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リンクスランドをめぐる冒険Vol.50 穴場的な東海岸のリンクスコース ストーンヘブン・ゴルフ・クラブ Part.1

前回のあらすじ
65歳ライターのスコットランド・ゴルフ1人旅は後半に突入。前回はパークランドでも気品を感じさせるダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブでプレー。途中、前組の御婦人方の好意でスルーさせてもらえるなど十分に満足できたコースだった。

名門コースが続く東海岸の中で・・・

旅の残り日数もあと10日ほど。
そのうち2日はセント・アンドリュースに当てるし、1日はスコティッシュ・オープンを観る予定。そうなるとスコットランドの東海岸に滞在できるのは7日、移動を考えるとあと4〜5コース程度しか回れない。

東海岸はスコットランドの中でも有名なリンクスコースが多く点在するところだ。
クルードン・ベイ、トランプ・インターナショナル、ロイヤル・アバディーンにカーヌスティなどなど。
これらも回ってみたいが、なにせ高い。1つのコースのグリーンフィーで3〜4ヶ所のローカルコースを回れる。

世界的に有名ではないけれど、リンクスコースもあることはある。
インベラロッキー・ゴルフ・クラブやマーカー・リンクス・ゴルフ・クラブなどなど。公式サイトを見ると東海岸の有名なコースに劣らない景観だ。
それだけに高い。
だいたい£120〜£170。

いっそのことエディンバラまで南下してパークランド・コースを回るか、さらに東へ向かってゴルフ作家で有名な夏坂健氏が絶賛したガレイン・ゴルフ・クラブに行くのもいいな、なんて考えたりした。

で、宿泊していたエルギン(Elgin)の町からエディンバラのルートを探っていた時、東海岸沿いのほぼ中央、ストーンヘブン(Stonehaven)という町の近くに、ダノター城(Dunnottar Castle)を見つけた。
スコットランドの歴史を語る上で欠かせない存在だ。
英雄、ウィリアム・ウォレスが籠城していたイングランド軍を撃退したとか、反国王運動のホイッグ派男女167名が監禁拷問を受けたとか、紆余曲折、波乱万丈の歴史を持つ。
世界最古の女性ゴルファー、メアリー王女も訪れていることが記録に残っている(もっとも、メアリー王女が最古のわけではなく、あくまで記述上のこと。実際は名もなき女性たちがメアリー王女よりも前にゴルフを楽しんでいた)。

そういえばスコットランドに来て観光らしいことはまったくしてないな、と思い、ここの城ぐらいは見ておこうかな、なんてGoogle Mapを拡大して周辺を確認したら、あった。ゴルフコースが。

ストーンヘブン・ゴルフ・クラブ(Stonehaven Golf Club)。
公式サイトを見るとYouTubeの動画がある。

え?…なんかリンクスなのに芝付きがいいし、しかも海に突出しているグリーンあるじゃん…おっ!すごい谷越え…んっ?…コースそばに列車走ってる?…ってことは橋も?
ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブで唯一、満足できなかったコース内で橋を見るという欲求、ここで得られるかもしれない、などと思いつつ逸る気持ちでビジターフィーを調べる。

平日、£33。

…マジ?
なんか隠してることない?

いいや。このグリーンフィだったら隠していることあっても許す。
私はすぐにブッキングした。

ストーンヘブン・ゴルフ・クラブ公式サイトから抜粋

手引にするか、それとも電動にするか?

ストーンヘブン・ゴルフ・クラブはストーンヘブンの町から1Kmほどの距離。この町に宿を取り、すぐにコースへ向かった。
クラブハウスはコースを見下ろす丘の上。駐車場は細長く、道幅も狭い。同じリンクスでも、ここは平坦な砂丘ではなく海に向かった起伏の土壌に作られたコースだ。
だからコースの海側は断崖絶壁。
一般的なリンクスコースは砂浜や磯浜から続く固い砂丘にコースを作る。
したがって、厳密に言うとここはリンクスコースではない。
日本にある海沿いのコース、たとえば川奈ホテルゴルフコースなどと似た土壌だろう。ここの芝がパークランド・コースのように青いのは、たぶんリンクスの固い砂丘との土壌の違いだ。
ただ、平坦な砂丘では海の景色もフラットになるが、ここは遠くまで海が見える。
なんでもかんでもリンクスコースでプレーしたいわけではない。
私はこのコースを選んだことに満足しながらクラブハウスに向かった。

左がクラブハウス。ここはまだ傾斜が緩やかな方。動画を貼り合わせたのでちょっと左右色違い。

クラブハウス内にはいくつものトロフィーが飾られたショーケースがあり、それからパブ・レストランを兼ねたラウンジがあった。スターターハウスらしきところもなければプロショップもない。
忙しくパブの接客している大柄な女性スタッフに尋ねると、彼女はレジも兼ねたカウンターに入り、ディスプレイで私の予約を確認した。
「Mr.Kanekoね。予約確認できたわよ。すぐにコースへ出る?」
もちろん、と答えた。
「トロリーはどうする?£5の手引きと£15の電動があるけれど?」
£10は私の晩飯代に近い。ちょっと考えてから彼女に質問した。
「おすすめはどちらですか?」
今度は一瞬、彼女が考えた。
「そーねえ、意外とアップダウンがあるから電動の方がいいんじゃないかしら?」
私は初めてスコットランドでプレーしたデュレーター・ゴルフ・クラブ(Vol.8を参照)を思い出した。あの時、電動トロリーがあったらどれほどラクだっただろうか?
物忘れが激しい私だって学習するのだ。
「では、電動で」
トロリーの支払いを済ませると、彼女は私に笑顔を向け「エンジョイ!」と言って送り出してくれた。
クラブハウス下にある電動トロリーにキャディバッグを乗せていた時、まだ若そう(あくまで私から見て)な女性がちょうど18ホールを終えて上がってきた。
1人の女性は挨拶もそこそこにベンチへ腰を下ろすと両足を投げ出し、荒い息をしていた。投げ出した足元には手引きカートから転がり落ちたキャディバッグがあった。

なるほど。電動トロリー、正解。

私は電動トロリーのスイッチを入れ、1番ホールに向かった。

こいつが噂の電動トロリー。坂道でもスイスイ、両手を離してもグイグイ。ただし、ずっと両手離しをしているといつの間にかあらぬ方向に行って取り返しのつかないことになるから要注意。

Play Will Continue!









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