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『魔道祖師・脇役列伝』

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『魔道祖師』の脇役にスポットを当てた記事です。アニメや小説を一度見た人向け。現在の連載は「藍思追」。毎週土曜日更新予定です。合間に(水曜日ごろ)考察記事も書いてます。
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#雲深不知処

◉雲深不知処で

 うっかり「含光君みたいな男が好きだ」と言ってしまったために、雲深不知処へ連れてこられる羽目になった魏無羨。  彼はそこで数々の奇妙な藍忘機の姿を発見する。  たとえば、魏無羨がまだ門の前で、中に入りたくないと駄々を捏ねていた時、やって来た藍曦臣が藍忘機にそっと言う。 「珍しくお前が客を連れて帰ってきたかと思ったら、そんなに嬉しそうにして。大事にもてなしなさい」  この時の魏無羨は、まだ藍忘機の微かな表情の変化までは見抜けないので、全く変わらない表情のどの辺りがそうなのかと

◎脇役列伝その1:藍思追(3−2)

(◎脇役列伝その1:藍思追(3−1)の続き)  ここからは第五章「陽陽」。翌朝の場面だ。  藍思追は藍景儀と共に、莫玄羽(魏無羨)を起こしに行った。静室の木の扉を軽く二回叩き、声をかける。 「莫公子? 起きてますか?」 「起きてるけど、こんな朝早くにどうした!?」 「早……早い? でも、もう巳の刻ですよ」  思追は戸惑ったように言った。藍家の人間は皆、卯の刻に起床し、亥の刻に就寝するという非常に規則正しい生活を送っているからだ。起床時間を二時辰も遅れているのに? と。 「ま

◎脇役列伝その1:藍思追(3−1)

 小説一巻第四章「雅騒」は、藍氏の仙府[せんふ]・「雲深不知処[うんしんふちしょ]」の静かに美しい描写から始まる。  その清澄な雰囲気を全て台無しにするのが、山門の前で泣き叫ぶ莫玄羽(魏無羨)だ。  「はいはい! もうやめてください。雲深不知処で騒ぐことを禁ずる、ですから!」と面倒くさそうに言う藍景儀。「泣かせておけばいい。疲れて泣きやんだら、中に引きずってきなさい」と藍忘機は冷徹だ。  「……俺は男が好きなんだ。藍家は美男子だらけだから、我慢できなくなるかもしれないぞ」と