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いまはなき、「エルシド」

 久留米における、いまはなきラブホテルの中で、わたしの心の中に一番残っているのは、「エルシド」でしょうか。

 九州自動車道、久留米インターチェンジ周辺には、ラブホテル街が形成されているのですが、その中で1番の老舗だったのが、「エルシド」でした(正式名称はどうもエルシードらしいが)。
 おそらく1980年代初期に建てられた「エルシド」ですが、古き良きラブホの良さ・・・チープな重厚感あふれる(褒めている)、それは素敵な素敵なラブホテルでした。

古き良きラブホらしいお城風デザイン

 しかし、2000年代ごろには、周りにリニューアルしたホテルが目立ち始め、その頃にはもう、時代に取り残された感じはありました、でもそれがかえって趣深く、今でいう「エモさ」があったと思います。
 ただもう、2010年代に入ってからは、昼間通りかかると、「営業してるのかな・・・?」と心配になってしまうような寂れ具合で、夜になって、ネオンが光っている(確か”エルシド”のどれかの文字が消えている)のを確認して、「ああ、今日も生きてくれている!」と、胸をなでおろす、みたいな。そんな状態が続いていました。
 わたしは、「エルシド」のことを、れっきとした文化遺産だと思っていましたし、できることなら、ずっとずっと、存在していて欲しかったから。

看板もなくなっている

 でも、忘れもしない、2016年。ついに、建物の周りに足場が組まれ・・・サヨナラの日が近づいてきたのでした。

本日休業の文字

 あの時感じた悲しみは、今でもはっきりと思い出せます。ああ、久留米のラブホテルの歴史が1つ幕を降ろすんだな、と。
 でも、おそらく、昔ほどラブホを切実に必要とする若者たちもいなくなってきて、長年の建物を維持するのも大変なことだろうし、「エルシド」君にとっては(好きすぎて君づけ)、ただ部外者であるわたしのような人間に、勝手に悲しまれても困るってこと・・・わかっているんだけれどね、でもとにかく、わたしにとって、何かしらのインスピレーションの源でもあり「そこにあって当たり前」の風景のうちの1つが消え去ってしまうことは、本当に、体を引き裂かれるくらいに悲しかった。本当なんだよ。「エルシド」君。これまでたくさんの人たちに、「愛の空間」(純粋な恋も、後ろめたい恋も、火遊びも・・・)を開いてきてくれた君がいなくなるのは、きっと、久留米にとっても大きな喪失となったと思う。というか、君がいなくなったことで、2016年以降の世界が変わったとか、そんなことがあったかもしれないよ。「エルシド」のある世界と、「エルシド」のなくなった世界・・・との違いだよ。(どんなだよー!)
 いやいや少なくとも、久留米のラブシーンの1つや2つ、3つ、4つ、5つ・・・くらいは変わったかもしれないっておじさんは本気で思ってる。

 とまぁ、そういった具合にわたしは大変思いつめまして、「エルシド」の姿が見られるうちは、と、それから毎日のように、その場に通いました。ほんで、いろんな角度から写真を撮りまくりました。 

 もちろん全体像。

サイドからの全体像




・・・だけでなく、こんな角度からも!!(いったいどこから撮った写真やねん)

でも、遠巻きに見える姿もなくなってしまうよな、って思って

 

 こんなとこからも、こんにちはーーーー!!!!

こんな建物と建物の間に見る「エルシド」も、見られなくなっちゃうわけでしょ

 
 いったい何をやってんだか・・・
 
 我に返ると、いったい何をやってんだか、なんだけれども、わたしの「エルシド」愛は、これにとどまることを知らなかった。(続く)

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