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あの日両国に住んでいた君へ

君が住んでいたマンションの部屋は築年数をたくさん重ねたマンションの中のリノベ済みの部屋だった。外観こそ年季が入っているものの、中は綺麗で、さらに君のこだわりが詰まっていた。誰かの好きの塊を見ることは幸せなことだと初めて気づかされたお部屋だった。
いつだったか君が「このマンションでの暮らしが人々の羨望の眼差しの先にあり、最先端であった時代があった」と言っていた。かつての憧れの中に現代の、2023年に生きる私の憧れが詰まっていた。
4階でエレベーターを降りて廊下に出ると、すぐに君の部屋がわかった。お部屋の中で焚いているお香の香りが廊下まで漏れていて君の部屋の前まで案内してくれた。後ろでは夜の隅田川が静かに、しかし強くせせらいでいた。

また良い暮らしを送っていることを心から願います、叶わないけど、ありがとう。

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