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インテリアの世界で善良なる市民でいるのは難しい
最初に言ってしまいましょう。この記事はインテリア好きの私がインテリア関連の購買行動において、「綺麗事ばっか言ってらんないよ」とただただ愚痴る内容となっております。そしてここで言う愚痴と言うのは、専ら倫理と金のせめぎ合いのことを指しております。
善良なる市民とは?
古代ギリシャの集会での呼び掛けに対する、市民からの応答として使われていた言葉。
正確には「この場にいるものは誰か?」→「善良なる市民!!」というやり取り。
現代の日本においては、古代ギリシャ研究家の藤村シシン先生が専らイベントやトークでのコール&レスポンスとして使用し定着した。
(こいつ突然何の話始めた?と思われた方のために↓)
日曜は【名古屋】古代ギリシャの神話と詩の講座です。今回はコール&レスポンス回。
— 藤村シシン (@s_i_s_i_n) October 1, 2019
「τίς τῇδε;(ティス・テーデ?)」(この場にいるものは誰か?)と聞かれたら、元気よく「善良なる市民!」とお答えください!https://t.co/GeIAfN5PFC #藤村シシン講座 (残席わずか) pic.twitter.com/Qwq82PuXJH
ここでは「資本主義社会における模範的な消費者」みたいな意味の言葉として勝手にお借りしています(元々の意味は多分違うと思う)。
そして現代の消費社会において善良なる市民でいることは非常に難しい・・・。
何故そんなに難しいのか、以下に善良なる市民を目指す上で障害になるものを、インテリアに話題を絞って挙げていきたいと思います。
ファスト・ファニチャー
大抵の人は、ファスト・ファッションという言葉を聞いたことがあると思います。所謂、原料費や人件費を極限まで削り安価で販売されている服で、トレンドを気軽に取り入れられるもののクオリティーはあまり良くないことが多い。ファスト・ファニチャーはそれの家具版。代表格はIKEAだと思うけど、ノーブランドでもたくさんある。素材があまり良くないので、耐久性はあまり期待しない方が良い(全部が全部そうではないけど)。
安い家具を買うのは悪い、とは言い切れないと思う。特にまだ若いうちは収入があまりないし、しかもインテリアデザインについての知識がそんなにないうちに高いデザイナーズ家具とか買うのはリスキー。無理をすることはない。
個人的に思うファストファニチャーの問題点は、安い粗悪品を使い捨てすることに心理的な抵抗を感じなくなることだと思う。この記事にも書いたんですけどね↓
家具は普通使い捨てするものではないし、それを繰り返していたら長い目で見れば余計に金がかかるかもしれないし、地球環境のためにもゴミは増やさない方がよい。
収入が安定し、自分の趣味嗜好がわかってきたら、質の良い家具を手入れしながら長く使うのが良いんじゃないかなー。
うん、ここまではまだ単純な話なんだよ。
製造環境
ファスト・ファッションにも関連するんだけど、生産者の待遇もまた、エシカルな消費活動をする上で重要。最低賃金で長時間働かされたり、命を脅かされるような危険な環境で働かされていることだってあります。
キッチンのカウンターなどで使われる人造大理石の一種、クォーツ(qualtz)の存在をご存知でしょうか?クォーツを含めたカウンタートップの素材についてはこちらを読まれるのが良いでしょう↓
天然大理石よりも安価で機能面でも優れていますが、生産現場では、研磨の際に出る微細な粉塵により肺に深刻な悪影響があるそうです。
こちらの記事では主にトルコの生産者について書かれています。
日本で流通しているクォーツの生産地がトルコかどうかわからないので、適切な例えかわかりません。ただカウンタートップを大理石風の見た目にしたいが、大理石は予算的にムリだし手入れが大変そうだからクォーツにしたい人は、複雑な気分になるのでは?
私はここでクォーツを批判したいというよりは、この話題を耳にした時、自分が買うものがどんな風に製造されているかを正確に把握するのって本当に難しいな、と感じたんですよね。
ファスト・ファニチャーの製造現場はあまり人道的ではないのでは?というのは大体想像がつくけど、なかなかのお値段がするものだって、労働環境が良いとは限らない。
もちろん出来るだけ人道的に作られたものを買いたいけど、やっぱり手に入れられる情報も、金銭面も限界がある!100%エシカルは無理!!申し訳ないけど!!!!
Dupe
ここから先は主に権利関係の話。
有名ブランドのロゴまでコピーしたものは明らかに違法だからここでは除外することにして、訴えられない程度にフワッと外見を寄せているものってありますよね?英語だとdupe(デュープ、duplicateの略)と呼ばれていますが、日本語だと何だろう、類似品?
これらを買うのはどうでしょう??
