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夜凪#2
今日も足は海へと向かう。
「お、来たな少年」
黒髪の少女、"海"と出会ってからはほぼ毎日のように夜、この海に来ている。
ちなみに海という名前は、自分で言っていた。
『うーん、まぁ仮に"海"とでも呼んでよ』と。
「また君は名前教えてくれないのかい?」
「教える気ないので、なんとなく」
「あっそ〜」
そう言って海は寝転ぶ。
「頭道路飛び出してますけど・・・」
「この時間は誰もいないからいいんだよ」
確かに今は夜で、誰も通っていない。
「学校ちゃんと行ってるかい?」
「・・・行ってないです」
「だろうねw なんとなくわかったw」
それ以上海は追求してこなかった。
「少年、ボクがいなくなったら寂しい?」
その日海は、急にそんなことを聞いてきた。
「・・・ちょっと、寂しいです。こうして話してる時間結構楽しいんで」
「ほう、それはよかった!」
登ってくる朝日に彼女の黒髪が透ける。
「じゃあまたな、少年。学校には行くんだよ〜」
「・・・はい、また。あ、この本おもしろいのでよかったら」
「お、読んでみるわ!」
これがいつもの夜だ。
そして夏が終わる頃。
海は来なくなった───。