お題 スナイパーの意外な使い方
「あなたっ! 聞いてるのっ!?」
妻の金切り声が居間に響き渡る。
「聞いてるよ。網戸だろ」
「これだけ虫が入って来るってことは、きっとどこか破けてるのよ。今日中に直してよ。あたしが虫嫌いなの知ってるでしょ」
「破けてるのはどの網戸なの?」
「知らないわよ。探しなさいよ」
おい!! お前は日中も家に居るんだから自分で探して直せよ!! 休みの日くらいゆっくりさせろ!! などと間違っても言わないのが夫婦円満の秘訣だ。俺はリモコンでTVを消しソファから腰を持ち上げた。そのまま鼻息の荒い妻に使用人よろしく微笑み、地下の物置室へ向かった。
「網戸の修繕道具あったかな?」
物置室の扉に手を掛けた時、ある閃きが頭に浮かんだ。
閃きに従い俺は物置室の奥に積んであるダンボールを次々と開けていく。
「確かこの辺に…」
遂に俺はそのダンボールに辿り着いた。ダンボールの中には数千年前、飼育にハマった銀河系。確か太陽系とか言ったっけ? その中のひとつの星から俺は目当ての人間を数人つまみ上げた。
こいつらは俺に従順だ。「声を聞いた」「お告げだ」と、手を合わせ祈りながら喜んで俺の言うことを聞いてくれる。こいつらを家に放ち侵入して来た虫を撃ち落とさせるのだ。
俺は自信満々に妻の顔を覗いたが、どうやらあまり気に入ってないらしい。なにか次の手を考えないと。言われる前に次の手を打つ。これも夫婦円満の秘訣だ。
了 (583字)