(R6・予備) 刑事実務基礎再現答案

第1 設問1 
1.小問(1)前段
(1)Kらが、本件車両を写真撮影することは検証(刑事訴訟法218条1項)にあたり、令状が必要となるのが原則である。もっとも、逮捕に伴う無令状検証として、検証令状なしに本件車両の写真撮影ができる(同法220条3項、同条1項2号)。
(2)逮捕に伴う無令状検証が認められる趣旨は、逮捕の現場には証拠が存在する蓋然性が認められる点にあるところ、「逮捕の現場」(同条1項2号)とは、令状を請求すれば許容される範囲、すなわち、逮捕場所と同一の管理権を同一にする場所を指す。Kらは、Aを現場付近で発見しており、上記写真撮影を行った公道と管理権を同一にするため、これを満たす。
(3)そして、逮捕の現場に証拠が存在する蓋然性は、逮捕の着手の前後であっても変化しないため、「逮捕する場合において」(同条1項本文)とは、時間的に幅のあるものとして、逮捕着手前も含むと解する。Kらは、Wから聴取した逃走方向に向かったところ、現場付近にいるAを通常逮捕しており、「逮捕する場合」にあたる。
(4)以上から、逮捕に伴う無令状検証として検証令状なしに本件車両の写真撮影ができる。
2.小問(1)後段
(1)一方、本件車両の内部は、公道とは管理権が異なるため、「逮捕の現場」に当らない。
(2)そこで、Kらは、Aが本件チケットを遺留したとして無令状で領置(同法221条)することが考えられる。「遺留した物」には、被疑者がその意思で占有を放棄したものが含まれる。
(3)Aは本件車両を放置して逃げ去っているところ、Aは、詐欺の被害品である本件車両内の本件チケットの占有も放棄しているといえる。したがって、Kらは本件チケットを無令状で領置できる。
3.小問(2)
1.Kは、Aに対する強制採血を行うにあたって、鑑定処分許可状(225条3項)と身体検査令状(218条1項後段)によるべきである。
2.血液は、人体の一部を構成するものであり、採血には専門的知見が必要であるため、その性質は鑑定処分(223条1項)にあたる。したがって、医師に強制採血を行わせる場合は、鑑定処分許可状によるべきである。しかし、鑑定処分許可状には、採血を直接的に強制させることが認められない(225条が172条を準用していないなど)。そこで、採血には身体検査に類似する処分といえるため、直接強制を認めるために、鑑定処分許可状に、身体検査令状を併用することとなる。

第2 設問2
1.小問(1)
(1)Pは、本件フェリーのチケットの各半券の購入日時・場所が、Aが供述する足取りや計画と一致するものの裏付けをするため、下線部③の補充捜査を指示したと考えられる。
(2)具体的には、Aは、令和6年2月1日に、丙島に住むYに2月3日、乙市に住むXに2月5日に遊びにいくと連絡している。そして、Aは、当該電話の後日2日に、乙市・丙島間の乗客用チケットを予約購入、発券しており、同チケットは往路が3日午前10時発、復路が4日午後7時発と、上記Aの行動・計画と一致するものであり、裏付けとなる。
車両用チケットついては4日午後7時に発券されているが…(※以下空欄)。
2.小問(2)
(1)「欺いて」(刑法246条1項)とは、処分の基礎となる重要な事項を偽ることをいう。レンタカーを貸し出すにあたって、レンタカーは返却が前提となるため、返却期限は処分の基礎となる重要な事項である。Aは、Vからの再三の返却の催促にもかかわらず、本件車両を返却しておらず、契約時から返却期限に返却する意思がなかったといえる。そして、返却意思がないのに、2月4日午後5時を返却期限に本件車両の貸与を受けることは挙動による欺罔にあたり、詐欺罪の成立を肯定的に働かせるといえる。
(2)「交付」行為には、占有の移転を基礎づける処分意思を要する。Vは、あくまでAに丙島内での使用を前提に本件車両を貸し出しており、Aが丙島から本件車両を持ち出される可能性を認識していたとはいえない。そのため、Aの本件車両を丙島からの持ち出し行為に対応する処分意思はなく、詐欺罪の成立を否定的に働かせる。
3.小問(3)
(1)「横領」(刑法252条)とは不法領得の意思の発現を指し、不法領得の意思とは、所有者でなければ行えないような処分をすることをいう。そして、横領罪には未遂規定がなく、明確性の観点から、当該処分が終局的になされたときに横領罪は既遂となる。
(2)Aは、Vから本件車両について、丙島内での使用を前提に貸し出されているにすぎない。そして、所有者でなければ許されない処分行為が終局的になされたのは、Aが本件車両を丙島から持ち出した時点であるため、Pは、㋐、㋑ではなく㋒の時点を単純横領の成立時期と結論付けた。

第3 設問3
1.下線部⑥の検察官面前調書は、「公判期日における供述に代」わる書面であり、X方を訪れた際のAの言動を立証するもので、内容の真実性が問題となるため、伝聞供述(刑事訴訟法320条1項)にあたる。
2.同調書は、321条1項2号後段を満たし、伝聞例外として許容されるか。
(1)「前の供述と相反する」とは、異なる事実認定を導く場合をいう。Xは、検察官の面前では、Aの来訪の経緯などX方でのAの言動について具体的に供述している。その一方、公判廷においては、「覚えていない」など、曖昧な証言に終始している。こうした事実から、横領罪の故意について異なった認定を導くといえ、これを満たす。
(2)「前の供述を信用すべき特別の事情」とは、相対的特信情況を指し、外部的付随的事情から判断する。Xは、Aに地元の中学の怖い先輩と関わっており、その者らが傍聴席にいると思うと証言している。そして、傍聴席にその者らと思われる男性が10名ほどおり、Aと目配せをし、Xの証言中に咳払いをする事実が認められる。そして、Pによる注意喚起にもかかわらず、証言を変えていない。したがって、公判廷におけるXの供述は畏怖した状況でなされたといえ、検面調書における供述に相対的特信情況が認められる。

第4 設問4
消極的真実義務により、
※途中答案
※約3枚、約75分

(コメント)
自己評価:D〜F(周りの評価次第で、C〜E)

・民実で時間を使いすぎ、刑実に十分に時間を割けなかった。
・ただし、詐欺・横領は得意でなく、時間があっても、今回の詐欺の見立てや、詐欺・横領の区別を問題文の事情から分析して論じることができたか、かなり怪しい。
・時間がなく、特に設問2は書きながら考えている状況だった。設問3や4などの易しい問題から優先的に解くなど(「後述する」と飛ばすテクニックもしらず)、総じて、刑実を書き慣れていないことに起因して、グダグダになったように思う。
・最後の10秒で、「消極的真実義務により」ともがいた。笑

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