
自由保育と設定保育
多くの幼稚園において、保育は「自由保育」と「設定保育」で構成されています。今回は、この2つの保育形態についてつぶやいていこうと思います。
自由保育とは・・・
まずは言葉の定義を見てみましょう。
自由保育ということばは、子どもの自由な活動を尊重するという保育理念に基づく保育である。
ん~・・・何だかちょっと分かりにくいでしょうか。どちらかというとこっちの方がここで言う「自由保育」に近いかも。
自由遊びということばは、・・・(中略)・・・子どもが自主的、主体的に活動に取り組み、さまざまな経験をすることによって心情、意欲、態度が培われると考える時である。その場合には子どもが興味関心をもった活動を選択し、自発的に取り組み展開していく遊びをいう。
こちらは「自由遊び」の説明なのですが、どちらにしても自由保育とは、幼児が自発的に活動を選択し、取り組み、展開していく保育と言えます。
次の写真を見てください。

幼児たちが運動場に水を撒いて泥んこを作っています。一方、その後ろでは、ブランコで遊んだり、砂場で遊んだりしている幼児も見えます。これが自由保育の状態です。もっとも、幼児たちは「自由保育」なんて言葉は知りませんが、自分なり(自分たちなり)に、活動を選択して取り組んでいます。
この状態を、「ただ遊んでいるだけ」、「放任保育」などと言われることがありますが、そうではありません。以前つぶやいたように、カリキュラムに沿って教師が行う「環境構成」と「援助」によって、自発的に選択するようにしむけられています(笑)。
自由保育の「自由」は、「好き勝手」という意味ではなくて、「自由に選択している(風に思わされている)」という意味合いです。
設定保育とは・・・
一方、設定保育とはどんなものでしょう?定義はこんな感じです。
一般的には、保育者が一定の指導目標をもって子どもの活動を計画し、設定して行う保育の方法である。幼児の興味や関心に基づく自発的な活動だけでは、活動にかたよりができたり、質の高いものに発展していく可能性が阻まれるために、保育者が一定の指導意図をもって、さまざまな活動を幼児に経験させる必要があるという考えに基づいている。
あれ?おかしいぞ?と思いませんでしたか?そうなんです。設定保育では、より鮮明に「させる」という意味合いが強調されています。それって「遊び(=幼児の自発的な活動)」なの?って思っちゃいますよね。
次の写真は、設定保育の様子です。

幼児たちが、空き箱や紙皿などの廃材を使って、時計を作って遊んでいる様子です。
この活動は、「はさみやボンドを使って立体的な制作を楽しんでほしい」、「制作を通して時計に親しみをもってほしい」というカリキュラムや教師の意図のもと行われていますが、自由保育だけでは達成できません。幼児の自発性に任せてばかりでは、「今日は時計を作って立体的な制作を楽しもう」とはならないからです。他にも、はさみやボンドなどの使い方は、最初にそれを教えてもらわないと、「じゃあそれを使って遊ぼう」とはならないでしょう。
そのように考えたとき、教師は設定保育で幼児に制作活動をさせます。とは言え、その活動を幼児が自発的に行いたくなるように様々な「環境構成」と「援助」を欠かしません。見本を作って幼児の「やってみたい!」、「作ってみたい!」を引き出し、そのための手順や技術を伝えていきます。教師の意図がより鮮明に強調されていますが、設定保育でもやはり幼児は遊んでいるのです。
厳密に言えば、「自由保育」も教師が意図的に準備した「設定保育」と言うこともできますが、より教師の意図が強調され、また(クラス単位など)「一斉保育」の形態で行われるものが一般的に幼稚園で「設定保育」と言われるものです。
引用にもありますが、設定保育で行った活動は、自由保育で行われ、発展していきます。例えば、ハサミの使い方が分かって自分なりの制作をしたり、鬼ごっこのルールが分かって友達と誘い合って行ったりします。
「自由保育」と「設定保育」はタイヤの両輪のようなもので、双方をバランスよく用いて、幼児を(カリキュラムに沿って)育てていくことが重要です。教師の力量が求められるところでもあります。