シェア
魏無羨年表の続きを書こうとしているが、過去編がつらすぎて気が滅入ってしまい、なかなか進めることができない。 なので、代わりと言っては何だが、以前から気になっていた魏無羨の前世での最期について、書いてみようと思う。 というのは、このnoteを検索してみるとわかると思うが、「魏無羨は実は江澄に金丹を渡した後、温晁に捕まって乱葬崗に落とされた時点で死んでおり、のちの姿は『鬼』となった姿なのではないか」という考察を書いている方がいて、大いに感心したからだ。 この考察は説得力が
うっかり「含光君みたいな男が好きだ」と言ってしまったために、雲深不知処へ連れてこられる羽目になった魏無羨。 彼はそこで数々の奇妙な藍忘機の姿を発見する。 たとえば、魏無羨がまだ門の前で、中に入りたくないと駄々を捏ねていた時、やって来た藍曦臣が藍忘機にそっと言う。 「珍しくお前が客を連れて帰ってきたかと思ったら、そんなに嬉しそうにして。大事にもてなしなさい」 この時の魏無羨は、まだ藍忘機の微かな表情の変化までは見抜けないので、全く変わらない表情のどの辺りがそうなのかと
(画像は『魔道祖師』前塵編一話より 献舎によって蘇った直後の魏無羨) (◎脇役列伝・番外:莫玄羽(考察ー1)の続き) 莫玄羽は莫家に戻ってきた時に気がふれていた。 その原因に関してはいくつか候補が上がるかもしれないが、私としては「父の死の真相を知った」ことだと思っている。 まず、莫玄羽は父親に呼ばれて金鱗台で修行をすることになったので、この時点で父親つまり金光善[ジン・グアンシャン]が生きていたことは確実だ。そして、献舎によって魏無羨が蘇った後、噂話で金光善が既に亡
(画像は『魔道祖師』前塵編一話より 魏無羨を呼び出そうとする莫玄羽) 魏無羨を献舎で呼び出した莫玄羽。彼のことはほとんど語られていない。 物語冒頭でいきなり死んでしまい、その後も出てこない人物なので、よくわからないというのが誰もの認識だろう。 莫玄羽はどんな人物だったのか、彼に関する少ない記述から考察してみよう。 莫玄羽の祖父は大地主で、「莫家荘」と呼ばれてるのはその持っていた土地一帯のことだろう。母親には姉がおり、これが莫夫人と呼ばれてる莫家の女主人だ。夫は婿養
藍思追の記事を書いていて気づいたこと。 藍忘機の初登場シーンに、彼の琴「忘機」の出す音の描写はあっても、彼自身に関する描写が無い。 これは魏無羨が、彼の琴の音は聞いたが、その姿は見ないままあの場を立ち去ったからだろう。 『魔道祖師』は魏無羨の一人称視点で描かれているので、魏無羨の知らないことは読者も知らない、魏無羨の記憶にあることはその都度説明される、という形式になっている。 「一方その頃」的な形で別の場面を描き、「登場人物はわかっていないが読者は知っている」とい
『魔道祖師』において、魏無羨は「献舎」されてこの世に蘇る。これは術者が自らその身を捧げて何者かを呼び出す術だが、他に「奪舎」と言って、死んだはずの魂が誰かに乗り移ってその身体を奪う術があると書かれている。 中国では、このような呪術ではないが、他人の体を借りて生き返ること、特に死者の魂が別の死者の体に入ってしまうことがあったようで、これを「借屍還魂」と呼んでいる。 『中国妖怪・鬼神図譜』から、これに関する記述を見てみよう。 誤認逮捕ってなんだ? とか、つい突っ込みたく
(画像はアニメ『魔道祖師」羨雲編EDより) 『脇役列伝』は基本、取り上げる人物の行動を順になぞっていく記事だ。なので、それ以外の人物の行動はほとんどを省いて書いている。 だが主人公二人が出てこないと、やはり何か物足りないと感じてしまった。そこで、主にこの二人を中心にした考察記事を書くことにした。『脇役列伝』は毎週土曜日に投稿することにしたので、間の水曜日辺りに上げようか、と。 『脇役列伝』と併せて、お楽しみ頂きたい。 さて今回取り上げるのは、献舎(「舎」は体の意味
(画像は『魔道祖師』前塵編一話より 剣欄を作る藍思追) (『◎脇役列伝その1:藍思追(1−2)』の続き。) 思追が、莫夫人と阿童の二人を同時に手当てすることができず焦っていたその時、阿童が起き上がった。 阿童は左手を上げ、いきなり自分の首を絞め始める。思追は彼の経穴(血液の流れや霊力の経路にあるツボ)を素早く続けて三か所突いたが、阿童の動きは止まらない。藍景儀も彼の左手を首から引き剥がそうとしたが、びくともしなかった。 苦痛を感じさせる恐ろしい表情を浮かべていた阿童
(画像は『魔道祖師』前塵編一話より 藍思追と藍景儀) (『◎脇役列伝その1:藍思追(1−1)』の続き。) そこへ莫玄羽(魏無羨)が何人かの家僕によって引きずられてくる。 その莫玄羽(魏無羨)に向かって、莫夫人が横から突然駆け寄った。手に刃物が握りしめられているのに気づき、思追はそれを叩き落とす。 「莫夫人、ご子息のこの亡骸の様子、血肉と精気がすべて吸い取られていて、どう見ても邪祟の仕業です。これは彼がやったことではないと思います」 だが、莫夫人は興奮していて、声を荒
(画像は『魔道祖師』前塵編一話より 莫玄羽(魏無羨)を掴もうとする莫子淵を止める藍思追) 藍思追[ラン・スージュイ] 「思追」は字。名は「願[ユエン]」。姑蘇[こそ]藍氏の門弟。 物語の中心にいる人物ではないが、彼の「存在」は結末の印象を決定するほど重要な意味を持っている。 登場は物語開始直後から。 莫家荘[モーけそう](莫家の領地と思われる)では、最近大量の「彷屍[ほうし:低級の屍変者の一種]」が出現して問題となっていた。これを聞きつけた仙門の使者が莫家を訪れ