
一方、マンションは同様に比較しても3ポイント高い(1.5%)程度です。
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http://www.reins.or.jp/library/nmw2023.html
データ的にもマンションは駅近が多いです。徒歩10分以内の戸建ては全体の約3割に過ぎないですが、マンションは全体の7割もあるため、戸建てほど差がつかないのだと思います。
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http://www.reins.or.jp/library/nmw2023.html
また、マンションのデータには港区などの高級タワマンが含まれており、平均値を押し上げてそうです。
そのため「エリア別」に分解すると、南西部(本グラフの定義は品川区・目黒区・大田区・世田谷区・杉並区・中野区)と23区全体の価格指数は、南西部の方が23区より5ポイント低い(-6%)です(2010年=100とした2023年の上昇率を表より算出)。
※南西部にも2~3億のタワマンはザラにあるので、比較対象の1億クラスに限定したいところですが、データが見つかりませんでした。「高いものほどリセールが良い」ので南西部かつ1億クラスに絞ると上昇率はより下がる気がします。
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戸建ては、マンションのように都心の高級物件が平均値を吊り上げてることはなさそうです。2018年~2022年のデータですが上昇率トップはむしろ南西部エリアです。そのため南西部に絞っても23区の平均値と変わらなそうです(そもそも都心に戸建てがないし豪邸はレア)。
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https://www.lvnmatch.jp/column/sell/18467/
結論
以上を踏まえると、結論は以下です。
・戸建て
全国平均の価格上昇率は115%(2010年=100)。しかし、東京に限定すると133%。推測だが、23区に絞ると+7%程度(南西部も同じ)、徒歩10分以内で+7%程度。
→23区南西部・徒歩10分以内の戸建ては上昇率145~150%
・マンション
全国平均の価格上昇率は202%(2010年=100)。東京に限定すると204%(23区も同等)。推測だが、徒歩10分以内で+1.5%程度、南西部限定で-6%程度(1億以下限定でもっと下がりそう)。
→23区南西部・徒歩10分以内のマンションは上昇率195~200%
最初のグラフで表現すると、以下イメージです。
条件を絞ると戸建て(青)とマンション(緑)の差がぐっと縮まりました。
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まだマンション有利ではありますが、都内戸建てなら十分に資産価値があると言えるのではないでしょうか。
また、実際の売却価値としては、経年劣化に伴う資産価値下落を考慮する必要があります。マンションは築11~15年で約20%減です(実はマンションの方が下落率が高い)。その点も踏まえた総合的な結論を別記事にて述べたいと思います。