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フリアン監督に捧ぐ

そうか。もうフリアンは奈良クラブの監督じゃないんや。
奈良クラブを応援しだしたのは2022年の終盤からだから、彼がいない奈良クラブがまだ想像できない。
週末にロートフィールドで痛切に感じるんだろうな。

JFLで小気味よくボールを繋ぎ、試合を支配するバルサのようなサッカースタイルを観て。そして監督がカタルーニャ人だと知って胸が踊ったな。
スポーツ不毛の地だと思っていた奈良に、バルサのようなサッカーを根付かせようとしている濵田社長の野心をピッチで表現しようとしているカタルーニャ人の若き指揮官はその佇まいがカッコよくてフォトジェニック。J3に上がった2023年は快進撃と共に日本のサッカー界で注目を集めた。

若いけれど、理想と現実とをバランスよく見極める事ができ、選手起用は選手の元所属チームとの対戦ではモチベーションを期待して出場させるなど選手のメンタル面も細やかに見れるコーチ。
前半うまくいかなくても、ハーフタイムでの修正や選手交代で即座に改善する手腕には柔軟性と安心感があった。

今季は期待していた選手の移籍や怪我などで出鼻をくじかれたのかもしれない。
なかなかクラブの調子があがらず、フリアンの采配も表情も迷いが見られるようになった。特に最後のニ試合では、選手起用や采配も明らかに後手を踏んでしまっていて、表情も固かった。すでに成績次第での解任の話はあったのかもしれない。

濵田社長と二人三脚で強化策を考え、スカッドを構成し、今の奈良クラブを創り上げたフリアン監督。それをシーズン途中解任とせざるを得なかった濵田社長も苦渋の決断だったろう。

これはわたしの想像だが、昨季まではフリアン初年度から守備戦術面をみっちり叩き込まれ意識やプレイを再構成された選手がある程度残っていたが、今季はそういった選手が少なくなってしまった事が、今年チームがチグハグしてしまった遠因かもと感じている。
特にディフェンスの個人・チーム戦術面において、日本とスペインなどヨーロッパのそれとは根底に流れる文化的なところからベースがあまりに違う。だからフリアンは奈良クラブの監督に就任してからの一年は、ほぼ守備戦術の浸透に心血を注いでいたと都並選手が語っていたYouTube動画を見た。そういったJFLの時にはできていた徹底が、Jリーグの過密日程の中では出来なかった。
Jリーグに上がってからの加入選手はそういった理由から、奈良クラブの戦い方に完全にアジャストする事はできず、試合の中でつかんでいくしかない。それが綻びのひとつとなったのかもしれない。
現に新しく加入してきた選手。特にDFとMFは奈良クラブの戦術にフィットするのに時間が掛かり加入後しばらくは苦戦することが多い。
勿論、サッカーIQが高かったり、そもそもの相性が良くすぐに馴染める選手もいるし、プロ選手として加入したチームの監督の戦術に合わせていくのは当然なのだが、このフィット感は頭で考えてから動くようなレベルではなく、カラダが反射的に自然と動くくらいのレベルで他の選手と合わなければいけないのだから、中々にハードルは高いのだ。
そして外国人コーチにはそこに培ってきた文化や考え方の違いや言葉の違いがある。通訳を介しての言葉はその伝わり方も違うものだ。
これは決して「だからダメだったんだ。」と言いたい訳ではなく、そんな難しい事にチャレンジする姿勢と、実際に結果を残しつつあったフリアン奈良に大いなる夢とロマンを感じていたという話。そして物事には魅力と隣り合わせで危険が存在しているという事なのだ。

ただ、今季この部分で少し大きくなった現実との小さな剥離をフリアンやコーチ、選手達は、なんとかそれをカバーしようと奔走していたが、残念ながら前述のような不運もあり、色々な事が連鎖的に悪い流れになってしまったように感じている。
こうなると、正直どれだけ優秀なリーダーでも打開は難しくなる。
今治戦で画面に映ったフリアンの表情を見て、フリアンも大きく自信を喪失しかけていると感じた。

奈良クラブがJリーグに留まる為にと、今。フリアンと袖を分つ決断はとてもとても寂しく悲しいけれど、両者の今後の為には仕方ない事ではなかったかなと思いたい。(まだまだそう簡単には思えないと心は暴れているけれど)
これが将来、お互いにとっての良い分岐点となったと言えるようになると信じたい。

そして、これは言っておきたい。
フリアンと歩んだ奈良クラブの3年半の旅は本当に素晴らしいものだったと。今回のピリオドを打つ状況だけは少し苦しいものと今は感じるのだけれど、これは奈良クラブがこれから大きくジャンプする為に屈んだ状態なだけなのだ。
ここまでよちよち歩きの奈良クラブに手を添えて支えてくれてありがとう!なのだ。

フリアンはまだまだ若く野心溢れる青年監督だ。
こういった苦境も糧にして、さらに老獪にしたたかに強さを身につけ、人心掌握の術を手に入れて、更なる高いステージで活躍して欲しい。
そして世界的に名を馳せた名監督になったところで、奈良クラブをJ1優勝やACLチャンピオンへと導いてはくれまいか。いささか勝手すぎるお願いではあるけれど。

フリアン・マリン・バサロに捧ぐ。
貴方が奈良クラブをJリーグに引き上げた功績は我々の心の中で決して色褪せなく残り続ける。
貴方の90°のお辞儀と共に。

大好きだよ。
貴方の優しい笑顔と、シュッとした佇まいが。
沢山の素晴らしいフットボールの時間を本当にありがとう。感謝してもしつくせないくらい。

今は貴方のこれから先の前途揚々の未来にこれからに幸多からんことを祈りたい。

Molta sort i ens veiem de nou.

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