リンクスランドをめぐる冒険Vol.47 石積みの橋とゴルフコース ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブ Part.1
65歳ライターのスコットランド・ゴルフ1人旅も早、中盤を過ぎて残るは10日余り。今回、プレーしたのはパークランド形式のダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブ。最初こそ少々の落胆はあったものの、終わってみればここも忘れがたいゴルフコースとなった。
1枚の写真に惹かれて
橋が見たかった。
…いや、違うな。
正確には、ゴルフコースに架かる橋。それも石積みのアーチ橋。
石積みのアーチ橋ならいくらでも見ているし、スコットランドらしさを求めるなら北へ向かう途中、グレンフィナン橋に寄っている。
川奈の大島コースに架かる吊り橋とか、日本のゴルフコースにある橋も悪くないのだが、そうじゃない。
コースを跨ぐようにして架かり、渡るのではなく、巨大な石積みの橋を袂から見上げたいのだ。
自然と人工建造物の異質同士が組み合った時の調和、とかを求めているのではない。なんというか、単純にゴルフコースで巨大な人工物を眺めた時、どんな気分になるだろう?と思っただけ。
だから石積みの橋じゃなくてもいいのだけれど、やはりスコットランドらしい歴史感が欲しい。日本の河川敷コースに架かるコンクリートと鋼鉄の高架橋も下から眺めればなかなかの迫力だが、それをスコットランドで眺めたいわけじゃない。
きっかけは1枚の写真。
次のコースを探そうと例によってGoogle Mapで調べたところ、ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブ(Duff House Royal Golf Club)が目に止まった。
ゴルフコースに石積みのアーチ橋…。
見た目もなんだか古そうだ。
今までスコットランドのコースを回った中でも、いや、日本のコースでさえ、見たことのない、異質な光景だった。
これを実際に見た時、どんな感情が起きるのだろう?
しかも、コースの改修にはあの、アリスター・マッケンジー博士が携わっている(マッケンジー博士に関してはVol.46を参照のこと)。
私は迷わず、ブッキングのボタンをポチっと押した。
橋は…どこだ?!
平日の朝、ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブに着くと駐車場はすでにいっぱいだった。
ロイヤルワラント、つまり英国王室御用達の称号を持つコースの中では比較的安いグリーンフィ(£70)だが、それでも私が回ってきたローカルコースの中では高い方だ。
その分、エントランスやクラブハウスはちょっと気品ある作り。
古い駅舎を改装したクラブハウスや木造の質素なスターターハウスのローカルコースばかり回ってきた(これはこれで趣きはある)私としては、少しばかり気後れする。
ただし、プロショップのスターターを仕切るスタッフは他と変わらず、いたって気さくで、私が行くとすぐに確認を取ってくれてスタート時間通り、きっちりと1人でスタートできた。
ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブはスコットランドの北西に位置し、左右にバンフとマグダフという、スコットランドでは中規模の町がある。
全長はイエローティで5,931ヤード、Par68。コースはアップダウンがなく、ほぼフラット。海からは近いがリンクス特有の固い砂丘ではなく、コース脇に流れるデブロン川の河川敷というのが、その理由だろう。
私の前と、その前の組は女性4人。
スタートホールから周囲を見渡しても女性や高齢者のプレーヤーを目にする。性別、年齢差なく楽しめるコースであることが、平日でも駐車場がいっぱいになる要因であり、それこそがマッケンジー博士のコース理念だといえるだろう。
フェアウェイは広くラフも短い。これなら多少曲がってもボールがなくなることはない。ホール間をセパレートしている樹木の下でさえ短く刈り込まれており、グリーンは芝目が詰まっていてボールがよく転がる。
とてもきれいなコースだ。
スタート時は晴天だったこともあって、樹々や芝の緑が美しく映えていた。
…が、橋は?
1番のティーイングエリアに立つと、左側に小さく石積みのアーチ橋が見えた。
…もしかして、あれ?
私がこのコースでもっとも見たかった、コース内にある石積みの橋に対する興味は、たった1ホール目で失われた。
地図を、あるいは画像をもう少し丹念に見れば落胆もしなかっただろう。
デブロン川にかかるバンフ橋(Banff Bridge)はコースの外、1番と17番で使うダブルグリーンよりかなり離れた海側にかかっていた。
しかも、意外と低い。
これではコースの中に組み込むのは無理だ。
もう一度、公式サイトの画像を見て欲しい。
人物がはっきり映って橋がぼやけている。
使っているレンズはたぶん、300〜400mmの望遠。
背景との遠近感をなくす圧縮効果で後方の橋が大きく見えていた、というわけ。
ホントに写真撮っていたのか、俺。
というような勘違い。
もちろん、ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・コースが悪いのではない。
私が迂闊だっただけだ。
私は少々、がっかりしながらティーショットを放った。
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