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日米同盟強化のため日本が実践すべき「リトアニア式対中外交」

12月2日、中国政府はリトアニアによる大使館職員追放を非難し、「対抗措置」の検討を明らかにしました。

11月30日、リトアニア政府は、中国大使館職員3名を「ペルソナ・ノングラータ」(好ましからざる人物)に指定し、彼らに退去を命じていました。

https://www.reuters.com/world/lithuania-expels-three-chinese-diplomats-2024-11-29/

政府はこの措置に至った理由を、中国大使館側がリトアニア国内法とウィーン条約に違反したからだとしていますが、具体的にどのような行為があったのかなどは一切明かしていません。

この一件からわかるように、ペルソナ・ノングラータの指定には特段の正当な理由は必要ありません。というか、理由を言う必要がない。政府の裁量で自由に退去を命じることができるのです。

リトアニアと言った時、多くの人はピンとこないかもしれません。しかしこの国は、ヨーロッパ屈指の対中強硬派として存在感を発揮する、自由主義社会の先頭グループの一端を担う国家です。

さして大国ではない彼らを対中強硬派のポジションに突き動かす原動力は、共産主義に対する反発です。リトアニアはそもそも、1991年に発生した血の日曜日事件を乗り越え、ソ連からの独立を果たした国です。共産主義の経済と独裁者の圧政を経験している彼らは、その恐ろしさを知っています。強硬な対中政策の意義は、共産主義の阻止にあるのです。

中国共産党の威圧を受ける台湾と国交を結んだのも、その一環と言えるでしょう。共産党の圧政に屈しない台湾の独立をサポートしたいと考えるのは、リトアニアがもつ歴史を理解すれば自然なことです(言うまでもなく、ビジネス的目的がメインではあるが)。

加えてリトアニアは、ある目的・戦略に基づき、あえて中国に厳しく当たっています。それは、アメリカの関心を引き寄せることです。

リトアニアは元々、ソ連の後釜であるロシアに対して厳しい姿勢で臨んできました。その矛先をわざわざ中国に向けたのには、米中対立に乗っかろうという意図があります。

上の記事はリトアニアのジャーナリストによる興味深い分析です。これによれば、リトアニア政府はロシアへの警戒を逆説的に考えた時、中国との対立を深めるのが最も有効だと考えたのだと言います。

アメリカが最も忌避するのは共産主義です。その共産主義の総本山は中国であり、アメリカは目下、中国を締め上げることに躍起になっています。

よってアメリカは、中国に厳しい態度で臨む国を支持します。一生懸命中国に対抗する国には手を差し伸べ、反対に中国に媚を売る国は徹底して叩くのがアメリカなのです。

対中政策で目立つことができれば、アメリカに見そめられ、アメリカのサポートを受けることができます。だから人一倍強硬な政策をとることでアメリカに守ってもらおうと考えた、と言うことです。

だからリトアニアは、台湾独立を支持し、香港の統一を非難し、ウイグル人権問題を糾弾します。中国の半導体もしっかり排除し、小国でありながらヨーロッパにおける対中強硬派の象徴的存在に上り詰めました。当然アメリカ政府の関心も引き寄せることに成功しています。

米軍は2019年からリトアニアに駐留することとなったことは、リトアニアがアメリカトランプ政権から歴とした仲間として認められたことの証左といえます。その後のウクライナ侵攻を受けてからは、米軍が無期限に常駐することが決まり、武器も続々と入ってくるなど、両国関係は着々と緊密になってきています。

リトアニアはこのように、動的な外交防衛戦略によって安全保障を強化し、ロシアの脅威に対峙できる体制づくりに成功しました。

世界の中で他にアメリカとの関係が重要な国といえば、真っ先に挙げられるのが日本でしょう。

中国・北朝鮮という共産主義独裁国家の脅威の最前線にある日本にとって、唯一の同盟国であるアメリカのコミットは生命線ともいえます。アメリカが日本から手を引くと言えば、中国や北朝鮮は簡単に日本へミサイル攻撃を行い、侵攻することが可能になります。

既に述べた通り、アメリカは、彼らと連帯して中国と対峙する国を支持し、そうでない国を見放します。従って日本の対中政策が甘いと思われた時は、すなわちアメリカが日本から手を引く時です。

では、日本の対中政策はどんな状況でしょうか。

台湾に積極的に関わっているか?ウイグル人権問題に関心を寄せているか?中国の半導体をキャンセルしているか?不適格な中国大使館職員を追放しているか?

答えは全てノーです。日本は台湾に関わる法律を作らず、人権問題を放置し、中国の危険な半導体を積極的に輸入し、中国との「互恵関係」を推進しています。

日本人学校の子供が中国で殺されても在中日本大使館は通常運営だし、れいわ新選組への投票を呼びかけ、内政干渉を行なった中国大使にも処分ゼロ、削除させて終わりというずさんぶりです。

リトアニア出なくても、普通の国ならば、内政干渉してきた大使は間違いなくペルソナ・ノングラータです。冒頭に述べた通り、ペルソナ・ノングラータの指定に相手の納得する理由は必要ありませんから、淡々と執行すれば良いのです。日本は中国に怯えるあまり、もはや当たり前の措置すらも取れなくなっているのです。そんな国を、アメリカと連帯し、中国と対峙していると評価する人はまずいないでしょう。

アメリカと連帯しない国をアメリカが守る筋合いはありません。アメリカは、自分たちと共に中国共産党と戦い、自由主義・民主主義を守る国を支持するのみです。

リトアニアの対中政策は、中国への強硬姿勢を通じた強い対米関係の作り方、外交防衛政策のダイナミックな考え方の重要性を日本に教えてくれています。自国を守るための動的・ダイナミックな戦略を持たずして、「法の支配を守る」、「国家主権を守る」などという現在の日本政府の主張は、空虚という他ありません。


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