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ダンゴムシしか勝たん
ダンゴムシ・・・これほど幼児教育に最適な生き物がいるでしょうか?
「ムシ」と言いながら、飛ばない・刺さない・速くないの3拍子が揃っているので、虫に抵抗がある子供にとっても「怖くない」につながりやすく、虫を捕まえる、親しむにはもってこいの生き物です。
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そもそも『幼稚園教育要領』においては、領域「環境」の中で、幼児と生き物の関りについてその重要性が示されています。
身近な動植物に親しみをもって接し、生命の尊さに気付き、いたわったり、大切にしたりする。
このことを踏まえ、幼稚園の教育活動の中では、様々な生き物を飼育することがあります。飼育活動を通して、その生き物の生態を詳しく知ったり、命を大切にする気持ちをもったりしてほしい、と考えているからです。
そんな飼育の対象として、最も身近で、初歩的で、多くの園で選ばれるのがダンゴムシでしょう。園内でもお家の近所でも、探せばいろいろな場所に生息していますし、前述の3拍子が揃っています。飼育方法も容易で、土と隠れ場所を用意して、エサとなる落ち葉を入れ、ときどき霧吹きをするだけです。飛ばないのでふたすらいりません(笑)。
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ふたがいらないので、大きなケースで育てると大人数でのぞき込むことができる。
脚が多いので、最初は「気持ち悪い」と感じる子もいるようですが、手の平に乗せて歩き回らせると、「くすぐったいね!」とすぐに仲よくなれます。そして何といっても、名前の由来となっている“触ると丸くなる”というシステム!身を守るためとはいえ、捕まえてくれ、転がしてくれ、と言っているようなもの(゚Д゚;) まさに子供たちの遊び相手(=教材)になってくれるための生き物(笑)。子供たちも夢中になって関わります。
ダンゴムシの意外な生態
そんなダンゴムシの生態、皆様どれほどご存知でしょうか?いくつか紹介いたしましょう。
★脚の数★
14本あります。よく観察してほしいので、子供たちにはそう簡単に正解を教えません(笑)。虫眼鏡を準備すると、夢中になって観察します。
★オスとメスの見分け方★
背中に黄色っぽい斑点がある方がメスです。卵を抱えていることもあるので、それを見たい子は、ちゃんと見分けてメスだけひっくり返します。
★出産★
メスがお腹に抱えている卵から、小さい小さいダンゴムシが大量に生まれてきます。小さくてもちゃんとダンゴムシの形をしていて、丸くなります。
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★食べ物★
落ち葉の他にも、野菜の切れっ端や段ボール、新聞紙などいろいろな物を食べます。中でも石やコンクリートは、殻を維持するために必須の食べ物で、飼育するときは一緒に入れておく必要があります。
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本人曰く、「僕が好きだからダンゴムシも食べるよ」らしい。
写真では分かりにくいが、周囲のダンゴムシは溶け出したゼリーの汁をすすっている。
★似てるけど違う★
丸くなれないワラジムシは、似ているけれど別の生き物です。4歳児あたりだとそれが分かること分からない子がいて、ワラジムシを無理やり丸めようとしてもめてしまうことも(笑)。また、青や紫、赤や黄色のダンゴムシもいるそうです。
ダンゴムシ会議
夏休みを前に、子供たちと「ダンゴムシ会議」を開きます。1学期の間お世話をしてきたダンゴムシ、夏休み中はどうするか、という会議です。
「先生がお世話しといてよ~」
「でも捕まえてきたの○○君と、▲▲君と、☆☆ちゃんたちやん」
「みんな捕まえたやん」
「夏休みも(お世話しに)来る!」
そもそも“夏休み”自体が初めてで、イメージが湧かない子もいる中で、でもしばらくするとこんな意見が出てきます。
「逃がしてあげたら?」
最初は反対する子もいますが、これまでも死なせる度にお墓を作ってお別れをしてきた子供たち。そうなってしまうよりは、とみんなの気持ちがまとまります。
幼児教育的にはここまでが(お別れをするまでが)1つの飼育活動。命に対して責任をもつことにもつながります。
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最近は、「虫捕り」の経験がない子が多く、幼稚園に入って初めて、の子ばかりです。そんな子にも、もちろん虫に慣れた子にも、見どころがいっぱいあって、飽きずに親しめるダンゴムシ、生き物の中では最強クラスの教材だと思います!!