ルアー用トリプルフック ~審決取消訴訟~
平成14年(行ケ)第239号 特許無効審決取消請求事件
原告:O社
被告:G社
原告O社は「ルアー用トリプルフック」の特許(特許第2584721号)を持っていたところ、被告G社は特許の無効を求めて特許庁に審判を請求しました。
被告G社の言い分は、原告の特許は以前から使われている針と同じであり、すでに世に知られた発明(公知発明)として特許が無効であるというものでした。
特許庁はこれを受け入れ、原告の特許を無効としました。
原告O社はこれを不服として、無効の判断(審決)の取消を求めて提訴しました(審決取消訴訟)。
原告の特許発明は、ルアーにつけるトリプルフックで、3本の針のうち1本の曲がる方向がラインを通すアイ部分と同じ方向(平行)になっているというものでした。
これによって、水中でルアーが安定した動きをし、フックがルアーの一部となるような動きができるそうです。
ところが、被告G社は引用発明(公知であることの証拠になる発明)を提出し、原告の特許のトリプルフックはすでに世に広く知られた発明であるから特許は無効であると主張しました。
引用発明は、ボラの掛け釣り用の掛け針でした。ボラの掛け釣りとは、疑似餌を用いてボラを誘い、集まったボラに掛け針をひっかけて釣る釣法です。
原告O社は、原告の発明はルアー用であり、引用発明はボラ掛け針であるから両発明は同一でないと主張しました。
しかし、裁判所は、トリプルフックをどのようなルアーと組み合わせるか、また、どのようにルアーに取り付けるかについて特許発明の中に記載がないため、ボラ掛け針と形状が同じであればそれは同じ発明であるとして、原告の主張を退け、特許を無効としました。
しかも最後に付け加えて、無効審判手続きの中で、ボラ掛け針を本件発明から排除したり、トリプルフックを取り付けるルアーの種類、取り付け方法を明記することで無効を回避することができたのでは、という意見までついていました。
トリプルフックはルアーにかかせないものですので、ここまでの争いになってしまったのは致し方ないかもしれません。
特許をもっていても無効を主張されることもあり、適切に訂正をしなければ無効になってしまうという判例でした。
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