夜凪#8
「ボクの親はさ、ボクに当たってくるしタバコしてるし結構やばいんだよね。最近特に当たり強くてここに来れなかった。でもこれでも、父親がいないから唯一の親なんだ」
そう言って哀しく笑う。
「それに、母さんがボクに当たってくるようになったのはボクが原因だし、自業自得なんだよね」
ボクは可愛いものが好きだ。
でも、それは女の子がする話。
男の子のボクが可愛いものを欲しがるのを、母は嫌がった。
だから今はひっそりと隠れておしゃれしている。
母には悪いと思っているが、これを手放したら、"ボク"がいなくなってしまう気がするから。
自分らしく生きたいから。
手放せない。
「あはは、ほんと、ボクが悪いんだよ」
違う。
そんなことない。
「・・・あなたは、悪くなんてない」
「・・・!!・・・ボクさ、本当は男なの」
「へ?」
男?
「なんでこの世って男でも可愛くしちゃいけないんだろう。・・・ボクが可愛いもの好きになっちゃったから母さんも変わっちゃった。だからこれは、ボクのせい」
だめだ。
「・・・あなたは悪くない。それは瑠衣さんの人生なんだから、好きなように生きればいい。好きなものを好きと言って何が悪い」
「凪・・・」
そうだ、俺に比べたら全然悪くない。
瑠衣はただ好きなものを好きと言っているだけだ。
「・・・さ、話したよ?次は凪の番だ」
瑠衣は話してくれたのだ。
俺も話さないと。
「これから話すこと、気持ち悪くなったらすぐ言ってください」
「・・・?わかった」