うーん・・・正直グレーな領域ですよね。これを買っても自分が訴えられることはないけど、パクっている側に加担しているとも言えます。もうこれは完全に自分の良心にかかっているというか・・・
本物にこだわりたい人は本物を買うでしょうが、雰囲気だけ真似できれば良い、ディテールとかにもそこまでこだわりがない人にはdupeは有難い存在。
個人的には本当に気に入ったものなら本物を買いたいと思っています。細部にもこだわりがある方だし、あと個人でやっている作家さん等の応援もしたい。dupeは有名ブランドだけでなく、無名に近いクリエイターをパクリ元にしている場合も多いから。
というわけで、出来るだけdupeは買わない主義。特に小規模なブランドや個人でやっている作家さんのdupeは。
ただそうは言っても、世の中にはdupeが溢れているので、自分でも知らないうちにdupeを所有している可能性は大いにあると思う。
あーもう本当にややこしい。
リプロダクト品
リプロダクト品とは、意匠権が切れたデザインの家具を、再現、復刻した家具になります。ジェネリック家具とも言われます。
これは法律的にグレーではなくホワイトな領域??(詳しくは後述)。しかもオリジナルと比べてだいぶ安価です。
しかし、やはり正規品よりも格下に見られる傾向があるし、著名な家具デザイナーもリプロダクト品には複雑な思いがある様子。こんな記事もあるし↓
私はデザイナーズ家具のリプロダクト品は所有していませんが、法律的にOKなら良いだろうという考えです。
私は普段、商標、意匠とは全く関わりはないものの、特許関係(発明)の仕事をしています。だからか、もう○年経ったらハイサヨウナラという感じで感覚がかなりドライです。何なら、この出願は○年経っているから自由に使えるね(自由技術と呼ばれる)、ということを証明するのが仕事の一部でもあります。
ごめんね、デザイナーの人たち。でもそれが特許法だから・・・という思考の冷たい人間です。
あと、無名のクリエイターと違って有名デザイナーやブランドはステータスが確立されていて、それらを求める富裕層をターゲットに商売できるよね、そもそもリプロダクトしか手に入らない層は最初からターゲットに入ってないんだから、とも思う(完全なる主観)。
ただ、リプロダクト品が法律的に真っ白と言えないのも事実らしい。意匠権が切れていないのにリプロダクトと称して売っているものもあったり、意匠権は切れていても商標権を侵害しているとか。
難しいね・・・専門が化学関連の発明なもんだから、デザイン関連の意匠と商標はさっぱりなんですよね。
ただ法律の面以外でも、リプロダクトはアリと考える理由があります。
インテリアに凝るのは「贅沢」という考えの人って多くないですか?ファッションみたいに不特定多数の人に見てもらえるわけじゃないから、普段自分しか見ない住空間に凝ったって無駄、みたいな。
確かに、インテリアを全部デザイナーズ家具で揃えたらとんでもなくお金がかかると思うけど、予算を抑えつつ素敵な空間をつくることは可能だと思う。リプロダクトもその手段のひとつ。そんな、インテリアに凝るのはお金持ちの特権、という認識から離れられる面からも、リプロダクトは私の中ではアリです。
それでも本物にこだわる人はこだわるだろうし、私だって予算が許せば本物を買いたい。ただやっぱり予算には限度がある。大型の家具でも、出せるのは20万円台とかかな。100万円とか絶対ムリ。
あと買うとしたら、さすがに激安の粗悪品ではなく、質の良さそうなリプロダクトにすると思う。最初に戻るけど、ファスト・ファニチャーみたいなものもあるみたいだから。
おまけ:PR案件
一般人の私には縁のない話ですが、多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーはスポンサーから報酬を受け取り、その製品の宣伝をします。
これってすごく複雑ですよね。
今まで書いてきたことは主に自分自身との葛藤だけど、製品を人に勧めるというのはまた一段上の責任が生まれると思う。
全く葛藤せず、ただ提示される報酬金額だけで案件を受ける人もいれば、自分が気に入っていて、フォロワー達に自信を持ってオススメできるものだけを宣伝する、という人もいるでしょう。それでも、先に書いた倫理面、権利面を全てクリアできているかなんてわからない。
北米は日本よりも更にインフルエンサーマーケティングに力を入れているし、私が見ている北米YouTuberはほぼ全員スポンサーを抱えています。私のお気に入りインテリアYouTuberはこちら↓
でもスポンサーが後々問題を起こすと、ちょっと厄介なことになる。例えば盗用が発覚するとか、従業員が劣悪な労働環境を暴露するとか。そんなことが起こると、スポンサーになってもらった動画をYouTuberが後からひっそり削除するとか、あるあるですね。
私は専ら外野から見ている立場だけど、本当に難しい問題だと思う。未来を予測するのは不可能だし、インフルエンサーだって全ての責任は負えない。
ただ、北米で起こるインフルエンサーマーケティング関連のスキャンダルを観察していると、後々日本で起こりそうなことが大体予測できると思う。だから、怪しい企業の案件をカジュアルに受けている日本のインフルエンサーの方々を見ていると、なかなかね・・・うん。いつかはこの動画を消すはめになるのかな、とか思ったりね。インテリア関連だと、Tで始まるEコマースサイトはもうすでに日本でも気づいている人が多いかな。
私の愚痴は以上です。
「この場にいるものは誰か!?」と問われて「完全に善良なる市民!」とは答えられない。でも「60%から70%くらいの善良なる市民!!」と答えられる程度ではありたいと思う。
それではこの辺で。