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カミングアウトを受ける
その日までにも何度か「今日の夜話したい事があるんだけどいい?」
と声をかけられた。
3回くらい。
もちろん「いいよ」と答えていた私。
気軽な方がいいかな?なんて、ご飯中に「今聞くけど?」と言ってみるものの、「後でいい?」と返される。
じゃあ、そろそろ?…と、お風呂上がりの子に声をかけるけど「やっぱり今度でいい?」なんて返される。
そんなやり取りを3回ほどした去年の今ごろ。
本当にとうとう、その時はやってきた。
子がお風呂から上がり、私が入ろうか…としていたそんな無防備なタイミングに。
「今ちょっといい?」とパソコンを脇に抱えてリビングに来た子。
きっと深刻なトピックだろう…とは予想していたけど、パソコンを抱えているって事は進路のこと?
(通っていた高校は進路希望、計画について学校側とデータを共有するため、パソコンで管理していました)
内心ビクついていた私はこの時、少しホッとしたんです。
でも、ソファに座って、明らかに何かを言い出し難そうにしている子を前に、緊張感が高まります。
何だろう?え?なに?そんなに言い難いんだね…
夫がいない私1人のタイミングを狙ってるし…
「なになに?どうしたの?」の私の問いに帰ってきた言葉は強烈な一撃だった。
ただひと言「わたし、本当は男の子なの」
と。
「ママは嫌かもしれないけど…」と涙を流し始めた。
「え?どういうこと???」
事態を予測していなかった私は大混乱。
多分、こんな時はただ耳を傾けるべきなのに、質問攻めをしてしまいます。
「え?どういうこと?女の子じゃなかったの?」
「え?髪も今は切ったけど長かったし…
え?スカートも最近は履いてないけど、履いてたよね?」
頭の中では「中性的なのが好きだけど、男の子?そんな振る舞いもないよね?
生理もあるはずだし、何のことを言ってるんだろう?」
とぐるぐる思考が空回り。
でも同時に、その「男の子なの」には妙な説得力もあったんです。
昔から所謂「普通の女の子」とは何かが違うと、私は感じていた。
何となく「この子は将来結婚しないかもしれない」なんて思っていたし、子どもを産むなんて事については可能性がないように感じていた。
子供好きな子なのに、何でそんな確信に近いものを感じていたのか…
自分でも良く分かりません。
でも、そんな思いがあったからその一瞬で、妙に納得もできた。
ただ、そのカミングアウトに続いた言葉がまた衝撃だったんです。
「胸を取る手術をしたいから、お金を貸して欲しい」と。
抱えていたパソコンは、どんな手術、術式があるのか?そして費用について、それを説明する為のものだった。
よくよく見たら、学校で使っているパソコンではなかった…
そしてゆくゆくは「ホルモン治療をしていきたい」と。
理解が追いつかない中でも、ここまで色々調べていたことに、少しの気の迷いなんかではない事が伝わってくる。
分かった。胸がイヤなのは分からなくもない。
わたし自身は小胸だけど、授乳中にぱんぱんになり驚くほどグラマラスになったとき、ピタッとした服を着ることが嫌だった記憶がある。
だから、胸がイヤなところまでは何となく理解ができる。
でもホルモン治療?
となると、このかわいい子にヒゲが生えたりしていくの?
そこまでする事が正しいの??
恥ずかしながら私の方は混乱し過ぎて「話してくれてありがとう」なんて言葉は出ず…
「分かった。何も知らなかったから、ママもちょっと調べてみるね。今ここで返事はすぐに出来ないけど、ちょっと待ってね」
と伝えたことは覚えてる。
それに対して「ありがとう。こんなに聞いてくれるだけでも嬉しかった」と涙を流し続けながら微笑んでいた我が子。
涙を流してるけど、泣いてるんじゃない。
泣く=悲しいではなくて、どこか力が抜けて
上手く言えないけど、浄化の涙みたいと感じたのを覚えています。
比べて私の方は、軽く放心状態。
その前にパソコンで見せられた、見慣れない単語に恐怖心のようなものは拭えず、それでいてこれまでの不調の原因を知れたことに安堵もし…
ただ泣かないように。
泣いたら悲しんでると思われる、それは嫌だ。
と耐えるので精一杯。
さすがに完全には耐えきれなかったけど。
悔やまれるのはあの夜、ただ抱きしめてあげられなかったこと。
思い返せば、あの場の正解は「ただ受け止める」ことだったんじゃないかな。
そんな事があってから、寝る前にハグをする習慣を勝手に作りました。
どういう結果に繋がるかは分からないけど、私はあなたの味方だよ。大切な存在だよ。と伝えるために。
冗談ぽく大きく手を広げて「おやすみ〜」と抱きしめる。
嫌がるかな?と思ったけど、案外抱きしめ返してきたので「この子に1番必要なのはこれだったんだな」と感じます。
サプリより薬より、ドリンクより、1番の精神安定剤になるのが「ハグ」なのでは?
今は大学進学で家を出てしまったけど、それ以降は出かける玄関と、おやすみのとき。家にいる時は続けている習慣です。
長くなってしまったので、ひとまず今日はこれまで。