どっちもどっち。……ではないか。
買い物をするために、とある店に訪れた。
訪れた店は3階建て、
各階で販売されている商品が異なる。
目的の品を1階で購入。
特に用はなくても、毎回各階見て回るので、
階段を使って2階へ向かった。
特段狭い訳では無いが、広い訳でもない階段。
すれ違う時、相手にぶつからないよう、
多少気を使う程度の広さだ。
残り数段で2階に到着するという所まで来た
その時、
2階から見知らぬ女子二人組が、横並びで降りてきた。
(あ、やべ、どうしよう……)
いい歳して階段で人と鉢合わせただけで、若干の焦りが生じてしまうのは、年齢に見合うだけの人生経験が無いからだろうか……
何となく、左に寄った。
俺の正面に存在するかたちになった女子は、
一歩横へズレて俺とすれ違った。
その直後、背後から微かに話し声が聞こえた。
「こっちかよ。」
「右側通行教えてあげて。」
(あぁ…そっか、右側通行……)
半笑いのその会話で思いだした社会常識。
そう、俺は右に寄るべきだったのだ。
いい歳してそんな簡単な社会常識さえも身に付いていないことに、恥ずかしさと情けなさが込み上げてきた。
そして、悪い癖がでた。
(いや、そもそも横並びで降りてくる方も悪いだろ。うん。悪いのは俺だけじゃない。今のはどっちもどっちだ。)
こういうところだ。
こうやってすぐ、自分の非を他人の非で上書きしようとするから、いつまで経っても
非が非のままなのだ。
上書きは削除じゃないから、見えなくなるだけで自分の中にずっと残る。
そうやって溜め込んだ非が、俺にはきっと、
沢山ある。
どっちもどっちの時こそ、
見るのは自分だ。
社会常識を思い出させてくれた見知らぬ女子二人組に感謝して、自分を見つめ直そう。
見つめるまでもなく思った。
たいして広くない階段で、
ど真ん中歩いてた俺が、やっぱり一番悪い。
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