煌めきは小さき名探偵により運ばれた
『事実は小説よりも奇なり』
そんなことわざがあるけれど、
少なくとも、自分の人生には、
“小説よりも奇” はおろか、小説やドラマのような煌めきすらも起こったことがない。
多分、この先もそうだろう。
奇なる現象や、ドラマチックな煌めきが巻き起こるのはきっと、自ら動き、何かと関わることができる人間の人生だろう。
“面倒くさい” が、己の感情の最高位にいる自分の人生には、到底訪れることはないだろう。
ただ、煌めきはなくとも、楽しみはある。
子供の頃から、ずっと好きでいつづけている作品がある。
子供の頃、録画したこの作品のアニメを何度も観た。
今では、原作本も全巻揃え、本棚の半分はこの作品の書籍やグッズで埋まっている。
「おし。」
目の前には22個の小さな銀色の袋。
対象書籍購入で特典がもらえるフェアが開催されたのだ。
今回の特典はイラストカード。
種類は全11種。
狙うは、全種コンプ。
ランダムで配布される特典。
全種コンプ出来るかどうかは賭けだ。
1つずつ、袋を開けていく。
出だしは順調。
調子よく種類が増えていく。
10種までは、割とスムーズに引き当てた。
が、開封が進むごとに当然ダブりも出てくる。
こういうのは最後の1つが出ない。
未開封の袋が減るごとに、緊張が増していく。
そして、最後の1枚が出ないまま、
未開封の袋も、最後の1つになった。
「いや、これで出たらかなりドラマチックだぞ」
と、いうことはだ。
ドラマチックとは無縁の自分に、
全種コンプは叶わないということになる。
面倒くさいに負け続けた報いだろうか。
半ば諦めて、でもどうしても捨てきれない一縷の望みを胸に、最後の1つを開けた。
「キターー!!」
自分の身に、まさかこんなドラマチックが巻き起こるとは、
これはまさに、
『事実は小説よりも奇なり』
とまではいかないが、
そうだな、言うなれば……
『事実は時に小説のように煌めく』
なんて言ったところだろうか。