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一杯の珈琲
この夏、中1の息子が1週間持病の検査のため入院した。
私も付き添いで一緒に。
小児脳外科だったのだが、息子は普段は元気そのもの
他の子どもたちは脳性麻痺の子どもが多かった。
みんな子どもと一緒に親も付き添いで入院している。
入院1日目、
失礼を承知で言うが、私は「うちの子はまだいい。」と思った。
発作でしばしば倒れることがあっても通常の生活ができている。
意思の疎通もできる。
自分と他の人を区別して考えていた。
自分には関係のないことだと。
次の日の朝、隣から珈琲の豆を挽く音が聞こえてきた。
「いいですね〜。リッチな朝ですね。」と看護師の方。
「クオリティ・オブ・ライフですよ。」とお隣のお父さん。
その子は想像するに、家族が様子を伺って意思疎通ができる
言葉はほとんど発しない子だった。
入院は治療のためというよりも経過観察、定期健診のため。
私はその時にハッとした。
病気が治る=幸せ
だと思っていたけれど、
病気があるまま幸せに暮らすことも出来る。
ということを教えてもらった。
一杯の珈琲でもそれは叶う。
それが分かると、昨日まで区別していた状況が全く違って見え、
「家族のより質の良い幸せを願う」
という点で、病気の大小に関わらず、一緒だと思えた。
それは健康な子の親も同じ。
みんな今のままからスタートして、QOLを追求して生きていくことには
代わりがない。と分かった。
その瞬間涙が溢れてきて、どの親とも同じ気持ちで繋がっていることに心が震えた。
それから私の考え方が少し変わった。
今までは息子の症状を治すことに注力し、
そうではない状況に一喜一憂していたが、
今このままでも十分幸せに生きていくことができる。と思った。
生きていく上で様々な条件があるにせよ、
その分、違う可能性が開かれてくる。
夏の終わり、不意に生まれ変わったら何になりたい?と息子に聞かれた。
「ぼくは生まれ変わっても僕になりたいよ。」と。
「病気も引き受ける?」と聞くと
「それも含めて僕や。」と笑っていた。