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読書ノート 『ツナグ』

辻村深月さんの『ツナグ』を読みました。この小説は五つの作品から構成されています。
生きた人間が亡くなった人間に会える、亡くなった人間が生きた人間に会えるという一回きりのチャンスを巡る物語となっています。
この再会を叶えるのが、高校生の歩美です。歩美は使者(ツナグ)であり、亡くなった人間と生きた人間を会わせる窓口です。
五つの作品はアイドルとそのファン、母親と息子、親友だった二人、恋人だった二人の再会、そして歩美が祖母から使者の役目を後継する話で成っています。

亡くなってしまったということに対する登場人物たちの心の動きが深く描写されていて、その心を感じながら熱心に行を追ってしまいました。悲しみだけではない、人間がいれば必ずおこる、すれ違いや疑念やわだかまりや不安などの出来事・感情が鮮やかに描かれています。それでも、彼らは再会した後、満足そうにしています。

誰もに再会のチャンスが与えられるわけではありません。使者の方も大きなリスクを抱えながら、この仕事をしています。
偶然にこの機会に恵まれた人たちの物語。読み終わると、会いたかった誰かに会えたような、温かい気持ちになります。

お読みいただき、ありがとうございました。





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なつのそら
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