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【インドでチャレンジする人を応援する第3弾】インドの学生・起業家との挑戦!インド農村部の課題と向き合う🔬スズキ・イノベーションセンター🔬

インドで新たなプロジェクトに挑むスズキ・イノベーションセンター

今、新たな市場として注目されるインドで、世界中に優秀な人材を輩出する大学として話題を集めているインド工科大学(以下IIT)との連携を先導するスズキイノベーションセンター(以下SIC)。

日本の起業家精神を刺激して、インドにおける挑戦や新境地開拓をサポートするためのオープンイノベーション・プラットフォームを目指して、2022年にIITハイデラバード(以下IITH)主導でスズキ株式会社とともに立ち上げました。

そのSICで、2022年12月から駐在員として赴任し、主に日印相互人材交流プログラムの企画・運営、日印連携に関連するイベントの企画を担当している横井美乃里(よこい みのり)さん。

インド農村部に暮らす人々から、日印の大学・企業経営者、スタートアップ関係者まで幅広い人たちとの交流を通して、日本とインドの連携を深めるさまざまな取り組みにチャレンジしています。

成長するインドと伴走して見届けたい

横井さんは、スズキ株式会社に入社以来ずっとインドに関わる仕事を希望してきました。グジャラート工場設立のサポート、インドでの研修、国内販売店での業務経験などを経て、入社8年目にしてようやくSIC駐在員としてハイデラバードに配属されたと言います。

実は6〜10歳までの間、私は父の仕事の関係で南インドのチェンナイで暮らしていました。当時のインドは立派なショッピングモールもなく、インフラも整備されておらず、不自由で何もない場所だという印象しか残っていませんでした。

しかし、高校・大学時代に友人とインドを訪れ、その度にどんどん変わっていくインドの姿を目の当たりにしました。

インドに来る度にめまぐるしく変化する成長の早さに圧倒され、インドはこれからも成長し続けていくということを肌で感じたと同時に、私も成長するインドに伴走して、見届けたいと思うようになっていきました。

インド駐在員として様々なプロジェクトに関わる中では、成長するインドの裏に潜む多くの課題を目にしてきました。その中で、私はインドの人々が幸せになるため、豊かな暮らしができるようになるための支援をしたいという思いを強くしていきました。

スズキとしての新たな試み、オープンイノベーション創出プラットフォーム

インドでスズキといえば誰もが知るマルチ・スズキ(スズキのインドにおける乗用車生産子会社)。インド参入からの歴史も深く、現在もインド国内四輪市場の41%を占め、シェア率No.1を誇る企業として、インドにおける自動車産業を牽引してきました。

SICは、マルチ・スズキ社の自動車、スズキ・モーターサイクル・インディア社の二輪車事業とは完全に独立し、インドにおける社会課題の解決や地域に根差したプロジェクト活動、IITHとの産学連携、日印両国における人材育成、スタートアップや異業種との協業などを行う、IITHが設置したオープンイノベーション創出のプラットフォームです。

14億人という人口世界一のインドですが、実際には約10億人の人たちがまだ車を買える所得水準に達していないと言われています。その中でも特に、インド農村部に暮らす人々の経済水準はきわめて低く、彼らの生活向上ができるようなビジネスアイディアの立案や、現場に即した社会課題の発掘をして、『社会課題をビジネスで解決する』。そういった体制づくりをすることが、SICの役割のひとつとなっています。


インドに深く根付く課題をみつけて、IITとの連携やデジタルを活用して解決する仕組みを考えていく。そのアイディアの事業化がSICの主な活動のひとつとなっています。

日印の学生やスタートアップを巻き込むプロジェクト

SICが拠点を置くIITHは、国際協力機構(JICA)から技術・財政支援を受けて2008年に設立されました。日本貿易振興機構(JETRO)の支援もうけ、日系企業との交流も多く、インド全土に23校あるIITの中でも、日本とのつながりがもっとも深い大学のひとつです。

SICとIITHは、2009年にスズキがIITHのコンソーシアムに参画して以来のご縁になります。それ以降、日本の各機関との関わりを強め、現在もいくつかのプロジェクトが動き出しています。

IITHの学生との取り組みとしては、日本の歴史や文化への理解を深めてもらうために、SICが週に1回IITH学生に対して行う講義“ジャパンアワー”や、インドの学生に日本やスズキについて知ってもらう短期プログラム“Learn in Nippon Program”(LIN)。また、インドで自分のビジネスアイディアを持った起業家の卵約15名を選定し、外部のメンターを巻き込みながら3か月で彼らを『起業家』として育成するプログラム“Seed Innovation Boot Camp” (SIB)などがあります。


生活においても学業においても、激しい競争の中で生きているインドの学生や若い起業家たちは、とにかく自分の可能性を信じていて、行動力があると横井さんは言います。

どんなやり方でも目標にたどりつくための貪欲さ、そのためのフレキシブルな発想がすごいなと思います。


2022年に実施されたLINは、東京、浜松、京都を9日間で回る短期プログラムで、日本の大学機関、スタートアップエコシステムについて理解を深めるセッション、IITH卒業生など日本に住むインド人との交流会、日印学生とのアイディアソンが開催されました。

日本を知ってもらうLINに対して、『リアルなインド』を知ってもらう短期プログラムが“Learn In Bharat Program”(LIB)です。日本企業、スタートアップ、学生を対象とし、デリー、アーメダバード、ハイデラバード、バンガロールの4都市2,000㎞を10日間で縦断し、インドでビジネスを行うにあたってのSWOT(Strength, Weakness, Opportunity, Threat)を体系的にインプットすることを目的としたプログラムです。


