
もしかしたら、「敵か味方か」だけではわからないのかもしれない話
未来を考えるために 第五回
今回は、ヒトの単純に考えたがる事例の
一つとして、「敵か味方か」の二分法に
ついて考えてみようと思います。題材は、
わかりやすそうな時事ネタとして北朝鮮で
やってみます。
面倒なネタなので、先にいくつかお断りを
入れます。
・本来「朝鮮民主主義人民共和国」と
書くべきだとは思いますが、表記は全て
「北朝鮮」で統一します。理由は
「長いから」です。読みやすさを
優先させてもらいます。
・特に北朝鮮を擁護したり断罪したりする
意図はありません。思考実験と情報分析の
一例として、身近に材料があったから
使ってみただけです。
・よって、リアルの北朝鮮がこのようで
あるかどうかは不明です。
お断りをしたところで、本編へ行って
みましょう。
1.立地
他でも書かれていることの繰り返しに
なるので手短にします。北朝鮮は、ロシアと
中国と韓国に陸続きで隣接しています。
韓国にはアメリカ軍が駐留していますから、
三つの大国の緩衝地帯としてあるような
ものです。
大国に囲まれた小国は、大国同士の大戦を
防ぐため簡単には潰されません(どこかが
一方的に潰せば他の大国に大義名分を
与えてしまう)。しかし、互いに牽制の
隙を突いて少しずつ削っていこうとする
圧力が常にかかってくるであろうことは
想像に難くありません。
まずはこの、「地続きで大国に隣接し、
しかも囲まれている」ということを抑えて
おきましょう。
2.ミサイル実験について
北朝鮮は、ミサイル実験を主に日本海に
向けて行なっています。もしもこれを
別の方向へ行なったらどうなるでしょう?
・北東から北西方向にする
→ロシア軍が攻めてくる
→長く見積もっても数年以内に北朝鮮が
消滅する。
・北西から南西方向にする
→「ロシア軍が」が「中国軍が」に
変わるだけで以下同文。
・南にする
→同様に「ロシア軍が」が「韓国軍+
アメリカ軍が」に変わるだけです。
つまり、ミサイル実験をするのなら、
方向は限られるしかないのです。
3.本当に敵と味方だけなのか
「ならば、ミサイル実験なんてしなければ
いいんじゃない?」
そう思う方も多いでしょうけど、1.で
挙げた立地がそれを許してはくれません。
ただの弱小国でしかないのなら、互いに
文句の出ない程度に少しずつ削り取られて
しまいます。
さて、この条件下で、北朝鮮がミサイルで
牽制したいのはどこになるでしょう?
当然ですが、米・中・露の三国のように
思われます。
「中国とロシアは北朝鮮の味方じゃ
ないの?」
確かに中国とロシアは北朝鮮を支援して
います。ですが同時に、他の大国に取られる
くらいなら自国が併呑しようとも思って
います。当然です。
支援してくれてはいますが、そんな相手を
「味方」と呼んで安心しても大丈夫
でしょうか? もちろん大丈夫なはずは
ありません。
つまり、北朝鮮のミサイル実験は、
表向きは対アメリカで、実際にそういう面も
ありますが、暗に「いざとなったら向きを
変えて西(北京)や北西(モスクワ)へ
打ち込むからな」という含みもある、と
みなしたらいいように思われます。
まあ、そんなことは関係なしに
宇宙開発による一発大逆転を狙っているの
かもしれませんけど。
4.おわりに
ここまでのことを踏まえた上で、以下の
ようなことを考えてみたらいいのでは
ないかと思います。
a.北朝鮮は、いきなり日本にミサイルを
打ち込んできたり、攻め込んできそうな、
「何をしてくるかわからない国」なのか?
b.もしも国と国の関係というのが
このようであるならば、日本と他国間、
あるいは他国同士についてはどうなのか?
c.はたして、「敵」と「味方」は簡単に
分けられるようなものなのか?
筆者は人口論者ですから、日本の
対近隣国感情の悪化は、自国の人口増加に
起因しているところが大きいと思って
います。前回書きましたが、分散期の
思想です。日本は、北朝鮮はもちろん、
韓国や中国やロシアよりも早く成長
(=人口増加)しましたから、早く限界に
達し、分散期の思想を持つようになったと
考えられます。
もちろん、その後韓国も中国もロシアも
成長しましたし、それぞれ内圧が高まって
ますので、現在日本へ染み出してくる危険を
感じるのは当然というところもあります。
でも、その染み出してくる勢力に、
大して成長してなさそうな北朝鮮が
入るのかについては、疑問に思います。
国力や政治体制の面から人口増加率の
悪そうな北朝鮮は、むしろ米(というより
韓国と日本)・中・露の人口増加により
攻め込まれる危険性の方が高いのでは
ないか、というのが著者の見立てです。
人口論的に、北朝鮮は、内圧が低くて外圧が
高いから本気で防衛の必要に迫られているの
ではないか、ということです。
そう考えると、拉致問題など日朝の外交に
おいて、彼我に温度差があることの説明にも
なります。向こうにとっては米・中・露が
第一で日本の優先度は低いということです。
蛇足ですが、日本が少子化を起こして
いなければ、西暦2000~2010年台に戦争を
始めていた可能性も結構あったように、
筆者には思われます。少子化を起こして
いてさえ、あれだけ空気が悪くなって
いったのですから。
そうなっていたら筆者などは前線に
送られて今ごろとっくに死んでいたこと
でしょう…とどんどん違う話になって
しまいそうなので、ここまでにします。
主な参考文献
参考文献は特にありません。
・歴史上、大国に挟まれた小国が
どうなったか
・飛び道具が発達した現代でも
同じことが言えるのか
・外交史上、「敵か味方か」は単純に
分けられることばかりだったのか
を組み合わせた、ただの思考実験です。
次回は、軽そうな話題から重めの話を
しようと思います。
『寅さんとルパンと氷河期と』
です。