夜凪#1
夏のある夜、月が綺麗だった日。
俺はあなたと出会った───。
「はぁ・・・」
先生から模試の結果が返される。
「×××、お前このままいくと留年だぞ?ちゃんと勉強しとけよ?」
「わかってます」
俺は高校に通うごく普通の生徒。
少し変わったところと言えば───、
「失礼しました」
「あ、あいつって・・・」
「あぁ噂になってる奴だろ?」
不登校で、こういった時くらいしか学校に来ないことだ。
こっちの気も知らないで勝手なこと言うなよ。
まぁそうは言ってもこっちもあちらの気持ちなんて知らないが。
「ただいまー」
「おかえり。夕飯できてるよ!」
「うん」
母には本当に感謝だ。
俺が学校に行かなくなってから、詳しい理由を聞いてこない。
俺が言うまで待ってくれている。
「今日はハンバーグだよん♪」
「うまそう」
母はノリのいい人で、周りの人から評判がいい。
それに比べて俺は───。
「ほら、冷めないうちに食べちゃおう!!」
「そだね。いただきます」
ー夜ー
「・・・」
なかなか眠れない。
今まで夜に外に出たことはなかったけど、今日は夜風に当たりたい気持ちだった。
布団から起き上がり、母を起こさないように玄関のドアを開ける。
外に出たはいいものの、どこに行こうか。
「・・・久しぶりに行くか」
家から歩いて3分くらいで着く海に行くことにした。
砂浜には降りず、防波堤に座る。
波の音が気持ちいい。
ぼうっと目の前が霞んでくる。
「おや、今日は先客がいたねぇ」
人の声がしてびっくりして振り向くと、膝くらいまであるパーカーを着た少女がいた。
黒髪を背中の真ん中くらいまで伸ばしている小柄な少女。
「少年、横失礼するよ〜」
「は、はぁ」
俺が答えるより先にもう座っているのだが。
・・・まあいいか。
しばらく2人で海を見つめる。
「・・・よくここに来るんですか?」
「まぁねん」
さすがに何か聞こうと思って聞いてみたが、その後が続かなくなる。
「少年はさ、今日ここに来るの初めて?」
「まぁ、この時間に来るのは初めてですね」
時刻は明け方の4時頃。
地平線を見ていると、だんだんと朝日が登ってきている。
「よし、今日も生きたぁ!!」
「なんすかそれ・・・w」
「んー、なんとなく?w」
少女は立ち上がりポケットに手を突っ込む。
「少年、ボクはこの時間ここにいつも来るからさ、またいつでも来なよ」
「あ、はい」
なんとなく反射的に答えてしまった。
「じゃ〜ね〜」
そう言って少女は立ち去る。
「・・・あ、名前聞くの忘れてたな」