LINとLIBの企画・運営を主導した横井さんは、参加者がそれぞれの国に抱いていた既存イメージをいい意味で塗り替え、深い理解とともに新たな興味を抱いてくれたことに、達成感と可能性を感じました。

インド農村部の課題と向き合うことで日本の若手を育てる

SICでは、人材交流・人材育成関連のプロジェクトの一環として、“SIC Agile Project”(アジャイル・プロジェクト)を実施しています。

このプロジェクトは、スズキの若手社員を対象にインドの農村地域における課題を発掘し、アジャイル式にPDCA(Plan-計画・Do-実行・Check-評価・Action-改善)を回していく短期プログラムです。

スズキの原点・企業哲学でもある“ベンチャースピリット”を今の若い世代に継承させて、人材開発、若手の育成の場として海外での挑戦の場を設けています。課題は、必ずしもモビリティ関連である必要はなく、従業員自身が課題に感じたことをどのように解決していくか、『ソリューション』を創出するプロジェクトとなっています。

最長6ヶ月のインド出張で、これまで農村部における水質センサーの向上や、農村地域に住む中・高生のキャリア形成アプリ開発、農村部における情報格差をなくすためのアプリ開発などを行ってきました。

インドに来る社員は海外で働いた経験のない若手社員が多く、日本との文化・商習慣の違い、インフラが行きとどいていない環境に戸惑いを感じます。その日本とインドの違いを理解してもらいながらサポートをするのが私の役割だと思っています。プロジェクトが終わって日本に戻るころには、みなさんやり切ったという達成感に満ち溢れているように感じます。


インドでは人口の約7割の人々が農村部で暮らしていると言われており、物流、金融、交通、農業など多くの分野で社会的な課題を抱えています。農村部の現状を目にし、さまざまな課題に取り組むプロジェクトに参加してきた横井さんは、勢いに乗るインドのデジタル化の流れをうけて、農村部の医療やファイナンスの課題を解決していきたいと言います。

農村地域の草の根イノベーションプロジェクト

SICでは、企業・団体と連携したイノベーション創出プロジェクトとして、政府の手が行き届かない農村地域における『草の根レベルのイノベーション』GRIPP(Grass Root Innovation Pilot Project)も実施しています。

課題を特定して、彼らがグローバルにスケールアップできるような支援づくりを行っています。例えば、農村地域における落花生の収穫機械の品質向上や、バナナの木の再利用といった活動です。

その他、サプライチェーンプロジェクトも現在進行中です。これは、農村地域と都市部における経済格差をなくすことを目的としています。農村地域では、日用品を購入するために毎日約3時間かけて都市部に買い物へ出かけている方々がいます。それらのアイテムを調査し、都市部に出かけなくても購入できる環境作りを目指し、まずは自動販売機を設置し需要調査を行い、その後、Eコマースプラットフォームを普及できるように開発を進めています。


農村部に入り込んだプロジェクトでは、地元の人たちとの信頼関係の構築なしには、どんなに良いプロジェクトでも先に進めることは困難です。IITHの関連教授に村の村長さんと話をしてもらったり、ローカルの言葉(テルグ語)を話すSICのローカルスタッフを担当にしたり、地元の人たちの生活習慣や文化的な背景を理解した人たちの協力が不可欠です。

インドでは人との繋がりの大切さを強く実感しています。インドの人は、『友達の友達は友達』という感覚があるのか、困っているときには必要な人を紹介してくれたり、本当にいろんな方がサポートをしてくださいます。私は、これまで築き上げてきたあらゆる方面のつながりを大切にして、自分で感じた課題を解決できるように、これからも向き合っていきたいと思っています。

日本とインドのあいだに化学反応をおこさせる

SICは2022年に開設した新しい部隊です。最初は手探りでいろんなことを試して、走りながら企画をしてきました。インドでは日本の常識が通じないことが多々ありますし、毎日何かしらのハプニングが起こりますが、私はそれを楽しんでいます。

インドに駐在する前は、多方面からのインプットが多かったように思います。しかし、SICで働き始めてからはアウトプットすることの重要性を強く感じています。年齢、性別、国籍の違う人たちと関わっていくためには、自分の思考を言語化して、相手に伝える能力と、それがきちんと伝わっているかを確認することがとても大切だと思います。


インドを希望してインドにやってきた横井さんは、いつか任期を終えて日本に戻ったとしても、やはりインドに関わる仕事をし続けていきたいと言います。

日本とインドは、お互いの良さを組み合わせることで必ずいいプロダクトが生まれると信じています。私は、その日本とインドの間に化学反応をおこさせる役割を担っていけたらと思っています。

インドでは、国の急成長の影にまだまだ多くの社会課題がひそんでいます。インド国内では若者たちを中心にスタートアップが勢いをつけ、SICのように社会課題をビジネスとして解決していく流れが加速しています。今まさに社会が大きく動いていくインド。

ココカラでは、そんなインドでチャレンジする人、企業を応援しています。


執筆者:Mariko Hanaoka

バングラデッシュ・ダッカを経て、現在インド・タミルナドゥ州在住。2児の母。趣味は写真、絵、ウクレレ、ギター。心のバイブルは、写真家/星野道夫氏の著書たち。最近、社会課題に取り組む人たちに興味あり。

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