映画「さかなのこ」感想

のんちゃん演じる「さかなクン」が主人公の日本映画。

途中まで、「これはいったい、誰向けに何のために撮られた映画なのか」という感覚が続きますが、ある地点を境に、自然体で、何にも捉われることなく、それでも一生懸命生きることの大切さを謳うヒューマンドラマであることに気づかされる、不思議な映画でした。
以下、ネタバレあり。

そもそも、男性である本物の「さかなクン」を女性ののんが演じるというのが、大発明というか、もうそのキャスティングの時点で「勝っている」んですよね。

これを例えば、神木君あたりに演らせてもきっと面白い映画になったと思うんですが、なぜそうしなかったのかということが観終わった後、ハッキリわかるんです。
また、同じ女性でも、例えば、「翔んで埼玉」で男性を演じた二階堂ふみさんとかだと、やっぱり違うんですよね。
女性で、なおかつ、それが「のんちゃん」であること。
その2つの条件を満たすことで、2つとないヒューマンドラマに到達したと言えるのではないでしょうか。
それは、ミー坊の母親役を演じた井川遥さんとの会話や、幼なじみの柳楽優弥君とのやり取りでも、「のんちゃんじゃなければ」というのを感じます。

まあ、正直、さかなクンという謎の人があの境地になるまでにどんな人生を歩んだかについては、興味はあるけど、別に知りたいとも思わない、というか、知ってしまうことによって、何かさかなクンが持っている魔法が解けてしまうのではないかという恐れもあったのですが、どこまでが事実で、どこまでが虚構かわからないようなふわっとしたストーリーが、程よく、その好奇心を満たすと同時に、明かしすぎない、絶妙のサジ加減になっていました。
今まで、「マルコムX」だとか「コロンブス」だとか、いろんな伝記映画を観てきましたが、一番好きですね。

沖田修一監督(「南極料理人」など)と脚本を担当する前田司郎さん(劇作家)という、世界一、「ふわっとした話」を描くことに長けた2人のタッグというのもよかったのかもしれません。