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「名前は」

取調室に刑事の大声が響き渡った。

「来澤(くるさわ)、来澤恋歌」

まだあどけなさの残るお下げ髪の少女は、
消え入るような声で言葉を発した。
「なんでここに呼ばれたのかわかってるね」
「わっ、わかりません」
暫くの沈黙があった。
「つまり君がなぜ真夜中にオ-ゼンバーグ氏の邸に
侵入して冷蔵庫からハンバーガーを三つも食べたのかと
いうことなんだよ」
「おかしいですか」
「非常にね」
刑事は少し可笑しそうに笑顔を作ると、
机をバンと思いきり叩いた。

「女の子が盗みに入るような真似を

すること自体が異常だろう」
「女の子だって盗みはします」
「ま、まあ、たしかにそれはそうかもしれんが」

刑事がポリポリと頭を掻いた。

「何か盗んだのか」
「ハンバーガーだけです」
「それもおかしな話じゃないか」
刑事が腑に落ちないといった感じで顔を顰めた。

「あの邸にはそれ相応の大金があったはずだ。

それなのにハンバーガーだけとは」

「そんなにハンバーガーが好きなのか」

「いえ、好きじゃありません」
「それならなぜ」
「食べる必要性があったんです」
「凄く腹がすいていたのか」
「いえ、お腹は空いていませんでした」

「じゃあ、なぜ」

「言いたくありません」

恋歌が口をつぐんだ。


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